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第20話 お金の出どころーゼロではない可能性ー

 私は、ネックレスの領収書を手に入れた後も調査を続けた。マルグリット様が、プレゼントされたと言っているドレスや装飾品を特定し、購入先を調べる。


 マルグリット様は、いつも私に自慢をし、レオン様からもらったドレスや宝石を生徒会室や私のいる教室に持ち込んでは見せつけてきていた。


 ドレスや宝石を見せられても、その色や形など、その物自体は興味深かったが、それ以上の感想はなかった。


 しかし、今は、マルグリット様が見せてきたことが役に立っている。


 私は、その時に見た記憶を、うなりながら絞り出す。そして、私のイラストや説明をもとに、姉のメイドだった彼女が膨大な情報網をフル活用し、店の特定にまで至る。


 時には、マルグリット様が身に着けている髪飾りを特定するために、メイドの彼女には学生に扮してもらい、近くで観察してもらったこともある


 (あれは、もしバレたら大変だったわ。

 でも、あの子、すごくノリノリで変装していたわね)


 そんな地道な調査を一つ一つ積み重ねたかいもあり、多くの資料がそろった。


 レオン様がマルグリット様にプレゼントしたけれども、交際費帳簿に載っていないドレスや宝石の数字が分かったのだ。


「全部で、金貨80枚……」


 私は集めた資料を見ながら、つぶやく。


 金貨80枚といえば、小さな橋が一本かかるくらいの金額だ。


 レオン様の私的なお金からマルグリット様にプレゼントをしていたのならば、高額といえども、私は何も言うことはない。いや、高すぎないか?と、ちょっとは言いたいけど。


 しかし、レオン様の交際費帳簿に、金貨80枚の支出は載っていない。

 大きな金額なので、記載忘れということはありえないだろう。


 では、どこから、このお金が出ているのだろうか?


 頭の中で、いくつかの可能性をなぞる。


「……そういえば、レオン様には、王太子裁量で使える、公的資金があったわね」


 私が、レオン様の交際費帳簿をチェックしているのは、実務訓練のためである。それと同じように、王太子であるレオン様にも実務訓練がある。


 それが、公的資金の取り扱いだ。


 規模こそ大きくはないが、災害支援や小規模な公共物の修繕、地方への緊急援助など、現場で即座に判断・支出できる用途に限定された公的資金である。


 王太子には、この公的資金への裁量権があり、予算管理や優先順位の判断、役所や領主とのやり取りを学ぶのだ。


 私は、自室にて、ネックレスなどの領収書の束をじっと見ながらつぶやいた。


「まさか……公的資金から?」


 さすがに、それは有り得ないだろうと思い、フッと一人笑った。


 問題が一つ解決すると、次の問題がまた出てくる。

 私は、今日も頭を悩ませながら、眠りにつくのであった。


 答えが出ない日々を送っていると、エド様とアル様から手紙が届いた。


 (エド様、一時帰国なさるのね)


 エド様からの手紙は、休みを使って帰国するので、久しぶりに会わないか、というお誘いの内容だった。


 手紙の文面からも、話したいことがあってウズウズしている感じが伝わる。想っている相手とは、うまく進んでいるのだろうか。

 エド様は、明るくて調子が良いところがあるが、恋愛に関しては意外とロマンチストだ。


 エド様の手紙は、読むと胸が温かくなる。


 一方で、アル様の手紙は、読む前から、胸が熱くなる。


 私は深呼吸をしてから、アル様の手紙を読む。


 いつものように、淡々とした内容だが、私にはそれが嬉しい。


 『いつも紅茶しか選ばないが、この前会った時に、エリシアがコーヒーを飲んでいたから、試しに一人で頼んでみた。無理と思っていたが、悪くなかった。何事もやってみなければ分からないな』


 (アル様は、コーヒーの苦みが口に合わないと言っていたけど、試してみたのね)

 

 私はクスッと笑った。


 そして、次の瞬間、頭の中にある考えが浮かんできた。


 (……アル様。あなたからの手紙で、また私、気づかされましたわ)


 最初から無理だと諦める必要はない。

 可能性がゼロではないのならば、検討から除外する理由はない。


 レオン様からのプレゼント代がどこから支払われたのか。


 ――公的資金から、との疑いを最初から除外する必要はないのだ。


 そうなると、次の問題は……


 (公的資金の帳簿を見ることが出来れば、良いのだけれども、難しいわね)


 王太子の裁量で扱えると言えども、公的資金を扱う帳簿は、財務省で管理している。そうなると、王太子の婚約者であったとしても、私が、簡単に閲覧することはできない。


 何か良い手はないだろうか。


 私は、悩みながらも一歩一歩答えに近づいている感覚に、かすかに胸が躍った。


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