表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

トクガワ盗賊団

荷馬車は静かな山道を進んでいた。


商人は落ち着かない様子で周囲を見回している。


「この辺りからです……。」


幸村が尋ねた。


「何がある。」


商人は唾を飲み込む。


「トクガワ盗賊団の縄張りです。」


その時だった。


ヒュン――。


一本の矢が荷馬車の前へ突き刺さる。


馬が大きく嘶き、足を止めた。


森の奥から次々と人影が現れる。


黒装束の男たち。


十数人。


全員が武器を構え、荷馬車を取り囲む。


そして最後に、黒い旗が掲げられた。


三つ葉の紋。


その上には、大きく×印。


商人の顔が青ざめる。


「トクガワ盗賊団……。」


やがて、人垣が左右へ割れた。


一人の男がゆっくり歩み出る。


黒装束。


覆面。


腰には二振りの短刀。


歩き方は軽く、まるで猿のようだった。


男は商人を一瞥すると、不敵に笑う。


「よう。」


「積み荷を全部置いていきな。」


「命だけは助けてやる。」


護衛たちが剣を抜く。


男は肩をすくめた。


「やめとけ。」


「死ぬぜ?」


商人は震えながら叫ぶ。


「た、食料です!」


「村へ届ける食料なんです!」


男は荷馬車を覗き込み、鼻で笑った。


「嘘じゃねぇな。」


そして仲間へ振り返る。


「一般商人だ。」


「行かせろ。」


盗賊たちは一斉に武器を下ろした。


商人は思わず聞き返す。


「……いいのですか?」


男は面倒くさそうに手を振る。


「俺たちゃ悪党だ。」


「だが、腹を空かせたガキから食い物を奪うほど落ちぶれちゃいねぇ。」


「とっとと行け。」


商人は何度も頭を下げた。


「ありがとうございます!」


男は舌打ちする。


「礼なんざいらねぇ。」


「悪党に頭なんか下げるな。」


そう言って背を向けた、その時だった。


幸村が静かに口を開く。


「一つ、尋ねてもよいか。」


男は振り返る。


「何だ。」


「徳川とは何者じゃ。」


一瞬の静寂。


次の瞬間――


男は腹を抱えて笑い出した。


「ぶははははっ!」


「そりゃ傑作だ!」


盗賊たちまで吹き出す。


「頭ぁ!」


「初めて聞かれましたぜ!」


男は涙を拭いながら笑う。


「気に入った。」


「今日は見逃してやる。」


そう言って歩き出そうとする。


その時、風が吹いた。


幸村の赤備えが静かに揺れる。


男の足が止まった。


じっと幸村を見つめる。


次の瞬間、覆面の奥から驚きの声が漏れた。


「マジか……殿じゃねぇか!」


幸村の口元にわずかな笑みが浮かぶ。


「……佐助か。」


男は勢いよく覆面を外した。


「マジで殿だ!」


「生きてたのか!」


清海と伊三も目を見開く。


「「佐助!」」


銭だけが首を傾げる。


「誰?」


佐助は親指で自分を指し、ニヤリと笑った。


「俺だよ。」


「猿飛佐助。」


「殿の一番弟子!」


幸村は静かに問い掛ける。


「佐助。」


「そなた、五年前からこの世界におると申したな。」


「ああ。」


「目が覚めたら、この世界だった。」


清海が驚く。


「五年前……?」


伊三も首を振る。


「何を申しておる。」


「わしらは森で二、三日さまよった後、殿と再会したではないか。」


幸村は頷いた。


「左様。」


「わしも同じじゃ。」


「少なくとも五年など経ってはおらぬ。」


佐助は腕を組み、空を見上げる。


「じゃあ……。」


「俺だけ五年も前に飛ばされたってことか。」


幸村はしばらく考え込んだ。


「……わしが最後か。」


しかし、すぐに首を横へ振る。


「いや。」


「まだ来るやもしれぬ。」


「皆、転移した時が違うのであればな。」


やがて幸村は静かに呟いた。


「六郎がおれば、何か思いついたやもしれぬ。」


清海は苦笑した。


「ご家老様なら、もう答えを出しておりましょうな。」


佐助がニヤリと笑う。


「そのご家老様だけどさ。」


「噂を聞いたぜ。」


幸村たちが一斉に顔を上げる。


「まことか。」


佐助は親指で山の奥を指した。


「まあ、俺たちの村で話そうや。」


清海が首を傾げる。


「村?」


佐助は悪戯っぽく笑った。


「甲賀の隠れ里みてぇなとこだけどな!」

初めての投稿です、面白かった、面白くない、ここが悪いなどのアドバイスも頂きたいので、よろしくお願いします♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