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ふと目が覚めたら秋だったっていう感じ。こっちの夏はカラッとしたサラリとした避暑地の夏だったけど、秋は秋!って主張しているような秋だ。涼しい。頬を撫でる風の温度がすっと下がっている感じ。そう朝晩少し肌寒い。秋の服を買いに行くか、わたし自分で作ろうかな。こっちの服もいいけど、庶民は古着を買うことが多いんだよね。わたしは古着がちょっと苦手なのと、服の一部でいいから可愛い飾りとか付けたいのだ。ポケットがほんの少し丸みがあるとかねー。
ということで、トモさんに頼んで街まで運んでもらう予定。アルノーさんに教えてもらっても、やっぱり転移の魔法はトモさんにしか使えない。トモさんもアルノーさんが胸の内に存在しているから使えるんじゃないかと言っている。転移できるはずがないってどこかで思っているからかもしれない。ゲーム脳のレンくんならいつか出来そうだけどね。
「ハルは布を買って、服を作るのか?」
「はい。最近朝晩涼しいので、長袖で着て楽な部屋着を作ろうかと思って。」
「面倒じゃなければ、俺のも作ってくれるか?こっちで売っている服は古着か、物凄くお高いのか、二極端だと思う。古着は肌に悪そうだし、超お高いのは動きにくそうだしな。」
「ええ、いいですよ。わたしのスキルならあっと言う間に縫えます。何色でどんなのがいいですか。」
「出来れば白か生成りで、日本にあったシンプルなパジャマみたいなのがいい。寝る時に装飾はいらない。家では楽したい。」
「わかりました。他の2人にも同じものを作ろうかな。」
「そうしてやれ。半袖だと2人とも風邪ひいたら可哀そうだしな。」
「2人聞いてきますー。」
「えー。秋物の部屋着?欲しい!僕は綺麗な色がいいな。肌触りは気持ちよいのがいい。あと、僕は暑がりだから、作るのが最後でもいいよ!」
「わたしも肌触りが良ければそれで大丈夫です。」
「お釈迦様の刺繍とかいります?」
「え?お釈迦様の刺繍?いえいえ、普段着でごろごろする服にお釈迦様の刺繍なんて失礼で申し訳ないので、ゆっくりできないと思うので、ごめんなさい。パンツ作って下さったみたいにワンポイントがいいですねー。」
「わかりました!2人とも肌触りが良い、シンプルなやつねー。みんな結局お揃いになるかもー。」
「ハルさんがやりやすいようにしてください。普段着にそこまで拘りはないんです。」
ジュンさんもレンくんも拘りそんなにないのであれば、素敵なものをわたしが好きに作って良いとか?!
「あー。アルノーさんの館にあった華美で上品でうっとりする服もいいかなぁ。」
「いえいえいえ。ハルさん、普段着ですよ。おうちでまったりする服です。華美は必要ないですからね!」
正装が恥ずかしかったのか、全力でジュンさんにお断りされてしまった。レンくんはそれでもいいよーと笑う。レンくんは本当になんでもいいみたいだ。元がいいから何でも似合うからねー。レンくんの部屋着だけフリルつけちゃおうかな。王子様フェイスのレンくんには似合いそう。
「えげつないことするなよ。普通がいいんだよ。こういうのは。」
「えー。ハルさん、僕の部屋着になんかするのー?してもいいけど、ラーメン作って!!少し涼しくなってきたら、食べたくなっちゃった!」
「ラーメンは盲点でした!!確かに寒くなってきたら欲しいですね。うん、わかりました。ラーメンもフリルの普段着も任せておいてください!」
「レン、知らないぞ。ハルは暴走したら結構凄いからな。」
なんだかトモさんがごちゃごちゃ言っていたけど、リアル王子様フェイスにコスプレもどきの可愛い素敵な服を作ってもいいだなんて、どれだけのご褒美~。ラーメンも頑張る!!
