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 街に戻ってきて、相変わらず4人でダンジョン潜ったり、露店を定期的に開く以外にも、いつもどおり歌も歌う。休みの日には料理人ネットワークで新作の料理を一緒に作りだし、街仕事で黄金の翼でチョコレートを作り、リエナさんたちと可愛いものを作ったり、領主館厨房で家事スキルと生活魔法持ちの若い子二人にチョコレートの製法を教えたりしていた。


 家事スキルと生活魔法持ちの若い子は16歳と17歳の男の子なのに、家事スキルと生活魔法しか使えないと凹んでいたところ、今回の抜擢で驚いて、あわあわしているうちに、領主様に雇われてあわあわしているうちに、チョコレート作りの専門になってしまったのだ。素直で良い子たちなので、一生懸命教えたよ。美味しいチョコレート召し上がれ!チョコレートを口に運び幸せそうな声を漏らす人多数。へへへ。


 トモさんは領主からの依頼で、これまた酒造スキル持ちにお酒造りを教えたり、休みの日にはアルノーさんの足跡探しをしていた。いくつもの街や村を回り、お酒で口の軽くなった人々からアルノーさんが残した成果を探し、時には大きな声でアルノーさんの貢献度を称え、ある時はアルノーさん縁の地として記録を残してきたようだ。どこへ行っても名も告げない偉大な魔術師はひっそりこっそり善行を積み、そのまま消えていったと記されている。恥ずかしがりやの小心者のアルノーさん。知れば知るほど愛おしい。


 トモさんは、また、時々騎士団のダグさんと取っ組み合いの試合もしているそうだ。本気で、手加減なしでぶつかり合える同士との出会いは、トモさんにとって心強い心地よい関係だったのだろう。ダグさんの話をする時のトモさんは心底嬉しそうだった。


 アルノーさんが消えてしばらくは寂しそうだったけど、今は元に戻りつつ様な気がする。商業ギルド長とお金儲けの話をしている時もかなり楽しそう。貧乏を経験しただけじゃなくて、もともとその素質はあったんだろうね。役所離れて解放されたんだろうか。トモさんが楽しそうなのでこの件はほっておく。


 ジュンさんは、街の治癒院の先生に人体について学んでもらったところ、先生が苦手だった怪我の治療が格段にレベルアップしたそうで、ぎりぎり欠損も治癒できるようになったとか。そんな先生に背中を押されて、人体について執筆もしている。多くの回復魔法の使い手に学んでもらいたいそうだ。ジュンさんの書いた本はこの後、多くの人に写本され、王都にも送られた。ソニアさんから感謝の手紙が届き、それを見たジュンさんが長くなった髪をかき上げ、白い頬を染め、艶やかに微笑んでいた。美しい光景だった。


 ジュンさんは推しがお釈迦様なので、自力で悟りを得たいというスタンスで生きてこられたから、人を治すことに葛藤もされていたけど、今はふっきれたみたいだ。治せる力があるから治す。アルノーさんの教えもジュンさんを支えている。


 ジュンさんと言えば、ジュンさんに欠損を治してもらった人たちが欠損治癒の会という有志の会を作ったらしい。噂で聞くところに寄れば、ジュンさんのファンクラブみたい。騎士団のボルクさんが世話役だとか。欠損を治した方は9割方男性なのに・・・。まぁジュンさん美人だしなぁ。あ、おさわりは禁止ですよ!!


 レンくんは、普通だ。一緒に討伐に行くし、アクセサリーを露店で売るし、歌も一緒に歌う。子どもとチャンバラごっこで遊ぶし、野良猫と遊んでいるし、時々トモさんに王都まで転移してもらって、カイルと王都のダンジョンに行ったりもしているようだ。ヴァルトさんとカカットも採取しにいくし、チョコレートもおねだりしてくる。自由。いつでも自由に行動している、それがレンくんだな。


 しばらくしてレンくんにドラゴンの爪で作ったドラゴンソードが届いた。領主様との約束が守られた。それは内側から仄かに光っているように見えて、物凄く綺麗だった。レンくんは思ったより軽くて降りやすいと喜んでいたが、素人が見てもこの剣美しいだけじゃない雰囲気放っているんだけどー。レンくんは、この剣を構えて、このポーズどう?カッコいい?と、どうすればカッコいいポーズに見えるのか余念がなかった。ドラゴンを討伐したことさえ、ただの通過点。ドラゴンを倒したことを自慢するわけでもなく、気負いもない。今を生きる男。これこそ我らのレンくん。うちの子可愛いー。

