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次の日は良いお天気だった。部屋には窓が付いている。ガラスが嵌っていて、カーテンがないから、森の緑と朝日が目に入る。森の中にいると小学生の頃の林間合宿を思い出す。気候も爽やかだから気持ちがいい。
服を着替えて下に降りると、ジュンさんとトモさんが既に座っていた。この2人早い。ジュンさんはぶつぶつ小さい声で何か言っている。
「おはようございます~。ジュンさん朝からなんですか?」
「あ、ハルさん、おはようございます。今日は討伐に行くので、自分のスキルの回復を使うのに、なんて唱えれば使えるのか試しているんですよ。」
「あ!そうなんだ。どうでしたか?」
「普通に『回復』といえばいいみたいですね。ギルドで傷を治した時みたいに、トモさんのカミソリ負けが消えました!」
「おう、カミソリ負けというのか、カミソリがないから、小型ナイフで剃ってみたが、慣れないから難しくてな。ちょっとひりひりしていたのが治って良かったよ。」
「そうなんだ。トモさん髭剃っているんですね。」
「ジュンさんも、ハルも髭は生えてこないたちか。」
「あんまり気にしたことないですけど、薄いと思います。」
「わたしは少し生えてきますが、生活魔法でなんとかなるみたいです!」
「は?生活魔法?どーするんだ?」
「生活魔法は『点火』『浄化』『微風』『洗浄』『剃毛』『乾燥』『治癒』『給水』が使えることがわかりました!だから髭も剃れるんですよ。」
「おお、それ結構便利だな。ハルは家事のスキルもあったな、もう家仕事万能じゃないか。」
「ええ、ばっちりです。好きなことが万能に出来るなんて、異世界きて本当に良かったです!!」
胸を張って自慢してみたら、ジュンさんからもトモさんからも生暖かい視線をいただいた。
「ハルさんの『治癒』ってどんな感じですか?今日討伐行くから聞いておきたくて。」
「はい、ジュンさん、わたしの『治癒』は、擦り傷とほんの少し切ったぐらいならばいけそうです。生活していて出来る傷用ですね。さかむけとか、棘が刺さったとかもいけそうです。」
「了解。それ以外の傷はわたしが頑張らないといけないってことですね。」
「まぁジュンさん、体に力入りすぎないように、俺は空手やっていたから、簡単な救急処置ができる。だから、ジュンさん、何もかも背負うことはないぞ。」
「ああ、トモさん、ありがとうございます。そうですね。みんなで協力しましょう。少しほっとしました。」
「んぉぉ。おはよー。」
「おう、レン、今日は起こさなくても起きられたか。」
「うん、今日は討伐行くんだもの、嬉しくて目が覚めたよ。」
「みんな起きてきたなら、朝ご飯テーブルに置いていくね。」
さっきまで会話しながら作っていたのだ。スキル家事のお陰で調理は早い早い。あっという間に出来上がる。手元が見えなくなってきました!とジュンさんに驚かれたところだ。今日のメニューはパンとバターとハムエッグとサラダに昨日の残りのシチューだ。
「ハルには全部させて悪い。」
「いえいえ、わたし討伐はたぶんぜんぜんダメだと思うから、出来ることしたいです。適材適所でしょうか。それに家事は大好きなので、楽しいので大丈夫です!!」
「そうだよな。4人で生きていくんだ。適材適所で良いと思う。」
「わたしも『回復』頑張ります!」
「やったー。今日も美味しそうな朝ご飯!ん。適材適所。僕今日めちゃ頑張るから、見ていてね!!ヒーローになりたくて、剣道続けていたんだよね。やっと見せ場が来るなんて、ほんと僕、恵まれている!!」
「レンくん、ヒーローになりたかったのですか?」
「うん、だって、カッコいいから!」
そういって、目玉焼きを口の中に入れて笑う。なんて可愛い。可愛いものが好きなわたしの心をキュンとさせるなんて、レンくん侮れないな。ジュンさんもトモさんもレンくんの発言に一緒に笑っている。今日は討伐を試す日だ。初めて魔物を殺める。少しやっぱり怖いけど、レンくんがカッコいいと笑うと、心が軽くなった。
「魔物を倒すのは経験ないから今はなんとも言えないけど、管理人が精神耐性あげてくれたっていうし、レベル上げだ。気楽にやろう。」
「そうですよね。魔物も死んだら四苦八苦から解脱することになるので悪くはないかもしれません。」
