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秋祭り当日。
朝から街の中央広場は、いつもと違う熱気に包まれている。色とりどりの布が張られ、露店が並び、焼いた肉の美味しそうな匂いも漂ってくる。いつもそれなりに活気のある街だけど、今日は別格だね。おお。お祭りだ!!
ラーメンを今日出すために、ダンカンさん、マルシェさん、ガストさん、モランさんにたくさん手伝って助けてもらった。レンくんとジュンさんも売り子としてエプロンをつけてもらって今も準備を進めていると、外からいろんな声が聞こえてくる。
「あの屋台何を売るんだ?」
「なんでも領主様絶賛料理らしいぞ。」
「ほら、屋台で菓子が人気のハルというやつの屋台らしい。」
「おう、ハルか、ドーナツもクッキーも旨いな。じゃ。今回もあたりか。」
「きゃー。王子様お2人が売り子をされるようよ!!」
そんな声が風に流れて聞こえてくるのを聞きながら、みんなにお願いをしていく。
「スープの温度は大丈夫だね。麺の茹で時間もたくさん試食したからOK。チャーシューもネギもとうもろこしもゆで卵も用意したもんね。器も十分用意してもらったし・・・。」
「おう、大丈夫だ、ハル、そう緊張するなよ。」
モランさんに笑われる。いや、他のみんなも生暖かく微笑んでいるようだ。だって、こんなに多くのラーメン作るつもりなんて無かったのにー。手伝う4人が絶対売れる。余ったら俺らが食べるから用意しろっていうんだものー。本当に麺を見るのも初めての人、たくさん食べにきてくれるのかな。
「ハルさん、大丈夫ですよ。わたしたちもお手伝い頑張ります。」
「そうだよ。僕が大好きなラーメンなんだ。みんなも大好きになるよ!!」
2人にも応援してもらっていると、隣の屋台からトモさんが顔を出した。
「お、ハルの準備は終わったのか?」
「あ、トモさん!お店お隣ですね。嬉しいです。エールとワインにされたのですね。」
「ああ、エールは気軽に、ワインは王都でしか飲めない高級品だ。お祭りらしくていいだろう。」
トモさんのところも、領主館から使用人さんが応援に来ているみたい。トモさんが手足のように使うのが目に見えている。でも、なんか皆さん嬉しそうだ。なんかトモさんのお酒も事前に領主館に見本として納めたらしくて、領主館の中でかなり評判が良かったそうだ。今日も、お祭り用にトモさんがせっせと大量に作っていたが、余ったら領主館がすべて買い取るという約束になっているそうだ。あ、お酒の噂を聞いた人たちからの声も流れてくるね。
「おい、あれが噂の酒か・・・。」
「そうらしいぞ、今まで飲んだことがない酒だと聞いた。」
「この街じゃ、エールと火酒しかなかったからな。ワインは王都でしか飲めん!」
「ここのエールはそんじょそこらのエールとは違うほど旨いしな。」
「俺は三杯はいくぞ!」
「何言ってるんだ、お前がそれだけで済まねえだろ!ははは。」
そんな中、領主様が広場の中央に姿を現した。ざわめいていた人々が少し静かになった。
「皆、よく集まってくれた!今年もこうして秋の実りを祝い、無事に1年を過ごせたことを喜び合えるのは、街を支えてきてくれた皆のお陰である!!今年は、新たな料理や酒も用意した。今日は皆で楽しもうではないか!」
大きな拍手が広がった。おお。お祭りらしい!!
「それでは、今から秋祭りを始める!!」
開会宣言ってあるんだーっと驚いていたら、
「ハル!客が来るぞ!!」
ダンカンさんに声をかけられ気を引き締める。本当にお客さん、来るかな。急に心配になってきた。
「いらっしゃいませー。とんこつラーメンと魚介ラーメン、どっちも自信作だよ!!」
レンくんが呼び込みをしてくれている。その横でジュンさんが丁寧に説明している。
「・・・見てお2人よ。」
「ええ、見ているわ、なんて素敵なの。」
「らうめんと言うお料理なのね。美味しいのかしら?」
「らうめんなんて、見たことも聞いたこともないから、きっと王子様のお国の故郷の料理なのよ!!」
「味はどっちでもいいわ。あのお2人かららうめんというものを買うのよ!!」
「「「おー!!」」」
リエナさん、キャロンさん、リタさんはよく3人でつるんでいるのを見かける。歌を聴きにきてくれる常連さんだ。今日もラーメンを食べにきてくれているみたい。彼女たちはどうみてもジュンさんとレンくんのファンだと思う。美味しいから食べていってね!
