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翌日、領主館にまた4人がいた。最近呼ばれ過ぎ。最初に作った一張羅を毎回着ている。そろそろ仕立てた方がいい?!脱いだら綺麗に浄化しているけど!!
領主館には、騎士団長もギルド関係者も同席していた。
「このたびのドラゴンの討伐、誠に見事であった。」
領主様がわたしたちに、頭を下げた?ええ、いいの?お貴族様に頭下げさせて!!どうしよ!!ひとり動揺していたら、話が続く。
「トモの絶対防御での結界、レンの豪炎魔法を含む戦い、見事であった。聞いても良いか。トモはどこであのような凄い魔法を得たのだ。」
「わたしには師匠がいました。アルノーと申します。尊敬する師匠でした。」
「そうか、アルノーという名か覚えておこう。トモの言葉は過去系だな。ご存命ではないのか。」
「残念ながら故人ですが、この街には師匠が残したものが数多くあります。古文書にも荒れた街から守った記録が残っています。」
「そうか、生きておられればお会いしたかったものだ。」
領主が頷き、トモさんの口元にも笑みが見えた。アルノーさんの功績を刻み付けよう作戦を実行中のようである。
「さて、ドラゴンの亡骸だが、王家に献上したいと思っている。ドラゴンが生み出された原因を王都の学者や魔術師たちに調べてもらいたい。とどめを刺したのはレンだと聞いたが、良いか?」
「あ、食べられないのであれば大丈夫です!」
「た、食べる?ドラゴンを?」
「いや、食べないですよ。お腹壊すって言われたから。」
「そ、そうか。何か褒美は取らせよう、何が良いか?」
「あ、それでしたら、今回の戦いで剣が刃こぼれしたので、新しい剣が欲しいです。」
「わかった。ドラゴンの爪で作ってもらえるよう手配しよう。」
「え、ドラゴンの爪で剣!カッコいい―!!やったー!!」
大喜びのレンくんにほっとする領主様だ。レンくんはそんなに欲張りじゃないから大丈夫だよ!
「そこで、ドラゴンを王家に献上する際、4人に同行してもらいたい。騎士団長とヴァルドも同行する。今回の討伐の報告を兼ねている。」
4人で顔を見合わせる。どうする?どうしよう?目で話をする。この街にも慣れたし、王都へ一度行ってみるのも面白いか。そんな感じで頷き合う。
「その申し出、お受けします。」
トモさんが代表して答えてくれた。同席していた騎士団長もヴァルドさんも頷いている。王都には明日出発するらしい。ドラゴンが腐っても困るからねー。氷魔法の使える人がかちんこちんに凍らせているらしい。冬到来で少し寒くなってからで良かったよ!
巨大なドラゴンを運ぶための荷車は特別に用意され、騎士団員たちが交代で護衛につくことになった。
同行するのは、領主様とそのご一行様、騎士団長と騎士団員、冒険者ギルドの代表としてヴァルドさん、そしてわたしたち4人だ。場違いじゃないよねー?
「王都!どんなところだろうね!」
レンくんはもう浮かれている。まぁ。わたしだって浮かれているけどね。初めてこの街以外のところへ行くんだものー。
「おまえら、観光旅行に行くんじゃないんだぞ。」
トモさんが呆れたように言うけどねー。
「でも、トモさん、せっかく王都まで行くんだもの、楽しみたいです!綺麗な布やリボンがあれば買いたいです!!」
「わたしは王都の建物が気になりますね。建築様式は違うのでしょうか。」
ジュンさんも楽しそうだ。
「旨い酒はあるんだろうか・・・。」
トモさんだって、楽しみにしているんじゃない!4人で笑うと出発の時間みたいだ。
王都まで通常ならば、馬車で三日ほど。しかし今回は、巨大なドラゴンの亡骸を運んでいるので、予定より時間がかかっている。途中の街では、ドラゴンの姿を見た人々で大騒ぎになった。
「ドラゴンだ!」
「本物なのか?!」
「なんて、大きいんだ!」
道の両端に人が集まり、凍り付いたドラゴンを一目見ようと身を乗り出す。護衛の騎士団員が人々に道をあけるように声をかけ、ゆっくり進んでいた。凄い人!みんなドラゴンみたいんだよねー。ファンタジーの世界でもドラゴンは珍しいんだ!
街を通るが、ドラゴンの亡骸があるので、泊まりは野営だ。ドラゴンの荷車を囲むように陣を敷く。ドラゴンは凍っているので、近くに行くと寒い。見張りの騎士団員は大変だねー。わたしたち4人は見張り役には指名されていない!だから、料理を作る!!まぁ料理作って欲しいなーっていうみんなからの圧は感じた。大量に作るのはお手の物だから任せておいて!!