「え?ジュンさん、四苦八苦からの解脱って何?」
「人間には、生きる苦しみ、老いる苦しみ、病気になる苦しみ、死ぬ苦しみがあって、それと愛するものとの別れ、嫌なものを出会う苦しみ、欲しいものが手に入らない苦しみ、心身の苦しみを合わせて、四苦八苦っていうんです、」
「へー。なんかいっぱい苦しい?」
「ええ、解脱というのは、そういう苦しみから解放されるという意味です。解脱は憧れですね。」
「へ?解脱が憧れって、ジュンさん死にたいの?」
「おい、レン!!」
「いえ、違いますよ。生きているうちに解脱出来る人もいるんですよ。四苦八苦を乗り越えるんです。わたしの推しはお釈迦様なのです!!」
推しを話す人は目が輝くと思う。ジュンさんは目を輝かせてお釈迦様について結構語り掛けたけど、トモさんがストップした。今日は討伐行くんだろうと。レンくんは生きているうちに解脱するっていうのがよくわからなかったみたいだけど、そっか今日討伐だものねっと朝食を食べ終えた。尾を引かないのがレンくんの良さだよね。
「さぁ討伐に行こう!!!」
「はいはい。最初はスライムにしようぜ。」
「わたしたちはレベル1ですからね。小さいことからこつこつとですよ。」
「はーい!!」
「わたしは皆さんの足をひっぱらないようにします!」
ということで、来た、家の裏。家から歩いて10分ぐらい、それでもう深い森の中だ。木漏れ日が時々顔にあたって眩しいけど、木の根っこは歩きにくい。熱くも寒くもない気候が有難い。それでもひいひい言いながら森の中を歩く。レンくんが元気に長剣を振り回しながら一番前を歩いている。トモさんは鍛えた体があるから二番手だ。ジュンさんはわたしのやや前をちょっとしんどそうに歩いている。まだ歩き出して10分。でも、疲れたよー。
「あ、あれがスライムかな。透明でぶよぶよしたのがいる。あんまり可愛くない!」
「鑑定してみろ!」
「OK!鑑定、うん、スライムで合っている。初心者でも倒せるって、やってみる!」
そういうと、レンくんは綺麗にジャンプして、バシュ!と長剣をスライムの上から下に切りぬく。さすが剣道経験者、姿勢が綺麗。するとポンッ!とスライムが消えて、小さなキラキラした粒が残った。
「これが魔石かな、鑑定してみる!ん。魔石だね。1個1銅貨ぐらいらしい。パン1個分ぐらいって書いてある。」
「レンは、一振りで倒していたな。次出てきたら、俺がやる。」
「いいよ。次トモさんね!」
そういって、また歩く。いや、もう少しゆっくり行こうよと思いつつ、戦力にならない今、せめてついていくだけでも頑張らねば・・・あ。あ。あ!!!横からなんか変なものが出てきた。
「あ、あ。あ!ここここここっち、スライム?なんか変なものが、でででてきました!!」
わたしが叫ぶと、トモさんが走って来てくれた。木の影からのそのそ出てきた透明のぶよぶよがトモさんの長剣によってあっという間に切り裂かれ退治される。
「割と簡単だったな。次はジュンさんがやってみるか。ハルでもいいぞ、」
「わたしは今回長剣ではなく、短剣を念のため持ってきましたので、あ、風の魔法を使ってみたいです。」
「あ、魔法か、魔法もあったな。ジュンさんは風魔法か。」
「ええ、ウインドカッターとかできないかどうか試してみたいです。」
話をしていたら、スライムまた登場した。今度はジュンさんだ。
「ウインドカッター!!」
バシュ!!と音がしてすっとスライムが切断されて、ボンッ!と消えて魔石が残った。
「やりました!」
ジュンさんの顔が少し赤い。高揚しているのかな。トモさんとジュンさんがハイタッチしている。僕も僕もとレンくんがみんなとハイタッチ。ジュンさんは笑いながらわたしともハイタッチをした。これで3人とも戦力になるってわかってほっとした。それから3時間、スライムばかり狩った。四苦八苦、解脱とかぜんぜん思い出さずに次々と狩る。テンション高いレンくんが大はしゃぎだ。すると、頭の中で声がする。
『レベル上がりました。』
「やったー!レベル上がった!!ステータスオープン!」
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レン 22歳
レベル2
スキル 剣術☆
火魔法
細工師
インベントリ
鑑定
