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「みんなは今日も魔法講座?」


「俺は終わったから古文書を読みに行く。アルノーの足跡探してくるよ。」


「わたしも終了しましたので、王都の建築物を見に回ってきます。」


「僕もマスターしてくれたから、今日は、カッコいい防具がないか防具屋見てくる!」


「わたしは、今日はお菓子作りですねー。領主様が献上した7種類の焼き菓子を作る約束したのです。お菓子作ったら王都も歩いてみたいですねー。」


「ほんと、久しぶりの都会だね。異世界に来て、最初の場所が森の中だったし、近くの街は小さくて田舎町だもんな。」


「だからかもしれません。あの街、人が優しいです。小さいけど温かい場所です。最初の街があの街で良かったって思います。」


「アルノーさんの館にも近かったもんね!」


「そうですね。出会いって不思議ですね。日本の都会でまったく縁の無かった、あのまま日本に居ていたら、絶対交わることがなかった、わたしたち4人が、今では無くてはならない存在になりましたね。出会ったことが縁の始まりで、一緒に過ごしてきて縁を育ててきましたね。」


「そうだな。ジュンさんも、ハルも、レンもとっくに俺にとっては初めてできた家族みたいなもんだ。生きてきた環境も、年齢も、仕事も全部違っていたけど、知り会えて良かったよ。」


 少し照れながら嬉しそうに話すトモさんに、こっちまで嬉しくなる。ジュンさんが話てくれたように、わたしたちに出来た縁をこれからも大事にしていきたい。



  ◇



「王都の古文書にアルノーの記載があった。たぶんアルノーだ。」


 王都4日目、トモさんが王宮から帰ってきて興奮していた!ジュンさんにも見せたらしい。


「225年前に、王都で深刻な水不足が発生した時に、各地の井戸が枯れて住民の生活に支障がではじめた時に、流しの魔術師が水脈を探り、複数の井戸を採掘して、王都は危機を脱したらしい。この魔術師は報酬を辞退し、名も告げず王都を去ったらしい。」


「アルノーさんだね。」


「俺も、ジュンさんもそう思った。」


「助けられる力があるから助けたっていうのが一緒だね。」


「俺、これが俺の師匠のアルノーだってちゃんと言ってきた。220年前のドラゴンが街を襲った時に絶対防御で結界張ったのも師匠だってついでに言ってきた。」


「アルノーさんが生きてきた証だね。」


「ああ、あいつが生きてきたことは無駄じゃなかった。そう証明できただけでも王都にきた意味があったぜ。」


 そう言って、鮮やかにウィンク。トモさんはそっちがメインで王都に来たのか。


 自分を卑下しまくっていたアルノーさんにおまえの人生そう悪いもんじゃなかったって言いたいのかも。未練で残留思念になってまで漂っていたアルノーさんにトモさんは何かしたかったのかもしれない・・・。


「館も、遺産も、魔法すら貰ったからな、無駄な人生なんて無いんだよって言いたい。」


 トモさんはご自分とアルノーさんを重ねているのかもしれない・・・。あ、だからジュンさんはアルノーさんの足跡を探すトモさんに、『トモさん、あなたのためなんですね。』と送り出したのか。今、ようやく、わかった。トモさんはご自分の人生も無駄じゃないんだと証明したいのかもしれない。


 トモさんとアルノーさんは深いところで繋がっているのかも。共に親から逃げたアルノーさんとトモさんが共感する。そして自分の人生踏ん張って、生きた証を一緒に探すことにしたんだな。逃げたけど、人生無駄じゃなかった。そう言ってあげたかったのかもしれない。そう自分に言いたいのかもしれない。わたしは想像するだけで、何をしてあげられない。でも、だからこそ傍にいたい。美味しいご飯を作ってあげたい。今、何が出来るか考える。そうだ、毎朝おはようと言おう。今までも言ってきたけど、これからもずっとおはようを伝えよう。朝いちばんの笑顔で迎えたい。そんな日々。


 トモさんに何かわたしに出来ることはないかと聞いてみた。トモさんは少し困った顔をした後『一緒に飲んでくれるだけでいい。』そう笑った。その顔を見た後、トモさんの信頼を勝ち取ろうと強く思った。



  ◇

 


 さぁ街に帰ろう、魔法は伝授した。料理もラーメン、おにぎり、牛丼、チキンライス、7つの焼き菓子、マドレーヌ、フィナンシェ、パウンドケーキ、カヌレ、マカロン、サブレ、ガレットとボードさんと一緒に作った。満足していただけたので、帰ろう。


