査定
兵士たちはグレーターホーンウルフを奥の査定場へ運び込んだ。
ギルドの中は静まり返っている。
先ほどまで酒を酌み交わしていた傭兵たちも、誰一人として口を開かない。
やがて奥の扉がゆっくりと開いた。
年配の男が姿を現す。
鍛えられた体躯。
腰には使い込まれた長剣。
男は無言のまま魔物へ歩み寄った。
「ギルド長だ……。」
誰かが小さく呟く。
ギルド長は何も答えない。
グレーターホーンウルフの角へ触れ、
牙を確かめ、
全身をゆっくり見渡す。
そして深く息を吐いた。
「……間違いない。」
その一言だけで、館内がざわめく。
「グレーターホーンウルフだ。」
「こんな街の近くに現れる魔物ではない。」
「討伐するなら騎士団へ応援を求める相手だ。」
傭兵たちは顔を見合わせる。
誰もが魔物と幸村たちを見比べていた。
ギルド長は兵士へ視線を向ける。
「この魔物を運び込んだのは、この者たちで間違いないな。」
「はい。」
兵士は力強く頷いた。
「門前で住民を襲ったところを討ち取りました。」
ギルド長はもう一度魔物を見つめる。
首筋に残る槍傷へ目を留めた。
その表情が、わずかに変わる。
「……見事だ。」
ぽつりと漏れたその一言に、
館内は再び静まり返る。
ギルド長が人を褒めることなど滅多にない。
そのことを、この場にいる誰もが知っていた。
やがてギルド長は受付へ向き直る。
「査定を進めろ。」
「特別討伐として報酬を支払う。」
「は、はい!」
受付の女性は慌てて奥へ駆けていく。
その様子を見ていた清海が、幸村へ小声で囁いた。
「殿。」
「餅はまだでござるか。」
伊三も真剣な顔で頷く。
「腹が背中にくっつきそうじゃ。」
幸村は苦笑した。
「もう少し辛抱せい。」
その会話が聞こえた傭兵の一人が思わず吹き出す。
それをきっかけに、
館内へ笑いが広がっていった。
先ほどまでの重苦しい空気は、いつの間にか消えていた。
しばらくすると受付の女性が戻ってくる。
「査定が終わりました。」
「報酬をお渡しします。」
幸村は静かに頷く。
「かたじけない。」
受付の女性は少し困ったような笑みを浮かべた。
「その前に、一つ確認がございます。」
「皆様は、ギルド証をお持ちでしょうか。」
幸村は首を傾げる。
「……ぎるどしょう?」
受付の女性も首を傾げ返す。
「お持ちでは……ないのですか?」
幸村たちは顔を見合わせた。