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「あ、名前がレンになっている。レベルは2だね。剣術に星マークが付いたよ!」
それを聞いて、皆もステータスオープンと声を上げた。
********
ジュン 35歳
レベル2
スキル 回復魔法☆
風魔法☆
調薬
インベントリ
鑑定
********
********
トモ 34歳
レベル2
スキル 格闘技☆
水魔法
酒造
インベントリ☆
鑑定
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ハル 27歳
レベル2
スキル 生活魔法☆
土魔法
家事☆
インベントリ
鑑定
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皆でそれぞれのステータスを調べてみる。名前はギルドの登録と同じになっている。☆はよく使ったものの横に出ているみたいだ。わたしは生活魔法と家事の横に☆がついて嬉しい。掃除洗濯食事作りが全部成果としてあがっているのが嬉しい。
トモさんのインベントリの横に☆が付いたのは、スライム魔石は全部トモさんがインベントリに仕舞ったからかもしれない。
「凄いねー。本当にレベルあがったねー。面白かった!」
「レン、あんまり甘くみるなよ。ギルドのヴァルドさんが言っていたじゃないか、強い魔物も多いって。ここは森の浅い部分だからスライムしか出なかったけど、奥に行く時は気を引き締めないとな。」
「うん、わかった!」
「まだ、いけるか?」
「むりー。もう体がへろへろです。」
「ハル!おまえ、スライム1匹も倒していなかったのに、何故そんなにへろへろに?」
「森の中歩くだけで大変なんですって!!!わたし基本インドア人間です!!運動は通勤だけでした。逆になんでみんな元気なんですか?!」
「俺はずっと空手やってきたのと、趣味が筋トレだからな、ジムで走ったりもするしな。」
「わたしは仕事が建築屋だったので、現場に出ることが多かったので割と外回りは得意ですね。」
「僕は剣道で鍛えたからかな?後は若さ!!」
「あああ・・・。わたしはもうダメです。お、お弁当でも食べます?」
「え?弁当作ってきたのか?ハルは準備が良いな。」
「はい!討伐に行くんですから必要でしょ。」
「わーい。ハルさん、ありがとう。」
「この周辺のスライムは全部倒したからしばらく大丈夫でしょう。」
ということで、倉庫から探した薄い敷マットを広げるとお弁当をインベントリから出した。インベントリに入れると時間も止まるから、お弁当は街の市場で買った手頃な籠だったりする。ここにパンと卵焼きにソーセージ、カボチャみたいなの煮物、ソラマメみたいな豆を茹でたもの、魔物肉をサイコロステーキにして焼いたものを入れてきた。
「まるで遠足みたいだね。森の中で食べるお弁当は美味しい!」
「ほんと、ハルさんのお料理はとても美味しいですね。」
「うん、旨い。異世界の食材なのに、日本人向きの味になっているのが凄いな。」
「本当は、お米を見つけたいです!おにぎり作りたかった!!」
「確かに、お米欲しいですね。」
「俺たちの異世界での目的の1つに米探しをいれよう。」
「賛成~!!」
「でも目標の1つって、後何がありましたっけ?」
「ハルは、のんびりしているな。討伐をしてレベル上げをすること、お金を稼ぐこと。この二つはマストだな。」
「トモさん、もう一つ、充実した生活も入れて欲しいですね。」
「そうだな。充実した生活は必要だな。」
「それはわたしが頑張りますー!」
「同じ次元の狭間に落ちた仲です、みんなで協力しましょう。」
「おうー。僕も頑張る!」
「そうだな。みんなで頑張ろう。」
お弁当を食べながら、狭間に落ちてから初めて今後の目標を明確にした日だった。みんなの意思が確認できて良かったね。お弁当はみんなに喜んでもらったし、ここで頑張ろうって思えた。でも、体はへろへろだ。今日はもう帰ろうね。ね。ね。みんな。
わたしが一生懸命お願いしたので、この日は家に帰れた。半日森を歩いただけで足腰ががくがくだ。インドア系のわたしには辛い・・・。まだ元気の余っているトモさんとレンくん、ジュンさんは討伐した角うさぎを冒険者ギルドに持っていくかどうしようか話し合っていた。街には明日行こう。わたしは今日街まで絶対歩けない!!