「らうめん?というのを2つ、とんこつと魚介をひとつづつ頼む!」
「はい、少々お待ちください!」
最初に注文したのは、ダンジョンで活動している冒険者だった。器の中白く濁ったスープに茹でた麺を入れる。その上にチャーシューとゆで卵にネギを添える。魚介の方にはチャーシューととうもろこしとネギにしている。
「お、なんだこの匂い、旨そうだな。」
「俺の方は魚の匂いがする。すげえ腹が鳴ってきたぜ!」
「これどうやって食べるんだ?」
「あ、箸というものを使って食べても良いですが、フォークでも掬って口に入れてください。スープは器から直接口につけて飲んでいただいても大丈夫です!」
「おう、こうか・・・。うま。おい、これうまいぞ、なんだこれ!」
「本当だ、旨い。」
「とんこつってなんだ、めちゃくちゃこのスープ旨いぞ。」
「とんこつって、骨からじっくり出汁をとっているんです。魚介はお魚の出汁ですね。」
「骨からこんな旨いスープが出来るのか?」
「これは、祭りが終っても喰えるのか?」
「ええ、冒険者ギルド併設の酒場で出してくださるようですよ。」
「おう!そうか!これは何度でも食べたいな!!」
「おう、ハル!来たぞ!!」
あ、黄金の翼のカリンナさんとマスカリーノさん、後知らない人が数人一緒だ。
「カリンナさん!マスカリーノさん!来てくださったのですね!」
「ああ、あんな旨い料理を作るハルの屋台、絶対に行くって決めていた。」
「美味しいので食べて行って下さい!麺は慣れるまでちょっと食べにくいかもしれませんが、美味しいです。頑張ってください!!」
「豚骨と魚介どっちも頼む。どっちか一方しか食べないと後悔しそうだからな。はは。旨けりゃみんな頑張って食べるぜ。あと、今日はおまえの料理の旨さを教えるために若いのも連れてきたぜ。よろしくな!」
マスカリーノさんが若い子たちを紹介してくれた。みんな、もじもじしている。美味しいから食べていってね!
「レン、ジュン、ハル、食べにきたぜ!」
「あ、ヴァルドさんも来てくれたの。嬉しい。ゆっくり食べていってください!」
「俺たちも来たぜ!」
「あ、マーベルさん、団長!」
「マルシェから、みんな食べにこないと後悔するぞって脅されたからな。はは。」
そんな1人1人に挨拶が出来たのはちょっとの間だった。それからは怒涛のように客が押し寄せて、自分が何をしているのかわからないぐらいに忙しくなった。みんなが手伝いに来てくれて本当に良かった!広場のあちこちで、ラーメン食べたか?ワイン飲んだか?というような合言葉みたいな声が聞こえてくるが忙しくってそれどころじゃなかった。
ダンカンさんの麺さばきが職人さんのそれになり、ラーメンの上のトッピングはマルシェさんが芸術的に乗せる。モランさんが裏で器を洗い、ガストさんが全体を見回して指示を取る。わたし何やっているんだー状態。あたふたと頑張る。
いつも歌を聴きに来てくれている男の子だ。
「お兄ちゃん、これはどこの料理なの?」
「これはわたしたちの故郷の料理だよ。」
「故郷?」
「そう、昔住んでいた場所の料理なんだ。」
「昔なんだ、こんな美味しい料理がたくさんあったの?お兄ちゃんの作るドーナツ僕大好き!!」
「ええ、住んでいたのは昔、もう帰られないんだ。とても美味しい料理がたくさんありましたよ!」
「また、作ってくれる?」
「ええ、時々冒険者ギルドで新作は出していくことになったので、お父さんかお母さんと食べに来てください。」
「なに?明日からは冒険者ギルドでこれが食えるのか!」
「俺、食べに行くぜ!」
「俺も、俺も、こんな旨い飯初めてだ。」
◇
昼過ぎには完売した。全部売り切れた。隣のトモさんのお酒も売り切れたようだ。満足げな顔をして、スタッフの使用人さんたちと乾杯している、あれは隠していたワインか。わたしもハンバーガーをマジックバックから出してきて、みんなに渡す。
「お疲れ様でしたー!!」
「「「「お疲れ様!!」」」
「いや、凄かったな。用意した分があっという間にはけたな。」
