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秋祭りまで毎日準備。終わらない準備・・・。言い出したわたしが悪いんだけど、ラーメンと衣装作りだ。ラーメンはお手伝い料理人衆が買い出しも仕込みも手伝ってくれている。屋台の場所もばっちりだ。問題は衣装。最初は少し日本風にしようかなと思ったけど、もう時間が足りない。
アルノーさんが自分の収納に入れたけど、2度と着ることがないまま、捨てられなかった若い頃の服をいただいた。もうこれそのまま着るだけでアイドル衣装みたいに華美でキラキラでいいんじゃないとかちょっと思ったけど、やはり4人で雰囲気揃えたかったし、アルノーさん18歳の服は、わたしはそのまま着ることが出来たけど、高身長の他のメンバーはこのままじゃサイズが合わない。
だから、市場で布を書いたして、黒く染めてアクセントにしてみた。黒がびしっと引き締まるような感じ。差し色は、最初のイメージのまま、トモさんは明るい青、ジュンさんは淡い紫、レンくんは薄紅色で、わたしは黄緑色にしてみた。差し色があるっていうことがやっぱりアイドルだよねー。って暗黙の了解。
「ハルさん、大丈夫ですか?根詰めすぎていません?ちょこっと回復魔法かけましょうか。」
ジュンさんが連日のお祭りの準備でばたばたしていたら、優しい声をかけてくれた。え?通常の疲れも回復魔法でとれちゃうの?
「お、お願いします!!」
「回復!」
いつもの黄金の光がわたしを包むと、ぱっと体が楽になる。へー。本当に疲れがなくなってしまった!びっくり!!
「ジュンさん、これ、凄いですよ。怪我じゃなくても、疲れが取れるなんて!!」
「回復魔法の練習で、自分にかけてみたら、疲れが取れることに気づいたんです。まだ治癒院では実施していませんので、内緒ですよ。」
ジュンさんはそういうと、両目をぱちんと閉じた。ジュンさんはウィンクが出来ないようだ。可愛い。ジュンさんも少し照れている。
「トモさんは毎日お酒造っているって言っていましたが、ジュンさんとレンくんは毎日何をしているんですか?」
「わたしは、アルノーさんから教わった「土木魔法」と「建築魔法」を生かそうかと、お祭りを行う広場の整備を手伝っています。日本で建築の監督管理を10年以上していたので、楽しいですよ。もちろん、合間に治癒院で治療したり、傷薬も作ったりしていますね。」
おお、ジュンさん、「土木魔法」と「建築魔法」もう使いこなしているんだ。凄いな。やはり優秀な人なんだ。
「はーい。僕は、騎士団に稽古にいったり、ヴァルドさんとダンジョンへ行ったり、最近は街の子どもとチャンバラごっこしているよ!!」
「え?チャンバラごっこ?」
「うん、軽い子ども用の木剣で打ち合いするんだ。ジュンさんから傷薬貰ったから、少々の怪我は大丈夫だよ!あーそうだ。聖水が減ってきたから、また作って欲しい。ヴァルドさんとアンデッドダンジョン行くのが面白いんだ。2階がレイスで、豪炎魔法で消せるんだけど、3階のマミーには聖水が効くんだ。」
子どもたちとチャンバラごっこは想定外だ。本当に大丈夫なんだろうか。でも、楽しそうならいいか。レンくんは本当人懐っこいからどこでもするりと入っていくなぁ。ヴァルドさんとアンデッドダンジョン行っているんだ。
「聖水はジュンさんに手伝っていただければ、1度作ったことがあるので、すぐに出来ますよ!」
「わたしもお手伝いさせてください。」
聖水を作ろうとしたら、トモさんが1階へ降りてきた。お酒造りのノルマは達成したんだろうか。
「レン、祭りの準備で忙しいハルにあんまり頼むなよ。」
「はーい。聖水はお祭り終わってからでいいよ!」
「そういえば、最近、お祭りの場所の整備をしている時に、街の顔役さんともお知り合いになれて、街の備忘録を見せてもらえたんです。」
「へー。こっちの世界でまだ本とか見ていなかったな。備忘録か、俺も読んでみたいな。」
「トモさんもご興味ありますか。なかなか面白かったですよ。そこで約200年前に、近くの海が荒れて大変だった街を救った魔術師の話が残っていました。名前は伝わっていなかったのですが『助けたくて助けたんじゃない。助ける力があったから使っただけだ』という言葉が残っていました。これを聞いて、『助ける力があったから使っただけ』そんな境地にわたしもなりたいなと思いました。」
―あ・・・あれ残ったのか・・・。
「アルノーが残したのか?」
「え?アルノーさんがあのお言葉を?!」
「なんだか、アルノー照れているぞ。」
「アルノーさん、備忘録には、あの時流れの魔術師が魔法で街を守ってくれたからこの街は残っていると書かれていました。名も知らぬ魔術師に感謝の言葉もたくさん書かれていました。アルノーさん読むべきですよ!」
―この街が助かったのは良かった。この街の人は皆トモらに優しい。助けて良かった。
「アルノーは決して逃げ続けた弱虫じゃねぇ。おまえは凄い奴だと俺は思っている。」
「そうですよ!こんな素敵な魔法を授けてくれました。」
「僕もアルノーさんから大きな魔法受け取ったよ!」
「アルノーさんは、『助けたくて助けたんじゃない。助ける力があったから使っただけだ』って言ったけど、本当は思わず助けてしまったんじゃないですか。助けられる命なら助けたい。逃げてばかりの人なら見捨てていきますよ。あなたは強くて優しい人だと思います。」
―・・・。
「アルノー酒を飲もう。俺が飲めば、アルノーにも酒の旨さが伝わるだろ。」
「はい!美味しい夕飯も出します。お酒に会うおかず何にしましょう。家庭菜園のなすびが美味しく出来たのがあるんです。焼きナスかなぁ。冷やしトマトも出しますね。前に市場で買った魚、上手に一夜干し出来たので、それも出しますね。ご飯はおにぎりにしましょう。」
「僕、だし巻卵食べたいです!!」
「わたし、今日はあまり飲まないようにしますね。」
「ああ、そうしてくれ。ジュンさんは飲むと色っぽすぎるからな。どうしていいのかわからん。」
みんなで顔を合わせて笑ってしまった。確かに酔い過ぎたジュンさんは色気がありすぎてみんな困ってしまったもんね。トモさんがジュンさんをからかい、レンくんが便乗していじっている。ジュンさんはあの時は本当悩んでいたんですってーと叫ぶ、ついつい笑いたくなるような仲間内の楽しい掛け合いで和んでしまった。
―こんな夜も悪くないな。
楽しい夜は始まったばかりだった。




