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 ようやく王都疲れも抜けたところに、領主様のお使いのいつものお兄さんが冒険者ギルドに来たところに、居合わせた。ヴァルドさんに王都のお土産持ってきたんだよー。領主様が王都での報告を聞きたいという。


「まぁそうだよな。領主様先にお帰りになったから報告はいるか・・・。」


 トモさんが仕方がないなと呟く。これも仕事なら報告は必要。わかっているんだけどね。まぁ領主様はいい人なのがまだまし。お迎えの馬車に乗り、今日は冒険者の服のまま領主館へやってきた。ふふふ。領主館に着くと、着替えがさっと手渡された!わたしたちのサイズがどこからかバレている!!いえ、大丈夫。1人で着替えられますからと、逃げて着替える。ぴったりで、ぞぞぞとする。一体いつサイズが流出したんだろう。こっちの世界に個人情報保護法はきっと無いんだろう。


 いつもどおり領主様の前に出ていくと、領主様はいつも以上ににこやかだ。


「無事に戻られて何よりです。王都では大変なご活躍だったそうですね。」


「いえ、頼まれたことをしただけです。」


 トモさんが謙遜しながら答えると、領主様は首を横に振った。


「陛下の要望に応えることがどれだけ大変なことか想像できます。ドラゴンを討伐したとはいえ、庶民であるそなたたちに無理をさせた。で、どうであったか?」


 わたしたちは、王都であったこと、団長に絶対防御と転移魔法を伝授したこと、回復魔法で欠損が治せるようになったこと、若い青年に豪炎魔法が使えるようになったこと、そして厨房でいくつもの料理を教えてきたこと。王都にいた四日間のことを順序よくお伝えした。


「なるほど、うちの領主館にも魔法が使えるものがいます。機会があればお願いしたい。」


「ええ、冒険者ギルドにでも依頼を出してくれたら行きますよ。」


 トモさんは領主様相手でも、ビジネスライクだ。ぶれない・・・。


「では、今度依頼させていただこう。それと、ドラゴン討伐の時のことを少し聞きたい。トモが絶対防御の魔法を展開した瞬間、足をついた後、ハルから何かもらい、口に入れた後復活したように見えたが、何を口にしたのか教えていただきたい。」


「あー。あれはチョコレートですね。」


「ち、ちょこれと?とはなんだ?」


「ハルが作った菓子ですね。俺らの故郷の菓子のひとつです。」


「菓子なのか?!あの時確かに魔力が復活したように感じられたが、そのちょこれととは材料はなんなんだ!」


「えっと、草原のダンジョン11階にあるカカットというものですね。」


「な、なに?カカットなのか!あれは苦くてまずくて普通に食べないものだが。ああ。でも、あれは魔力欠乏症の薬になるぐらい魔力を溜め込んでいるものだ。ああ、あれを丸薬にしたのか?」


「丸薬?いえ、普通に菓子ですが。苦くもまずくもありません。至福の美味しさですよ!」


 ちょっとチョコ自慢しておこう。かなり試作したから、今は美味しいのだ。めちゃくちゃ美味しく作れるようになったのだ!へへへ。


「食べてみられますか?」


 わたしがマジックバックからチョコレートの試作をいくつか出すと、家令さんが取りにこられた。そのまま、家令さんが一口。毒見?!目を見開く家令さん、そのまま領主様の方を見た。驚いた顔のままだ。領主様もそのままじゃ気になるだろう。


「だ、旦那様!!ああ、説明するより食べてみてください!!」


 あー。家令さんが雑に領主様にチョコレートを押し付け、そのまま口に入れさせた。チョコレートを口に入れた領主様も目を見開いた!美味しさの驚きだよねー。美味しいもんねー。トモさんもジュンさんもレンくんもわたしのチョコの試作を食べているから、完成度の高さを知っている。ちょっと驚きの2人を見てにやにやしている。


「こ、これは!!!カカットがここまで美味しくなるのか!ああ、魔力が回復しているのがわかる。これは、素晴らしい!!単に美味しいだけではなく、魔力欠乏症の者や魔力の少ない冒険者にも喜ばれるだろう。ハル、これは誰でも作る事が出来るのか?!」


「ええっと、料理人でも作れると思いますが、非常に難しいので、チョコレートを作っていたら、他の料理が作れなくなると思います。料理人じゃなくても、わたしと同じスキルや魔法を持っていれば出来ると思います、家事スキルと生活魔法ですね。ちょっと面倒ですが、地道にすれば大丈夫ですよ。」