今日はそうだ前庭を家庭菜園にしない?そう提案してみたところ、全員から賛同されたので、へろへろの体に鞭打って前庭に行く。前庭ぐらいまでなら歩けるぞ。
「ネギとか植えたかったんだよねー。」
「後は何植えたいの?」
「昨日食べた、カボチャもどきと、倉庫に種のあった、キュウリとトマトと茄子とカブかな。本当は大葉や茗荷といったのも植えたいんだけど、それらは種がなかったんだよね。また今度かな。」
「キュウリとトマトと茄子やカブは日本の野菜なのか?」
「鑑定するとそう名前が出てきたんだよね。異世界の野菜は異国の野菜っぽいのにね。不思議。」
「わたしたちが、残った寿命を生き延びられるぐらいまで配慮してくれるといった手前食べなれたものを用意してくれていたんでしょうか。」
「管理者さんって、神様に近い人ですよね。そういう人の思考はわからないです。」
「確かにわからんな。でも、食べなれたものが食べられるのは有難い。」
「野菜が出来たら美味しく料理しますね。まずは土魔法で畝を作ってみますので、種を植えて下さい。」
そう、足腰がへろへろでわたしには種を植える余力は残っていなかったのだ。みんなは薄々それに気づきながらも、お願いされるがままに種を植えてくれた。ありがとう!
「良し!出来たね!」
「なかなかいい感じじゃないか。」
「ええ。上手くいきましたね。」
「みんなありがとう。後はお水を上げないとね。」
「おう、俺が水魔法で撒いてみるわ。一度水魔法も使っておきたい。」
トモさんがそういうと、器用に水を撒いてくれた。
「うわぁ。トモさん、凄い!初めての水魔法なのに、上手!!」
「でも、ハルも初めての土魔法でちゃんと土を耕し畝作れていたじゃないか。」
「そうなんだよね。なんか思うどおり魔法が使えてしまうんだよね。」
「わたしの風魔法もそうでした。こうしたいと思ったとおり使えるんですよね。」
「管理者さんも、異世界に落として悪いって思っていたんでしょうか。」
「『世界に合うように体は少しいじらせてもらう。』っておっしゃっていたから、魔法やスキルの使える体になったんでしょうね。『新しい世界の言語もわかるように初期フォローはする。住む家や当初必要なものは用意した。』ともおっしゃっていました。良い管理人さんで不幸中の幸いでしたね。」
「そうだな。初期フォローはばっちりだな。後はどう稼いでいくかだな。」
「しばらくは、余裕があると思います。」
「え?ハルさん、どうして?」
「あの、調味料や芋や粉や干し肉が減ってないからです。」
「「「え???」」」
「わたしたちこっちの世界に来てから、これで3日たちます。街で買った食材は使ったら減りました。でも、この家に最初からあった、調味料や芋や粉や干し肉は使っても使っても次の日には元通りになっているのに気づきました。」
「え?そうなの?」
「最初は気のせいかなと思ったのですが、リンス用のお酢はいつまでも瓶の上まであるので、元に戻っているなと気づきました。そう気づけば、他の物も減っても戻っているんですよ。」
「うわ、ちょっと怖いな。」
「でも、これが管理人さんの言っていた、初期フォローなのかもしれません。」
「最低限、芋と粉と干し肉と調味料があれば生きていけます。管理人さんはどうしても、わたしたちに寿命まで生き延びて欲しかったんでしょうね。」
「まぁ、芋と粉と干し肉だけじゃ生きていけるけど、飽きるけどな。」
「でも、調味料は有難いです。管理人さんの配慮だと思いますが、日本で使っていた調味料はほぼ揃っています。冷蔵庫みたいな保冷庫もちゃんとありますし、本当にわたしたちに生き延びて欲しいんだなと感じます。」