「普通のパジャマと何枚か部屋着を作る事にします。そのうち1枚をちょっと可愛くさせてもらいます~。」
「まぁ、パジャマが普通なら良いか。でも、ハルの負担は大丈夫か?」
「はい!家事スキルのお陰でこういうのが作りたいと思えば、あっと言う間に出来上がってしまうのです。不思議ですね。手の動きが10倍速ぐらいに動くんですよ!びっくり!」
「スキルって本当に不思議だよな。俺の酒造も材料があれば、あっと言う間に樽の中に酒ができているしな。この街にブドウが入ればワインを作ろうと思っている。」
「あー。ワインですか!ワインもいいですねー。ぶどうを市場でみたらわたしも買っておきます!」
「寒くなってきたら焼酎も増やすか。焼酎は砂糖がいるが、在庫は大丈夫か?」
「お砂糖は毎日増やしているので、かなり増えてきていますよ。まぁわたしがお菓子を作りたいからせっせと増やしているんですけど。」
「ハルのお菓子の分はよけておけよ。」
「そうだよー。ハルさんのお菓子は作ってよー。今日はシュークリームが食べたい!!」
「はいはい。レンくんはシュークリームですね。街は牧場が近いのか新鮮な乳製品が多いから美味しい生クリームが出来るのが嬉しいです。」
「生クリームとカスタードクリームも一緒にいれて!」
「レンくん、あまり我儘言ってハルさんを困らせてはダメですよ。」
「あ。大丈夫です。生クリームとカスタードクリーム両方入れるのも簡単ですよ!」
「ほんと、ハルさんのお菓子作りは凄いですね。いつもご相伴させていただいて美味しいものをありがとうございます。」
「いえいえ、お菓子って作っているだけでわたしが幸せになれるから食べてくれて嬉しいです。最近は作っている時に、精霊か妖精がふよふよ飛んでいるのをよく見るようになって、可愛いのできゅんきゅんしています!!」
「わたしも浮遊している精霊を見かけることが多くなりました。回復魔法の黄金の光がお好きな精霊が使うたびに寄ってきているみたいです。」
「あれ、可愛いですよねー。」
「ねぇねぇ。ハルさん、チョコは作れないの?」
「あー。カカオを見かけないんですよ。材料が無いものはさすがに作れなくて。」
「カカオ!草原のダンジョンの下の方に熱帯地帯があるんだって。カカオもあるかも!!」
「熱帯地帯!バナナとかマンゴーとかもあるでしょうか!!」
「あるかな?行って見ないとわかんないよ。そうだ!ヴァルドさんと行こうかな。ヴァルドさん古傷治ったから時々冒険者に戻るって言っていたし!!」
「そうだな。レンが1人で行くより安心だな。ヴァルドのおっさんは上級冒険者だしな。」
「それでも万が一怪我をしたら、すぐにわたしに治療させてくださいね。今日は一日治癒院にいると思います。」
「俺は今日一日酒造っている。合間にアルノーから魔法を教わる予定だ。」
「わたしは裁縫日和ですね!」
「じゃ、ヴァルドさんとカカオみつけたらチョコ作ってねー。僕、行ってくるよー!」
5日働いて2日休むを続けていると、休みの日は大抵バラバラだ。ジュンさんはお休みの日のうち、一日は治癒院に行かれることが多い。残り一日は死んだように眠られるのでバランスは取れているからいいのか。わたしは休みの日は家事をしていることが多い。
アルノーさんの遺産が思ったより多かったので、5日間ずっと働かなくても生活できそうなんだけど、なんか動いている方が性に合うと言うのか、4人で一緒に行動するのが好きなのかもしれない。5日間、一緒に討伐に行き、街でご飯食べたり、騎士団に稽古に行ったり、歌を歌って、露店でお店屋さんをする。
日本で淡々と働いていた日々がグレーなら、こっちの世界では日常がカラーでぱっと晴れ渡る明るい日々で、クリアに輪郭がはっきりしている感じ。ぼやぼやのぼやけた日常ではないのだ。毎日が楽しい。
ありのままの自分でいていい場所がここだ。こっちの世界にきて約3か月髪の毛も伸びてきた。トモさんとレンくんは街の散髪屋さんで短くしているが、わたしとジュンさんは髪を伸ばしている。ジュンさんはより上品で優雅だから髪が長いと本当に美人でふと色気が漂う。この人がこの街欠損治療の第一人者だなんて見た目ではわからないよね。
わたしの髪も少し耳を覆うような感じになってきた。髪が伸びてなんだか嬉しい。みんなから可愛い、似合っていると言われると更に嬉しい。自分というものが外に出た形がこれだと思うと、少し長い髪が愛おしい。
うん、でも、今日は三角巾を頭にかぶる。お揃いの割烹着も作った。どこか憧れていたのだ。三角巾と割烹着!母性の塊というこの恰好をしてみたかったのだ。うちのおばあちゃんが物凄く似合っていて、密かに憧れていた。これを着て今日はレンくんのためにラーメンを作る。レンくんは濃厚とんこつラーメンが食べたいという。どっちかといえば、わたしは魚介系の北海道ラーメンが好きだ。ああ。あ、そうだ、どっちも作ろう!