 

 冬には雪がちらついた中、暖炉に薪を入れ、穏やかに過ごした。人生初めての暖炉に4人とも興奮して、誰が薪を入れるのか少し喧嘩した。他愛のない言い合いが兄弟喧嘩っぽくて今となっては愛おしい。ぱちぱちと爆ぜる音が静かな部屋に響くと気持ちがとっても落ち着いた。トモさんやジュンさんは古老や領主様から借りた本を読んだり、わたしは編み物をし、レンくんはカッコいいメダルを作ったりして長い夜を一緒に過ごした。時には雪がちらつき、街で歌うのも延期になったりして一部のファン?から寂しがられたりもしたけど、穏やかでしっとりした冬、湯気をあげる鍋やおでんが美味しい季節だった。


 春にはわたしの誕生日も、ジュンさんとお釈迦様の誕生日もお祝いした。春、まだ肌寒い時、煌めくような新緑の芽生えに心が躍る。都会の灰色のビル群の中で消費される日々と違って、毎日新鮮な朝がやってくる。森の中で暮らすと季節の移り変わりが感じられた。日本の春分の日に当たる日にみんなからおめでとうの声をかけてもらった。嬉しい。異世界で28歳になった日、こんな幸せな誕生日が迎えられて良かったと思った。少し伸びた髪に去年もらった薔薇色のリボンをカチューシャみたいに結んでみた。自分の可愛いに嘘をつかなくてもいい日々にじんわり満たされる。


 ジュンさんはご自分の誕生日がお釈迦様の生誕日と同じだということで、水盆に綺麗な水と華やかなお花をいくつも飾り、レンくんが昨年作ってくれたお地蔵様を真ん中に置き、お祝いしていた。それを見たレンくんが、自分が作ったお地蔵様がお祝いされていることに気づき喜び、少し恥ずかしがっていた。貴重なレンくんのテレ姿だった。


 異世界に来て1周年記念も4人で密かに乾杯もした。あの日、スクランブル交差点で真ん中に足を踏み入れた4人。偶然だった、日本に居ればすれ違うだけの4人だった。それが1年経ち、もうすっかり家族だ。朝の挨拶に、三食のご飯、一緒に討伐に行き、息を合わせ退治する。お金を儲け、その儲けで美味しいものを食べ、一緒に笑い。時には馬鹿やって怒られる。そんな幸せの日常。あっという間に1年だね。魔法を上手に使えるようになった、お金の困らなくなった、レベルも上がった。作っているものも多くなった。街の知り合いも増えた。行動範囲も広がった。でも、帰ってくるのはこの家、いい感じで収まるこの4人。絶妙な縁に感謝した。


 何枚目かの新調した普段着にいつも入るワンポイントの刺繍。その刺繍を刺している時、無上の喜びを感じる。静謐な氷の結晶、凛とした桔梗の花、艶やかなキャンディ、そして可愛い子猫。渡す人の顔を思い浮かべ、ひと針ずつ刺していく時間が愛おしい。わたしが好きなもの、どれも豪華じゃないけれど、どれもキラキラして見える。そんなわたしの手仕事を受け入れ喜んでくれる人がいる。やっぱり幸せだと思う。


 夏にはトモさんとレンくんの誕生日のお祝いをした。トモさんは今回も少し緊張して、少し照れていたけど、はにかんだ横顔が綺麗で見惚れてしまった。最近目が優しいと思う。最初に会った時の圧の強さが少し加減されてきたのだろうか。相変わらずお金儲けは好きでお酒も大好きなトモさんだけど、わたしたちを見る目が優しい。そんな目に見られると少しくすぐったくなる。レンくんは良くトモさんに甘えている。王都に転移して!岩系ダンジョンに行きたいよ!とかそんな感じ。トモさんは苦笑してレンくんの頭をぽんぽん叩くと願いを叶えている。その時の目がやっぱり優しいんだよね。みんなのお兄ちゃん、そんな感じ。


 レンくんのお誕生日は、チャンバラごっこしている子どもたちも一緒にしたいとお願いされたので、騎士団の食堂で街の知り合いもたくさん一緒にお祝いをした。

 ローストビーフに、唐揚げ、出汁巻玉子に、ポテトサラダに、冷やしトマト、子どももたくさんいたので、ハンバーガーやサンドイッチも大量に作り、デザートはホットケーキだ。皆、きゃーきゃー喜んでくれた。生クリームとバターとはちみつとジャムを掛けてふわふわのホットケーキはレンくんのほっぺに似ていて美味しそうだった。


 紙で作った王冠を被った王子様みたいなレンくんを遠くからキラキラした目でリエナさんたちが見ていたのもいつものことだ。レンくんの師匠のグスタフさんに頼んでブレスレットを作ってもらってレンくんに贈っていた。グスタフさん会心の作に、少し涙ぐんでいたレンくんに、勇気を出して贈って良かったと、彼女たちが互いに抱き合って泣いていた。なんだか凄い熱い空間だった。でも、レンくん誕生日おめでとう!!