「調味料、例えば胡椒もあるじゃん、これは街で売れないのかな。次の日に元に戻るなら砂糖とかも売れたりして!!」
「レンくんの発案もいいですね。でも、わたしたちが生き延びるために減らないけど、売ったら減るかもしれないので、とりあえず違う入れ物に入れてみて、数日様子見してみるのもいいかもしれないですね。明日街にいって、調味料の相場見てきましょう。」
「そうだな、明日は街に行こう。今日討伐した角うさぎを納品したいしな。」
「明日はギルドの街仕事を受けてみませんか?」
「わたしも受けてみたいです。討伐はぜんぜん役に立てませんでしたから。」
「ハルは美味しいご飯作ってくれるだけで充分役にたっているよ!」
「そうだ。卑下しなくてもいい。」
「そうですよ。ハルさん、討伐だけが大事じゃないですからね。」
「みんなありがとう!!」
「ハルは、いつでもにこにこしていればそれでいい。」
「トモさん、いいこと言うね。そうだよ。ハルさんはにこにこしているだけでこっちまで嬉しくなるよ。」
「へへへ。嬉しいですねー。」
「まぁハルはハルのままでいい。それじゃ、明日は街へ行く。それは決まった。話し合いは以上!さぁ。今から夕食作って食べよう。」
あれだけ足腰へろへろだったけど、話しているうちに、随分ましになったので、さぁ作ろう。街で買ってきた乳製品と魔物に肉でグラタンを作る。スキル家事のお陰で、家のオーブンも使い方がわかる。保冷庫はあるけど、葉物野菜はそれほど長持ちしないから全部サラダにしてしまう。明日街に行くなら魔物肉も食べてしまおう。ステーキにして塩コショウして焼いていく。ソースも簡単に作る。バターも使ってしまおう。
美味しそうにできた!!ふふふ。美味しそうに出来ると嬉しい。家事スキルのお陰で地球に居た時よりより早くより美味しく作れるようになったような気がする。管理人さんありがとう!!
「「「「いただきます!!」」」」
「あち、ち。でも、やっぱり、ハルさんのご飯は美味しい、このチーズが溶けたところがほんと美味しい。」
「お肉の焼き加減も絶妙ですね。」
「ハルは討伐ができなくても、これで十分だ。」
「討伐といえば、今日はどのぐらいだったんですか。」
「あー。スライムが31匹と角うさぎが7羽?8羽ぐらいかな。」
「そうそう、それぐらい。スライムは倒すと魔石だけになって消えてしまうけど、角うさぎは全部残るんだよね。」
「最初死体は、ぐろいかなと思っていましたが、管理人さんの精神耐性つけたっていう意味が実感できましたね。」
「うんうん、ぜんぜん平気だった!」
「そうなんですね。わたしは後ろから着いていくのがせいいっぱいであんまり討伐は見ていませんでした。」
「俺も倒した角うさぎ見ても何とも思わなかったな。そうか、精神耐性のせいだったのか。」
「精神耐性って、悲しみに耐えるためだと思っていましたが、それだけじゃなかったんですね。」
「悲しみ・・・ああ。地球に戻りたいとか、両親に会いたいって思うことはまだある。僕たちが消えて地球は20年も経っているって言われても帰りたかったね。でも、その気持ちが辛さや悲しさに繋がらなくて、ふわっと浮いてきた気持ちも消えてしまうんだよね。不思議。」
「そうそう、親に会いたい、友達に会いたい、戻りたい。帰りたいっていう気持ちが霧のように捉えどころがなく散ってしまうんだよね。」
「俺は実家と上手くいっていなかったし激務だったから、会いたいとも帰りたいとも思わないが、このまったく新しい生活で、無職で先が見えないのに、落ち込んだり凹んだりしないな。なんとかなるかって思う。これも精神耐性のせいか。」
