表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
33/37

第33話 レオンハルトの誕生日-全てを証明する日

 レオン様の2年間の再教育が終わった。

 そのため、今年はレオン様の誕生日パーティーが開かれる。そこで、陛下は、レオン様を正式に跡継ぎにすることを宣言するようだ。


 (レオン様。残念ですが、あなたにはその器がありませんわ)


「エリシア。いよいよ今日だな」


 我が家の屋敷のリビングにて、アル様が私に話しかける。


「えぇ。証拠は完璧ではないですが……」

「大丈夫。最後のピースは必ず埋まる。信じろ。それに、手元にある証拠だけでも、十分だ」


 アル様の力強い言葉に、私は勇気をもらった。


「そうですわね。弱気になるなんて私らしくないですわね」


 ◇


 レオン様の誕生日パーティーは、王家主催としては、豪華さが控えめである。

 しかし、それでも大広間には柔らかな燭台の光が揺れる。シンプルな花の装飾は、上品に輝いている。


 招待された貴族たちは、静かに談笑をしている。豪華すぎず、しかし地味すぎもしない。控えめながら、確かに祝宴の空気は漂っていた。


 香り高いワインやシャンパンが配られる。サンドイッチから肉料理、軽やかなデザートなどがテーブルに置かれ、誰もが口元に微笑みを浮かべる。


 久しぶりの王家主催の祝宴。王太子の誕生日という節目の重みは、静かに伝わってくる。


 (卒業パーティーの事件以来、祝宴は自粛だったものね)


 私は、プチタルトを口に入れながら、周りを見渡す。戦う前の腹ごしらえだ。

 アル様は、私をエスコートしたら、すぐ戻ると言って外に出て行った。


 (さて、まずは挨拶に行かないとね)


 私は、少し気合いを入れるように一人うなずき、レオン様の元へと向かった。


「レオンハルト殿下。お誕生日おめでとうございます。エリシアより、お祝い申し上げます」


「……エリシア。来ていたのか」


 レオン様は気まずそうに目をそらす。


「エリシア様? まぁ! 招待されていたのですか?」


 レオン様の隣に立つマルグリットは、相変わらずである。


「マルグリット様。お久しぶりでございます」


 マルグリット様は、私の頭からつま先までを査定するかのように見ている。


「ふーん。あなたにしては、素敵なドレスを着てらっしゃるのね」


 私は、アル様の瞳と同じ琥珀色のドレスを着ていた。

 ドレスの胸元には黒のレースが縁取られ、夜のように深い色の大ぶりのリボンが中央に据えられている。宝石のブローチが静かに光を返しており、スカートはドレープをたくし上げるように黒いリボンがいくつも結ばれている。


「下地が地味だから似合うのかしらね。私は華やかさがあるから、着られないわね」


 (マルグリット様は、何も変わらないわね。よく言えば芯が通っているというのかしら)


 私は、二人に微笑みながら一礼をし、その場を立ち去った。


 ◇ 


 パーティーも終盤。

 笑い声とグラスの触れ合う音が、ひとつ、またひとつと消えていく。

 視線は自然と壇上へ集まる。そこでは陛下らが、宣言に向けて静かに整えられていた。


 私は、少しずつ壇上の方に近寄る。


 壇上中央に立つ陛下を中心に、その右に王妃様、左にレオン様が並ぶ。レオン様の更に外側にはセドリック様が控え、王妃様の隣には堂々と胸を張るマルグリット様の姿があった。

 壇上近くでは、レオボルト大臣がニコニコした顔で見守っている姿がある。


 陛下が、一歩前に出る。

 いよいよだ。


「本日、私からの報告がある。

 我が第一王太子レオンハルトを、私の正式な後継者とし――」


「陛下、僭越(せんえつ)ながら申し上げます。その宣言、どうかお待ちください」


 私は、陛下らを見上げる最前列にて、陛下の声を遮った。


 会場がざわつく。


「陛下の宣言を止めるだなんて!」

「あれは、エリシア様?」

「レオンハルト殿下の元婚約者といえども、不敬だろう」

「また、何かが起こるのか?」


「エリシア! 下がれ! 陛下の話をさえぎるなど、もってのほかだ!」

 

 レオン様が吠える。


「陛下の話を止めたことの処分、後ほど甘んじて受け入れます。ただ……後継者としての資質に関わる問題がございます」


 陛下が、王妃様をチラリと見る。王妃様が、小さくうなずいた。


「エリシア。申してみろ」

「父上!」


「実は、財務省の方々が、王家の許可なく山を購入し、売却をしていたのがわかりました」


「な……! 語弊があるぞ! 確かに許可は手続き上のミスがあった。ただ、あとからちゃんと報告をして許可を取っておる!」


 レオボルド大臣が、慌てて大声をあげた。


 私はレオボルド大臣を無視した。


「その山は、見た目は鉱石が発掘される山でして、金貨500枚で購入したそうです」


 私は、微笑みながら続ける。


「けれど、その山、本来の価値が金貨50枚――ですよね?」


「何を言っているんだ! 帳簿にはちゃんと、金貨500枚と記載されておるわい!」

 

 レオボルト大臣は言い返す。


 私は、レオボルド大臣の反論を予想していたため、ある書類を見えるように掲げた。


「これは、山の売買について記載されている部分の帳簿の写しです」

「な……! なんで、お前が持ってるんだ!」


「確かに、山を購入、金貨500枚。と記入されていますわ。でも……」


 私は、何枚もの不動産鑑定書を取り出した。


「実際、この山は、金貨50枚の価値しかございません」


 会場がざわめく。

 どういうこと?などと、ささやく声が広がっていく。


「そんなはずはない! 陛下だまされてはいけませぬぞ!」


 レオボルド大臣は、私の手から不動産鑑定書を奪い取り、確認をする。

 すると、勝ち誇ったかのように、高らかに声を上げた。


「陛下! これを見てください。この鑑定書は隣国の業者によるものです!」

「それがなにか? この国の業者は、レオボルド大臣と関係がある者がいるようでして。なので、第三者として隣国の業者に鑑定をしてもらったのです」


「陛下! エリシアは、この国を乗っ取ろうとしております。陛下らもご存じですか? エリシアは、隣国ヴァルディア国のアルベルト王太子と懇意にしておる。なので、隣国と通じて、何やら企んでおるのです!」


「アルベルト王太子と?! なんだと、エリシア! それは本当なのか?!」


 レオン様は、ショックを受けたような顔をしている。


「はい。アルベルト様とは仲良くさせいただいております。ですが--」


「この私が、ルクセリア王国の後継者となることを妨害したのは、そういうことなのか! 隣国と共謀して乗っ取ろうと考えてのことなんだな?!」


 レオン様は、私の声を聞こうとせずに、騒ぎ立てる。


 人を信じると言っても、決して私を信じようとしない。この人が信じているのは、自分にとって都合のよいことだけなのだ。


 私は何も変わっていないレオン様を見て、小さくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