 夏は後、海に泳ぎに行ったよ!!水をはじく布は無かったけど、厚手の綿で作った水着もどきを着て、漁をしているおじさんたちを横目に泳いだし、はしゃいだ。

 久しぶりの海!潮風、足の指の間を流れていく砂。管理されていない海だからこそ、山ほどの昆布に、わかめに大量の海藻が打ち上げられ。貝もたくさん砂に埋まっていた。

 プラスチックのゴミの無い世界、どこもかしこも綺麗だった。砂で作ったお城を漁師さんたちが見つけ、なんだか凄いもんがあると大騒ぎをしたね。サンドアートが異世界でも流行るかも。


 トモさんは街の富裕層に声掛けして、二泊三日ぐらいで王都旅行を企画している。トモさんの転移魔法で一瞬で王都だ。そして王都の素晴らしい館でお泊り、観光して三日後にトモさんがお迎えするというもの。王都の館の有効利用している。プロ執事さんもプロメイドさんも仕事がないと勿体ないもんね。この企画は街で結構人気らしい。商業ギルドを窓口にしていて、ギルド長もうはうはらしいとか。トモさんはお金儲けしている時も物凄く幸せそうだ。お肌が艶々しているね。何か吹っ切れたような感じもする。幸せそうで何よりです。


 この企画じゃないけど、王都にはわたしたちも時々連れて行ってもらっている。ボードさんからの泣きつくような手紙がね・・・届くのよ。一緒にチョコレート作ったよ。王都も家事スキルと生活魔法使いを探し出してきたみたい。一緒に家事スキルを高めましょう!出来ること本当に多いんだから、これは外れスキルじゃないって声を大きくして言いたい!そう伝えてきたからか、最近は家事スキルで良かったですっていう声も聞こえる。嬉しい。一緒に生活を楽しみましょう!!


 今年の秋祭りも領主様に依頼された。悩んだけど初心に戻って?お祭りには焼きそばだっていうことで焼きそばにしてみた。ソースは手作りしてみた。鑑定が使えるので、家に最初からあった、ソースを元に自分が一番美味しいと思える焼きそばソースを作り上げた。ふふふ。わたしって天才!?甘くて味に深みがあって、焼けると暴力的な良い匂いのするやつー。ソースの手作りは大変だったけど、物凄く楽しかった。レシピは街の料理人ネットワークにちゃんと流したよ!しばらく街中ソースの焼ける匂いがしたのもいい思い出だねー。


 衣装も今年は頑張ってみた。和風にしてみた。浴衣だ。お祭りには浴衣でしょ!ということで、秋祭りなのに、夏祭りの衣装となったのに、他の3人は何も言わずに着てくれた。ありがとうー。頑張ったのは、布から織ったのだ。黒のしじら織の浴衣。シブイのはトモさんに。紺地に白く細い波模様の絣、粋なのはジュンさん、臙脂のちぢみ織の背中に龍を飛ばせたのはレンくんに、わたしはグレー地に赤い金魚を泳がせた。可愛いー。


 これで、4人で焼きそばを売り、焼きそばにはビールだろうと、トモさんがビールを作って一緒に売った。秋祭りだったけど、まだ残暑だったから寒くはなくて良かった。焼きそばを絶賛して器用に食べていく街の人たち。この1年でこの街の人たちはお箸が物凄く上手に使えるようになっている。まぁわたしが和食をどんどん紹介しているっていうのもあるかもしれない・・・。いいよね。日本文化の紹介、これぐらいなら。


 そして、浴衣で歌ったよ!演歌中心!!わたしの大好きな演歌!!毎晩暇なレンくんを特訓しました。最初は少し抵抗したレンくんだったけど、歌っていくうちに、気持ちいいでしょ。サビの部分、伸びる音に、こぶしに、情念。いいよねー。これ。お祭りということもあって、100人、200人?それ以上、もっとかな、多くの人に歌を聴いてもらえた。日本の大好きをお伝えした秋祭りだった。


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