「わたしは生きていれば、四苦八苦があることを知っているので、この状況も全部乗り越えるべき試練なのだとか思ったりするので、過去はあまり気にならなかったので、そう自分の気持ちの変化には気づきにくいのですが、確かに今まで以上に過去に気を取られていないと思います。」
「ジュンさんって、結構割り切った性格なんだ?」
「割り切ったというのか、理想はお釈迦様と同じ、生きているうちの解脱ですね。解脱に憧れ目標と置いているので、出来るだけ負の感情に捕らわれないように、物事に執着しないようにしています。」
「あー。前にもちょっと聞いたことがある。解脱、解脱。よくわからないんだよね。前に聞いた時は四苦八苦を乗り越えるって教えてもらったけど。いまいちぴんとこなくて。」
「解脱っていうのは、簡単に言えば『苦しみから自由になる』ことかな。」
「苦しみから?」
「そう、ただし、嫌なことが一切起こらないとかいうのではなくてね。」
「じゃ、どういうこと?」
「例えば、レンくんがゲームで負けたとすると、『悔しい、もう1回!』となるかもしれないね。でも、勝ったら勝ったで『もっと勝ちたい』となるかも。」
「うん、そうかもしれない。」
「お金にしても、『もう少し欲しい』とか、人から『もっと認められたい』となったりもするよね。人って、欲しいものが手に入らなかったら苦しむし、入ったら失うことを恐れる。」
「そうかも。」
「解脱っていうのは、そういう『欲しい。嫌だ。失いたくない。』というような欲の気持ちに振り回されなくなるということなんだ。」
「えー。じゃ、何も欲しくなったりしなくなるわけ?」
「いや、なんていうのかな。ご飯が美味しい。嬉しいことは嬉しいと思う。悲しいことは悲しいと思う。そこは無くならないけど、でも、『もっともっと』というような、欲望の感情から解放されることかな。」
「んー。んー。解脱っていうのは、メンタル最強になるっていうこと?」
「ふふふ。レンくん、そう。そうです。解脱がメンタル最強。いいですね。いい。とてもいい。メンタル最強・・・。自分では絶対思いつけないキーワードです。ははは。」
ちょっとジュンさんが壊れた?結構な勢いで笑っている。そんなジュンさんを見て、いいこと言ったなと物凄く自信満々になったレンくんがいる。
「そう?僕凄い?」
「ああ。レンは凄いよ。」
「ええ。レンくんは凄いです。もう解脱が何かわかるなんて!」
「わたし、この異世界でメンタル最強になるように頑張ってみます。レンくんありがとうございます。」
「僕も目指すよ!」
「わたしも頑張ります!!」
「俺はどうかな。わからん。でも、レンもハルも、もう結構最強じゃねえ?おまえたち結構凄いって思うぞ。レンは王子様みたいなナリなのに、中身は江戸っ子だし、ハルはいつでもずっとにこにこしているし、こんなところに寄越されたのに、愚痴とか文句とか出るより先に、どう生き延びるのかを考えられるって強いと思うぞ。」
「そうかな。それだと嬉しいな。」
「うんうん、僕も嬉しい。地球では『おまえ何にも考えてねえな』ってよく言われていたから、褒められると嬉しい。」
「ええ、どうせなら、みんなで最強になりましょう。」
「「「おー!!」」」
討伐したせいもあったのか、なんだか変にテンションの上がった夜。少しずつメンバーが仲良くなれてきた気がする。こっちにきて3日目、異世界って、そんなに悪くない日々だと思えた。
家族にまた会いたいっていう気持ちが無くなったわけじゃないけれど、少しずつその気持ちも薄くなっていく、それが少し寂しい・・・。
ああ、でも今日は森でよく歩いた。体がへろへろでお風呂上がりの今、もう起きていることができない・・・おやすみなさい。