 王都の館はそのまま置いておくと、執事さんやメイドさんをどうしようって話になったけど、転移で時々遊びに来るということ。その間、維持してくれるみたい。経費は王宮持ちということで、そのまま拠点としてお願いしたところ。転移魔法も使えるって宣言したことだし、街の友達を王都に連れてきて遊ぶのもいいだろう。ってトモさん笑っていた。


 街のみんなにお土産を買ってきた。珍しい香辛料、シナモンやバニラ、カレーの材料のクミン、コリアンダー、ターメリック、フェヌグリーク、唐辛子、カルダモン、香辛料ではなく薬屋に置いてあるのもあったけど、鑑定してカレーに使えるというナビに従ったよ!これで家でカレーが作れる。めちゃくちゃ嬉しい。王都に来たかいがあったよ!!


 トモさんは王都の酒を買い、ジュンさんは万能薬のレシピを教えてもらい、レンくんは、火魔法の威力が上がる赤い石の付いた魔道具の腕輪を買ってきた。びっくり。そんなの売っていたんだ。レンくんはゲームみたいとにこにこ顔だ。トモさんに、ダンジョンの中以外で使うなよと念を押されていた。山火事注意だよねー。レンくんもわかったーって返事をしていた。



  ◇



 さて、街に帰る日、トモさんの転移魔法で一瞬で帰れるけど、一応王宮にお世話になったということで、最後の挨拶に行くことにした。魔術師団と厨房へ順番に挨拶に行ったところ、団長さんからも、ジュンさんが教えたソニアさん、レンくんと一緒だったカイルくんが泣きそうな顔で別れを惜しんでくれた。


「あー。街に帰るけど、定期的に王都の屋敷には顔を出す。館の執事に言付ければ俺に伝わるようにしておく。今後も街の友人を遊びに連れてきたりする予定だ。それに、団長はもう飛べるだろう。何かあれば街に来ればいい。」


 はっそうだ、っていう顔をする団長。転移魔法が使えるようになれば、王都と街も一瞬だ。別れを惜しむのはおかしいよ。といっても、わたしはまだ転移魔法使えないけどー。飛んだ先に誰かいて合体したらどうしよーとかわけのわからない不安があるんだよね。トモさんに言うと鼻で笑われたけど。


 最後、ボードさんに挨拶にいったら、ぎゅむぎゅむと抱き着かれた。く、苦しいー。息が出来ないよ!!どんどんボードさんの胸を叩くと、ようやく離してくれた。ぜいぜい。


「ハルさんとずっと一緒に料理がしたかったです!!」


「ボードさん、これが一生の別れじゃないですよ、また新しい料理のレシピは送りますし、また王都に来ます。その時はまた一緒に料理と作りましょう!」


「ハルさん、絶対ですよ!絶対。また一緒に作りましょう!!」


 大泣きのボードさんに帰りも抱きしめられ、人の温もりと愛しさが身にしみた。ボードさんからは昨日一緒に作った焼き菓子の甘い香りがしたよ。


 最後、館のプロ執事とプロメイドさんに後のことはよろしくーっとお願いして、トモさんの転移魔法で5日ぶりに家に着いた。帰ってきたーっていう気になる。懐かしいっていう気持ちになった。ここはわたしの帰る家なんだなってしみじみ思った。


「領主様からは、街で暮らさないかという話も出ているが、森の家が俺らの家だし、アルノーの館も森の中だしな。自由に出来る家を街の中で探すのは大変だしな。」


「僕もこの家が好きだよ。初めて4人で住みだした家だからね。」


「ええ、わたしも街まで少し距離はありますが、この森の静けさは良いものだと思っています。」


「そうだよな。俺もこの家が好きだ。」


「それに、だから街まではトモさんの転移魔法で一瞬になったんだし、もうここでいいじゃない。」


「領主様には悪いけど、わたしたちは街の外に住んでいても、街の人たちが好きですから、それでいいでしょう。」


 久しぶりに4人水入らずで家飲みした。トモさんはアルノーさんの話をし、ジュンさんはお釈迦様の話をして、レンくんはお化けキノコの火加減の話をして、わたしは買ってきた香辛料でカレーが作れるんですって力説していた、結構みんな遠慮なく酔って、そんな混濁した他愛の無い話をした。トモさんと一緒に飲む。それがトモさんの願いならばずっと叶えてあげたい。烏滸がましいと思いながらもどんどん飲んでかなり酔ってしまった。王都、お疲れさまー。やっぱりちょっと緊張していたね。戻ってきて気が抜けたね。そんな夜だった。



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