「やっぱり多めに用意しておいて良かったね。」
「お、この肉はさみパン旨いな。」
「領主様のお喜びだと思います。」
屋台裏で、ダンカンさん、マルシェさん、モランさん、ガストさんがハンバーガーを食べながら今日の感想。無事に大きな問題なく終わって良かった!!レンくんもジュンさんもお疲れ様―。2人も美味しそうにハンバーガーを食べている。わたしも食べる。今日の出来も力作なんだもの。
「ラーメンは明日から冒険者ギルドで出すぞ。」
「騎士団でもわたしが作るよ。」
「領主館でも定期的にお作りすることになると思いますので、今回は良い勉強になりました。」
「俺は、ダンカンところに食べに行くな!」
「皆さん、気にいってくださって良かったです。」
「『穂草』のおにぎり、牛丼、ホットドック、ハンバーガー、そしてラーメン。俺酒場のマスターのはずだったのに、いつの間にか料理人になったような気がする・・・。」
「ダンカンは器用だからいいじゃないか。」
「冒険者ギルド酒場にも人を入れてもらおうと思う。」
「そうしろ。」
ハンバーガーを食べ終わった頃、お祭りの後半戦が始まる。そろそろわたしたちの出番も来る!
「トモさん、ジュンさん、レンくん着替えに帰りましょう!!トモさんよろしくお願いします!」
「おう、じゃ、街の門まで行って、門を出てから飛ぶぞ。」
「楽しみですねー。」
「結局どんな感じにしたんだ。」
「アルノーさんの若い頃の服に、それぞれの身長に合わせて足りない部分を足してお直ししました。みなさんに似合うと思います!!」
家に戻って、みんなの衣装をインベントリから取り出す。トモさんには明るい青、ジュンさんには淡い紫、レンには薄紅色、わたしは黄緑色が差し色で入っていて、黒がアクセントになっている。元はお貴族様の服だけど、そこからずいぶん大人しい感じにしている。
「まぁこれぐらいならいいか。」
トモさんから及第点をいただく。レンくんは喜んで自分の部屋に着替えに行った、ジュンさんはしみじみ見ていたけど、それほど派手ではないということで、覚悟して着換えに行った。わたしも着替えよう!
みんなで着替えたので、また、トモさんの転移魔法で街の門に飛ぶ。門番さんに不審に思われているかもしれないけど、ちゃんと身分証明書もあるしねー。
中央広場に向かう。黒を基調とした服に刺し色が映える。いい。自分でお直ししておいて、なんだけど、いい。とてもいい。領主館へご挨拶いった時の正式なごりごりの服ではなく、どこか現代風?日本のアイドル風にお直しした衣装はハロウィンの仮装みたいかな。お祭りだものこれぐらいいよね。
わたしたちが中央広場の真ん中に行くと、少し周りがざわざわした。さっきまでラーメン作っていたのに何故?という感じだろうか。広場を見回したところ、さっきラーメンを食べてくれた冒険者に、黄金の翼のメンバー、騎士団に、ヴァルドさんたち、そしてさっきまで一緒に屋台をやってきた料理人さんたち。うお。今日は見知った顔が多い!!
「皆さん、今日はありがとうございます。今まで歌ってきた歌を歌います。どうぞお聴きください!」
きゃー!!という歓声が広がる。あ、リエナさんたちも着てくれている。ジュンさんとレンくんのファンだ、今日の衣装はお気に召しましたでしょうか。ちょっと聞いてみたい。
では、歌います!!
秋祭りの夜、街中がまだ賑やかだ。空には星が瞬く。その下を魔道ランプに照らされたわたしたちが歌う。この街に来て最初に歌った曲。リクエストされた曲、4人で歌って気持ちよかった曲、全部思い出の曲になっている。レンくんがお祭りなら踊れないと!という意見も取り入れ、踊りやすい曲も入れてみた。レンくんにしごかれて?わたしたちも少し踊れるようになったので、ほんの少しご披露してみたり、なんだか楽しい。
―トモから楽しいという気持ちが伝わってくる。わたしも楽しくなる。良い夜だな。
羽目を外した大人が騒ぐ祭りの夜は始まったばかりだった。