街に材料を買いに行く。街のお肉のメインは魔物肉だ。ボア肉があったので、捨てる骨部分も貰ってきた。ねぎっぽい野菜をたくさん。西の市場に魚介スープになりそうなものもゲット、海岸へ足を運んで捨てられているわかめっぽい海草も拾ってくる。ここの街の人、誰も海草食べないんだよー。勿体ない。
麺は粉と塩とかん水が必要だけど、わたしの家事スキルは粉と海水で作れると言うので、えいやっと作ってしまう。作ってしまえるのなら経緯はいいや。
煮込みもスキルがあれば時短で出来ちゃう今、濃厚とんこつスープもあっと言う間だ。美味しい。んー。デリシャス!!そう、このデリシャスっていうのは、おばあちゃん口癖だったなぁっと懐かしく感じる。美味しいとついつい口に出る。小さい頃たくさん聞いたから魂に刻まれているのかもしれない。うん。本当に美味しくできた。これはレンくんから合格点をもらえそうだ。えへへ。
魚介系北海道ラーメンもいい感じ。小魚と昆布のような海草からとった透き通ったスープは雑味がなく奥行きがある。良きかな。良きかな。こっちのラーメンは麺が縮れている。とんこつはまっすぐだ。どっちも美味しく出来た!レンくんが帰ってくるのが楽しみ。はっ!チャーシューを作らないと!!ゆで卵もいる!!メンマはいるのか、海苔はないけど、トッピングはチャーシューとゆで卵とトウモロコシもいる?
最後トッピングに焦ったけど、わたしが濃厚とんこつラーメンと魚介系北海道ラーメンの試作も終わり、レンくんも帰宅した。
「うわー。ハルさん!ハルさん!ラーメンだー!!」
「へへへ。美味しいとんこつラーメンできましたよ!」
「やったー。僕嬉しい。日本で毎日のように食べていたんだ。なんだかとっても嬉しいよ。ハルさん。」
「レンくんが喜んでくれて、わたしも嬉しいです。」
いつも元気なレンくんが少し涙ぐんだ気もしたけど、ここは見てみぬふりだ。
「ああ、ハルの作るラーメンは売れるぐらい旨いな。」
「わたしは魚介ラーメン好きですね。あっさりしているのが好みです。」
―これもトモのいた故郷の味なのか。熱くはないのか。
「ああ、熱いのを食べるのが美味しいんだ。」
アルノーさんにはトモさんが食べた味がイメージで伝わるんだそうだ。この熱さも伝わるといいな。
懐かしいラーメン。日本を思い出す。たくさん日本の料理を作ったけど、やはりレンくんが大好きなラーメンということで感慨深かった。アルノーさんにも好評だったよね?みんなでラーメンを堪能し夜は更けた。日本を思い出す良い夕食だった。




