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そして、迎えの夜が来た。今年も復活させた昔ながらのものだ。昨年度復活させた後、街に妖精や精霊がいつもの年より多く浮遊し、畑も豊作だったと聞く。今年は期待を込めて準備を進めたところ。
アルノーさんが消えたのはちょうど1年前になるんだね。しみじみする。街で子どもたちに今年もお菓子を配り、常緑が飾られ戸口に灯火が置かれた民家の前を歩くと温かい気持ちが広がっていく。みんながこの迎えの夜をちゃんと受け止めてくれているのがこうして形になったんだと実感すると嬉しい。そうとても幸せな気持ちでカンテラを手に家に帰る野原を横切る夜道、キラキラと光る精霊か妖精が近寄ってきた。ちょこんとトモさんの頭の上に止まる。
あれ?なんだか図々しい?いや、人懐っこい精霊?だね。そう思っていたら、人型に姿を取っていく。え?真っ白な髭は足元まで伸び、威厳のある風貌、ハリー〇ッターのガ〇ダルフ先生のような容姿、高さは15センチほど、ほのかに体が光っている。精霊?妖精?って人型になれるの?!その存在に驚いていたら、トモさんの頭の上に立っていたその人?精霊?は、少し照れたような何とも言えない顔をして、
「ただいま・・・」
「おかえり、アルノー。」
「「「えーーー!!!」」」
アルノーさんなの?アルノーさん!!え、戻ってこれたの?人型の精霊?何なのよー。トモさん以外がびっくりしている。あ、トモさんは平気だ。と、トモさん!!
「ああ、ある程度予測していた。昨年の迎えの日の準備をしていた時、備忘録に小さくメモが書いてあった。人々から敬われ慕われ名をたくさん呼ばれた精霊は人の姿を形どることができると。また、残留思念だろうが、死んでからも200年以上も存在していたのであれば、精霊へ辿り着ける可能性があるとも。俺は賭けてみようと思ったんだ。アルノーを精霊として復活させてみようと。
アルノーが生きた足跡を巡り、アルノーが残した功績を声高に訴え、俺の魔法が褒められれば、全部アルノーのお陰だと言い続けてみた。アルノーが戻ってくるのは、消えた迎えの日だろうと思っていた。精霊として生まれたばかりのアルノーがこっちに来ることができるのは、境界が一番淡い今日だろうなと。ははは。どうだ。俺は賭けに勝った!!」
満面の笑みのトモさん。珍しくガッツポーズもしている。頭の上にいた小さな可愛い?アルノーさんを手の平に乗せる。2人でじっと見つめ合っていた。それを見守る、ジュンさん、レンくん、わたし。暗い夜道にアルノーさんが淡く光る、その暖かい光に心も温かくなる。
ああ、トモさん、ここまで読んでこの1年行動していたの?!トモさん凄い!!わたしの中に沸き上がる歓喜。ジュンさんも、レンくんも少し泣きそうだ。わたしはさっきから既に泣いているけどさ。だって、トモさんだって泣いているよ。
これからの先、アルノーさんとトモさんの辛かった日々が全部幸せな日々に塗り替わるといいな。そうなるようにわたしも頑張るよ!
「さぁ、一緒に家に帰ろう。アルノーにも働いてもらうぞ。」
「な!わしに何をさせるのじゃ!!」
「はは。王都で魔法の講義かな。まだまだアルノーを必要としているものがいる・・・。」
「そ、そうか・・・」
何故か照れている2人を囲み、一緒に帰る。
「アルノーさんにトモさん、良かったですね。・・・成仏だけが幸せじゃないんですね。いろんな幸せがあることを見つけられてわたしも幸せです。」
「アルノーのじっちゃん!僕も直接会えて思ったよりお爺ちゃんだったのはびっくりしたけど、話せるようになって嬉しいよ。また魔法教えてね!!」
「アルノーさん、美味しいものをいっぱい食べて欲しいです。着替えの服も作らせて下さいね。ああ、今から楽しみです。」
全員でアルノーさんを囲む。1人1人の顔を見て少しぎこちなく笑うアルノーさん。長いローブをくしゃくしゃに握ったりしてもじもじしている。厳めしい顔の威厳のある老魔術師なのに、小さいから物凄く可愛い。少し照れている顔が物凄く可愛いよ。アルノーさん!!
「・・・ただいま、みんな。」
「「「おかえりなさい!」」」
◇
それからの日々も幸せの日々。
トモさんは相変わらずお酒を造り、ジュンさんは回復魔法の使い手として活躍している。レンくんはダンジョンへ出かけ、わたしはこっちの素材で日本の料理を作る。一度王都で歌も歌った。何故?!王宮で歌の要請がきた時驚いたけど、多くの人がわたしたちの歌に感動してくれたのか、たくさんの拍手があり、受け入れてもらえた。なんか嬉しかった日もあった。
そんな日々に白いお髭が似合うアルノーさんがふよふよと飛んでいる。
アルノーさんは、時にはお酒の味を評価し、時には料理に舌鼓を打ち、時には昔話をしてくれる。街に一緒に行き一緒に歌ったりもする。はにかみながら歌うおじいちゃん精霊にトモさんが微笑む。毎日がファンタジーだ。
特別な日もあれば、何でもない日もある。笑い声が絶えない日もあれば、みんなで静かに過ごす日もある。それでも毎日顔を合わせ朝の挨拶をし、一緒にご飯を食べる。こんな何気ない日々が続いていく。明日もきっと。