「そうか、家事スキルと生活魔法だな。探す。探すからこの街の特産にしても良いか。これは売れる。絶対に売れる。」


「ええ、いいですよ。あ、わたしが作る分を限定しないっていう約束なら良いですよ。」


「ああ、ハルが作る分を何かしようとは思わん。自由に作ってもらって構わない。料理長のガストがチョコレートに専任にしたら、他の料理は無理か。」


「ガストさんもある程度いけると思います。ただチョコレートは作るのが本当面倒なので、ガストさんが作りだしたら、他のお料理作れなくなると思いますよ。ラーメンもおにぎりも焼き菓子も。」


「あーそれはダメだ。やはりガスト以外に、ハルと同じスキルを持ったものを探そう。」


「あと、カカットが採れるのは草原ダンジョンの11階です。上級冒険者がいないとちょっと厳しいので、材料を仕入れるのは大変だと思います。」


「それは冒険者ギルドに依頼しよう!」


「材料が手に入れられ、わたしと同じスキル持ちが探せたら作り方教えにきます。」


「ハル、感謝する。田舎のなんの変哲もなかった街が4人のお陰で活気が出てきた。トモの酒造もいずれ教えていただきたい。どれもこれも冒険者ギルドに個人指名で依頼を出しておこう!!ははは。」


 豪快に笑う領主様。どんな依頼が出てくるのかちょっとだけ心配になったよ。でも、美味しいチョコを作っていただけなのに、街に貢献できそうで良かった。わたしは受け入れてくれたこの街が好きなので嬉しい。トモさんは苦笑している、ジュンさんは、わたしのチョコが受け入れられて一緒に喜んでくれた。レンくんは一番美味しくできたチョコは僕が食べるからねと宣言していた。レンくんは可愛いから言われなくてもあげるよ!!



  ◇


 領主様にご挨拶に行った数日後、街を歩いていると、黄金の翼のメンバーのリーダーのマスカリーノさんと大男のカリンナさんに会った。


「おう、ハル、ドラゴン退治ぶりだな、怪我とか無かったか。」


「はい。わたしは傷一つなく大丈夫です!」


「おまえの仲間のレン、なかなか凄い奴だったな。見直したぜ。」


「ええ、レンくんはやる時はやる子なんです。でも、討伐できて良かったです。」


「ああ、ドラゴンなんて大物はめったにでねぇから俺らも戦えて良かったよ。ドラゴンキラーの名を手に入れられたしな。ははは。」


「そうだ。ハル、冒険者ギルドの緊急納品案件でカカットが出ていたんだが、何故だか知っているか?」


「あ、もう領主様ご依頼されたんですね。それはチョコレートを作るためです!」


「ちょこれいと?なんだそれ。カカットは薬を作るんじゃないか。緊急納品なら、どこぞの御曹司でも死にそうなのかと思ったのだが。」


「チョコレートって、これです!!」


 わたしはあれからも試作を重ね、これぞという絶品チョコレートを作り出していたので、自慢したくて、2人の目の前に差し出す。


「な、なんだ?これ?茶色いが、艶々しているな。」


「美味しいので。食べてみてください!」


 あ、カリンナさんが口に放り込む。そして目を見開く。それを見て、マスカリーノさんも慌てて口に放り込む。そして至福の顔~。蕩ける顔。


「な、なんだ。これ。甘くて溶けて幸せが広がった。」


「びっくりした。」


「そうでしょ。そうでしょ。わたしの自信作なのです。」


「これが、カカットから作れるのか?!だから緊急納品案件か・・・。わかった。俺らも採りに行く!!納品すれば食えるのか?」


「領主様に収めた分は、王家に献上するって言ってらっしゃったから、一部をわたしに渡してくれれば作りますよ。そのうち、領主様のところで作っていくことになると思います。」


「そうなのか。これはしばらく草原ダンジョン潜りっぱなしだな。カリンナ行くぞ。メンバーに声掛けだ。」


「おう!ハル、情報ありがとな!」


 2人が慌ただしく駆けて行った。ヴァルドさんとレンくんも連日潜っている。家の中は甘いチョコレートの匂いが充満して幸せのひとときになる。学習したから寝る前に浄化して甘い匂いを消すけどねー。

 こうして街のチョコレート騒動は始まった。これは王都に飛び火し、しばらくずっと続くことになる。美味しい騒動だ。



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