白き森
今日から連載始めます。
今日中に何話か投稿致しますのでよろしくお願いします♪
あと、毎日1話ずつ投稿させていただきます。
木々の葉が、さらさらと音を立てる。
夏だというのに、森を渡る風は心地よく頬を撫でていった。
鳥とも違う、聞き慣れぬ鳴き声が遠くから響く。
真田幸村は、ゆっくりと瞼を開いた。
視界いっぱいに広がるのは、どこまでも澄み渡る青空。
「……。」
しばらく瞬きもせず空を見つめる。
やがて静かに身を起こした。
そこは鬱蒼とした森だった。
足元には落ち葉が積もり、陽の光が木々の隙間から幾筋も差し込んでいる。
辺りには、人の気配どころか戦の気配すらない。
「……ここが、黄泉の国なのであろうか。」
誰に聞かせるでもなく、独りごちる。
最後に覚えているのは、大坂夏の陣。
燃え盛る大坂城。
六文銭の旗。
徳川家康の本陣へ向け、一気に駆けたあの瞬間――。
幸村は傍らに転がる槍を拾い上げる。
幾度も命を預けてきた愛槍。
柄に刻まれた傷が、激戦の数を物語っていた。
その槍を見つめながら、幸村は眉を寄せる。
「……家康に、この槍は届いたのであろうか。」
記憶を辿る。
敵兵を薙ぎ払い。
家康の姿を捉え。
槍を突き出した――。
そこまでは思い出せる。
だが、その先だけが霧に包まれたように思い出せない。
「まるで……思い出せぬ。」
槍を握る手に、わずかに力が入る。
あれほど鮮烈だった戦の終幕が、そこだけぽっかりと抜け落ちている。
「……秀頼公は、ご無事であろうか。」
風が木々を揺らす。
答える者はいない。
しばらく空を仰いでいた幸村は、小さく息を吐いた。
「……詮無きこと。」
武士が終わった戦を振り返ったところで、何も変わらぬ。
生きようと、死のうと。
己にできることは前へ進むことだけ。
幸村は槍を肩に担ぎ、森を見渡した。
しかし、この森は奇妙だった。
木々の姿が違う。
葉の形も違う。
聞こえてくる鳥や虫の声も、日本で聞いたことがないものばかりだ。
「見知らぬ土地……か。」
黄泉とは、こういう場所なのだろうか。
苦笑しながら歩き出す。
土を踏む感触は妙に生々しい。
風は頬を撫で、草は足に触れる。
死後の世界にしては、あまりにも現実らしい。
そんなことを考えながら森を進んでいると、不意に足が止まった。
地面に残る大きな足跡。
熊とも虎とも違う。
幸村の知るどの獣とも一致しない。
しゃがみ込み、その跡に手を添える。
「……大きい。」
戦場で培った勘が告げる。
この主は、ただの獣ではない。
その時だった。
森の奥から、低く響く唸り声。
「グルルル……。」
幸村は静かに立ち上がる。
音もなく槍を構えた。
その双眸に迷いはない。
たとえ黄泉であろうと、武士は武士。
襲い来るものがあれば、斬るだけである。
しばらく森は静まり返っていた。
やがて唸り声は遠ざかり、再び風が木々を揺らす。
幸村は槍を下ろし、小さく笑った。
「黄泉にも、面妖な獣がおるものよ。」
そう呟くと、再び歩き出す。
その先に待つ運命を知る由もなく。
皆さん、初めての投稿です、なんでも結構です、アドバイスください。