やがて鍋から湯気がたちあがり、おにぎりが並び、肉もどんどん焼いていく。温かい食事を順番に配ると、領主ご一行様も、騎士団員たちもほっとした表情になった。
「野営で、こんな温かい美味しい料理がいただけるとは。」
「ハルさんの料理は何食べても美味しいです!」
「たくさん、作りました、おかわりしてくださいね!」
「じゃ、ハルさん、唐揚げも作って!!」
レンくんが元気な笑顔でリクエストしたので、急遽唐揚げも追加。皆に絶賛されて食事が終わった。
食事が終わって、後片付けをする。空を見上げれば満天の星だ。こんなたくさんの星見たことが無かった。綺麗。
「キャンプみたいだな。」
トモさんが火が揺れるのを見ながらしみじみつぶやく。
「わたしキャンプは初めてです!」
「わたしも無いので、今回初体験ですね!」
「ああ、俺も無いな。」
「キャンプ体験者は僕だけ!?みんな生活に潤いはあったの?」
「社会人に潤いはないな。」
「無かったですね。」
「手作りしている時は潤っていましたよ!」
「もう。みんな。寂しいな。こうして火が揺れるのをみて、星を見て、莫迦な話をする。それだけで楽しい。これがキャンプだよ!!」
レンくんがそう言って笑う。他の3人も笑う。あのまま日本にいたら、こんな素敵な夜を体験することなんて出来なかっただろう。トモさんが酒を取り出す。今日はハイボールの気分らしい。収納に入れていた、ナッツ類とチーズをそっと出す。アルノーさんがいなくなって少し寂しそうなトモさんだったけど、こうして一緒に酒を飲むと心が温かくなる。寒い冬が近づいてきているのに、わたしたちの心は温かかった。
◇
予定より少し時間をかけて、一行は王都に到着した。王都は大きかった!!びっくり!高い城壁に、整然と並ぶ建物、広い街路には多くの人がいる。え、あ、レンくん!!!
「あ、ハルさん!!獣人さんいたね!!」
はしゃぎすぎないように小さな声で合図する。初めてみた!街にはドワーフのおじさんがたくさんいたけど、王都には獣人さんがいるんだ。テンションあがる!!
「おまえらきょろきょろするな!はぐれるなよ!」
トモさんにちょっと怒られた。
「ドラゴンだ!!」
街の人々が氷ついたドラゴンを見て騒ぎ出したようだ。その姿をみようと道の両側に集まってきた。ひえー。凄い人!!
王宮に到着すると、一行は正式に招待された。まずそのまま謁見するのではなく、旅の汚れを落とし、身なりを整えることになった。え?新品の衣装?わたしたちの分もあるの?ひえー。お高そう!!
「これ、わたしたちの分ですか?」
「ええ、皆様に合わせて調整しております。どうぞお召ください。」
「うわ、秋祭りできた仮装衣装よりも仮装のようだぞ。」
「ここはコスプレだと割り切っていこうよ!」
「素敵ですが、ちょっと恥ずかしいですね。」
「そうだな。王の前に出るなんてコスプレしていると思っている方がいいかもな。」
そんなことを言いながらみんなで着替えたら、ジュンさんは麗しい。トモさんは煌びやか、レンくんはキュート!みんなすごく素敵!!ちょっとはしゃいでしまった。
領主様と一緒に謁見の間に向かう。ちょっと緊張が半端ねぇー。どきどきが止まらない。
謁見の間は、想像していた以上に広かった。おおおー。お城の中の吹き抜け?ひろーい。高い天井、磨き上げられた床、壁に飾られた絵画、そして左右に並ぶ騎士たち。奥の王座には髭の生えたイケオジの国王陛下が座られ、その隣にはめちゃくちゃ綺麗な方、王妃様だろうな。
王族の近くには宰相っぽい人をはじめとした重臣っぽい人たちが、王宮魔術師団とか王宮騎士団っぽい制服を着た人たちがずらりと並んでいる。ひぇー。緊張する!!
「これより、ドラゴン討伐に関する報告を行います。」
宰相っぽい人の声が広い謁見の間に響いた。いい声だなぁ。あ、領主様が一歩前に出られた。
「この度、我が領に現れたドラゴンの討伐について、ご報告申し上げます。」
領主様は、ドラゴンが魔力だまりで生まれたこと、討伐の経緯、騎士団、冒険者ギルド、そしてレンくんの活躍、ジュンさんの治癒、トモさんの結界について説明していく。わたしは緊張で半分話が頭に入ってこなかったよ。
「ところで、討伐したドラゴンはどこにあるのだ?」
「ドラゴンは凍結されて荷車に乗せられ献上されました。それを王宮一番の収納魔法の持ち主に収納してもらっています。いつでも出せるようにしております。」
「そ、そうか!では、ぜひ見せてもらおう。」
陛下のお顔が少し輝いて見えた。もしかしてドラゴンにわくわくされているとか?!
