傭兵ギルド
小隊長に案内され、幸村たちは大通りを歩いていた。
やがて、一際大きな建物の前で小隊長が足を止める。
入口には剣と盾を模した看板が掲げられ、多くの者が出入りしていた。
「ここが傭兵ギルドだ。」
幸村は看板を見上げる。
「ここが……ぎるど。」
小隊長は頷いた。
「街の傭兵が集まる場所だ。」
幸村は静かに頷く。
「参ろう。」
小隊長が扉を押し開ける。
途端に賑やかな声が押し寄せた。
酒を酌み交わす者。
仲間と笑い合う者。
武具の手入れをする者。
受付には多くの者が列を作っている。
初めて目にする光景に、幸村たちは思わず足を止めた。
その時だった。
「道を開けろ!」
後方から兵士たちの声が響く。
数人の兵が、大きな魔物を担いでギルドへ入ってくる。
その瞬間――
先ほどまで賑やかだった館内が、水を打ったように静まり返った。
誰もが魔物へ目を向ける。
「あれは……。」
「まさか……。」
「グレーターホーンウルフだ……。」
酒を飲んでいた者まで立ち上がる。
受付の女性も思わず息を呑んだ。
兵士が声を張る。
「討伐した魔物だ!」
「査定を頼む!」
ギルド中の視線が魔物へ集まる。
やがて一人の傭兵が兵士へ尋ねた。
「誰が討った。」
兵士は迷うことなく幸村たちを指差した。
「この者たちです。」
一斉に視線が幸村たちへ集まる。
その沈黙を破ったのは清海だった。
受付へ歩み寄ると、満面の笑みで頭を下げる。
「お願いがござる。」
受付の女性は戸惑いながらも微笑む。
「はい。」
「何でしょうか。」
清海は真剣な顔で言った。
「先ほど討った妖を、餅に替えてくだされ。」
「……え?」
伊三も大きく頷く。
「できれば腹いっぱい。」
小隊長は思わず吹き出した。
「ははは!」
「報酬として金を受け取るんだ。」
「その金で好きな物を買えばいい。」
清海と伊三は顔を見合わせる。
「なるほど!」
「最初からそう言ってくだされ!」
幸村は苦笑した。
「お主らは、食うことしか頭に無いのか。」
清海は頭を掻く。
「腹が減っては、何も考えられませぬ。」
伊三も真顔で頷いた。
「まことに。」
そのやり取りに、ギルド中から笑いが漏れる。
張り詰めていた空気が、一気に和らいだ。
受付の女性も笑みを浮かべる。
「では、討伐した魔物の査定を行います。」
「少々お待ちください。」
兵士たちはグレーターホーンウルフを奥へ運んでいく。
幸村は小隊長へ目を向けた。
「待てばよいのじゃな。」
「ああ。」
「すぐ終わる。」
幸村は静かに頷いた。
「では、待つとしよう。」




