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進化する怪獣の倒し方

『クロリス対策ノ議』


「オペレーター。読み上げて。」


「はい。現在の状況から。まずクロリス。植物のツタのような触手、薔薇のようなビラを持っている。現在、予測被害範囲である500mまで触手を伸ばしている状況。避難は中距離まで進んでいるものの、長距離の避難は難しい状態。」


「ちょっと待てそれじゃあ、さらに触手が伸びたら…。」


「はい。避難所に到達するのは時間の問題だと思われます。具体的にはあと5時間もあれば、避難所は落ちます。」


「タイムリミットか…。」


「次、砲撃班。」


「はい。三度に渡っての迎撃作戦は全て命中。しかし、知っての通り黒く変色した部位への砲撃は無効化されます。」


「それについては鑑識からいいですか。」


「どうぞ。」


「落ちていた黒い肉片を採取。耐熱能力と耐圧能力を確認。もしこれから火器兵器で攻撃するなら、ミサイルでギリです。」


「…。」


「偵察局からの情報はありますか。」


「コア指数…。コア指数0.41です。」


「それだけか。」


「でも、確かにそれならテアでパワー負けするわけだ。」


「ミサイルは長距離兵器。つまり使用不可。他の火器兵器は当てにならない。テアはパワー負け。厳しいですね。」


「作戦部の方は、久保さん。」


「はい。作戦部、久保です。」


「なんか、作戦あるんですか。」


「…。」


「…あります。」


「!」


「『ティンバーリミット作戦』です。」






「ティンバーリミット作戦、開始!」


「作戦開始!」


「バンビバケット4機、上空200mほどを移動中。」


「クロリスとの座標距離600m。」


「下は触手。落ちたら…終わり。」


「バンビバケット、温度良好。」


「作戦。問題なさそうですね。」


「にしても。こんな作戦よく思いつきますね。」

ティンバーリミット作戦。」


「クロリスはおそらく植物に酷似した性質を持つ。故に耐熱能力があっても、耐冷能力はない。」


「そこで、大量の液体窒素を中心部に直接注ぎ込む。」


「ふむふむ。」


「クロリスは耐えられずに体が縮む。」


「確かにこれなら市街地でミサイルを使わずに最小限に倒せる。」


「おい。油断するな。」


「ああ、気を緩めるな。クロリスの体が縮むってのは俺の推測だからな。」


「まだ、勝敗はわからないってことか。」


「バンビバケット、距離、200m。」


「オペレーター、クロリスの反応は。」


「エネルギー反応なし。気づいてないです。」


「…。」


「距離100m。」


「こっからが勝負だ。」


「気取られたら、触手ごと吸収される。」


「計算上、二機分は液体窒素をかける必要がある…。」


「半分か。」


「バンビバケットの高度を20m上げろ。」


「距離75m。」


クロリスのビラの下から伸びるやたらでかい二つの触手のうちの一本が風でなびいたかと思うと、


「!クロリス動きます。」


少し、しなってムチのように空をバン、と響かせながらバンビバケットの一機を強く弾き、

墜落させた。


「砲撃開始!」


「無人ヘリ部隊も出撃!」


「バンビバケットの高度をさらに20上げろ。」


「無人ヘリ、二機墜落。」


「距離50m。」


「触手の変色を確認。硬度が上がってます。」


「触手!無差別攻撃。縦横無尽に触手2本を振り回してます。」


「これじゃ、近づけない。」


「…。」 「くっ。」


「一機のバンビバケット内の液体窒素を放出。」


「い、いいのですか。」


「あぁ。一機分をここで消費して、触手の片方を無力化しろ。」


「…はい。直ちに放出せよ。」


バンビバケットを勢いのままにバケットごと落下させる。それが触手の根元にて溢れる。


たちまち、触手が縮んでいく。


「片方の触手を無力化。」


「やっぱり耐冷能力はない。」


「これなら行ける。」


「でも、残り二機です…。」


「…そのまま進め。」


「あと25m。」


「20、15、10m!」


「放出!」


「中心部、直撃!」


「ん、もう一機分はどうした。」


「ふ、不具合発生。バンビバケット、開きません。」


「とりあえず、上空に行け。攻撃されるぞ。」


「もう一度開いてみろ。」


「ダメです。開く様子なし。」


「…。」


「無人ヘリで、バンビバケットを打て。

バンビバケットを壊して放出しろ。」


「バンビバケット、損傷。液体窒素、放出。」


「退避!退避!」


「二機分、かかった。」


「作戦、成功!」


「やった!」


「全員、戻れ!」


「画面を見ろ。」


画面には液体窒素が気化して、霧が発生していてクロリスの様子はよく見えなかった。


「く、クロリス、エネルギー反応!」


「うっそだろ。」


だんだんと霧が晴れていく。

が、そこにあったのは先ほどまでの薔薇のようなクロリスの姿ではなく、家々を苔が覆っている姿だった。


「まだ、生きてるのか。」


「まさか、耐冷、能力を…得た、のか。」


「この土壇場でか、」


「なんて、やつだ。」


「こんなの、どうすれば。」


「…。」


「いや…わかった。」


「久保…。」


「アイツ、クロリスは進化した。だから、先の姿とは別種だ。」


「それがなんだって言うんだ。」


「つまり、今は耐熱能力を失っているんだ!」


「は!」


「と、いうことは!」


「火器兵器を防げない。」


「中距離爆撃用意。」


「次は進化させる時間なんて与えない。」


「人類を舐めるなよ。」


「はっしゃ!!」





のち、クロリスは進化が間に合わず、熱と爆撃に耐えられず、活動停止状態に追い込まれた。





「ふぅ〜。今回、長かった、」


「進化とか、反則だろ。」


「こんなに強いやつ初めてだ。」


「そりゃそうだ。今回の作戦だけで半年分の予算使ったってさ。」


「まあ、不幸中の幸いにもテアは回収できて、大損害は免れたな。」


「そうだな。」


「あれ、そういえば今回のMVPがいないけど。」


「ああ、久保さんなら、司令と副司令のとこだよ。」


「なあ、あの三人同期らしいぜ。」


「へぇ。」




「お疲れ様。」


「おお。」


「久保。今回も助けられた。」


「いいって。作戦部長の役目を果たしただけだよ。」


「…。」


「いや〜、にしても強かったね。クロリス。」


「…。」


「黙ってどうしたの。」


「久保。光局長が動くぞ。」


「…そうだな。」


「勝てるか。」


「勝負なんてしないさ。」


「どうするの。」


「…逃げる。」

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