謁見の間は広い、その広い場所の中央にぽっかりと空間が開いている。そこへ王宮の特大収納魔法の使える人が進み出て、何もない空間に手を差し伸べると、空間がゆらりと揺れた後に、巨大なドラゴンの亡骸が、かちかちに凍ったまま登場!!おお。レンくんがとどめを刺したドラゴン、倒した時は夜であまりちゃんと見ることが出来なかった。
収納魔法は100人に1人持っているということだけど、さすがにこの大きさまで収納できる人は少ないらしい。ドラゴンを収納していた人は少し誇らしげだ。ただわたしたちの収納には入りそうだ。面倒だからそれは言わないけどー。
謁見の間にだされたドラゴンをまじまじと見た。大きい。最初の感想がこれだ。遠くで戦っているところは見たけど、実際の間近で見るととても大きい。胴体だけで10トントラックぐらいかな。羽を広げるともっと大きいのだろう。西洋に出てくるドラゴン、勇者が倒すドラゴンらしいドラゴンという風貌だった。
貴族の女性たちから、小さな悲鳴が上がった。中には扇子を握りしめ、顔色を変えている方もいるみたい。卒倒する人がいないだけましか。まぁ死んでいるし、カチコチ凍っているから、絶対に襲ってこないとわかっているからだと思う。
そんな中、王妃殿下は背筋を伸ばしじっと見つめておられる、その横、陛下あまりにも目が輝いている!!
王宮騎士団長は厳しい表情だし、王宮魔術師団長は食い入るように見つめている。そして重臣の後ろに控えていた学者のようなおじさんたちは、そわそわし始めた。
「陛下、早く翼膜を確認したいです!」
「陛下!ドラゴンの血は一滴でも万能薬の材料になります。是非研究所へ回して下さい!!」
宰相さんっぽい人が、
「皆さま、今は謁見中でございます。調査についてはのちほど、正式に許可を取ってからお願いいたします。」
「で、でも、腐っちゃったらダメだから一刻も早く・・・。」
てんで勝手に好きなことを言い出す学者たちを、じろりと睨んでいる、あの人。そして一言、
「解凍するまで大丈夫でございます。あまりご発言されると許可が取れなくなるかもしれませんよ。」
学者たちは、その一言でしぶしぶ口を閉じたね。
「近くに寄っても良いか?」
陛下が王座から下りて近くに寄って来られた?!陛下なのに、なんでそんなに楽しそうなお顔。宰相さんっぽい人が、仕方がないですねっていう顔をされた。
「見るだけでございますよ。」
「わかった・・・。ああ、なんて巨大だ。これが本物のドラゴンか。宝剣があればわしでも戦えたかな・・・。」
最後の方は小さく呟いておられたが、そばにいたわたしにも聞こえた。ドラゴン討伐は命がけだけど、ロマンがあるのかなぁ。同じく陛下の声が聞こえたらしい、トモさん、ジュンさん、レンくんは目を見開いていた。この人マジかーって思ったんだろうな。実際に命がけで戦ったほうは、ロマンはいらぬっていう感じだもんね。
「よくぞ、ドラゴンを討伐した。今回の功績にたいする褒賞を授ける。領主と騎士団は、ドラゴンの献上と討伐に対して金貨5千枚、冒険ギルドには千枚与える。・・・そして4人には金貨千枚と王都に館を授けよう。」
「え?館?」
「そうだ、そなたたちには、頼みがある。そなたたちの技術と魔法は貴重だ。王都にしばし滞在して王宮魔術師団に魔法を指導してもらいたい。ハルは料理人に料理を教えて欲しい。
ジュンは回復魔法、トモには絶対防御、レンからは豪炎魔法を。」
それを聞いて王宮魔術師団っぽい制服を着た人が陛下に礼をして、
「陛下より、魔法の伝授をとのこと、謹んでお受けいたします。」
あー。これ、断れないやつー!!館をやるから、教えにこいっていうのはずるいー。でも、トモさんを見ると、目がキランと光っている、さては何か考えているみたい。ここはトモさんの意志に従おう!!
「わたくしも謹んでお受けいたします。その代わり古文書を読む許可をいただきたい。」
トモさんは満面の笑顔でそう答えた。ジュンさん、レンくんもトモさんの答えに反論はしない。こういう時のトモさんはわたしたちを決して裏切らないのを経験で知っている。
「許可する。他に王都滞在中に必要なものがあれば、遠慮なく申し出るがよい。」
「ありがとうございます。」
「ドラゴンの血液は万能薬がたくさん作られるでしょう、鱗や骨は魔法具や防具の素材に活用できます。もちろん、本物のドラゴンは220年ぶりです。それも今回丸々体が残っている喜ばしい状態でございます。学者たちは大いに研究が進むでしょう。必要な部位が確保できたら、必要とする商人や研究機関に素材の売却もできます。そう試算すれば、今回の褒賞は妥当なものだと申し上げます。」
宰相っぽい人の説明に、褒賞の金額を聞いてブーイングしていた人たちの声が消えた。1滴で万能薬が作れるようになるのなら、この巨大なドラゴンから一体何本の万能薬が作れるようになるのか。馬鹿でも簡単に試算したら、さっきの褒賞がそんなに高額じゃなかったとわかったんだろう。万能薬っていったいいくらなの?後でジュンさんにでも聞こうっと。
そうこうしているうちに、謁見は終了―。最後実物のドラゴンが出てきてドタバタになった気もしないけど、自分たちが主役っていう感じにならなくてほっとした。あんまり目立つのは気恥しい。




