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「ねぇねぇ。8月12日って、こっちの世界ではいつになるかな?」
「8月12日?」
「うん、僕の誕生日なんだ。今、夏だし、もうそろそろかなって。」
「ああ。レンくんの誕生日なんだ。」
「今日は陽だまりの季の第二水の日ということで、8月だと第二週目の水の日。はっきりした日は難しいが、だいたい12日頃だと言えると思うぞ。」
「わーい。じゃ、誕生日会しよう!!」
「トモさんやハルさんはいつなのですか?」
「ああ。俺は8月1日だ。」
「じゃ、終わっているじゃないですか!」
「誕生日なんて、気にしたことねぇよ。」
「え!トモさん、僕と誕生日近いね!なんか嬉しい!!」
「わたしは3月20日の春分の日です!」
「ああ。だからお名前がハルなのですね。」
「ジュンさんはどうなんですか?」
「わたしは、なんと4月8日生まれなのです!!」
「「「???」」」
「ん?普通の人はぴんとこないかもしれませんね。4月8日はお釈迦様の生誕日なのです。お釈迦様と生まれた日が同じということが、お釈迦様が気になりだしたきっかけなのです。」
「そうなんだ。それは凄いね。推しと同じ誕生日!!」
「小さい頃に、実家のお寺で花まつりがあって、わたしの誕生日にこんなにお祝いしてくれるんだって思っていたら、お釈迦様だったという落ちがありまして。でも、一緒にお祝いが出来る方が近くにいるんだって思うと、興味が出てきて、一気に嵌りました。」
ジュンさんがはにかみながら笑う。同じ誕生日に凄い人がいれば、わたしも嬉しいかもしれない。わたしも春分の日が誕生日っていうだけで結構嬉しいもの。いつでも祝日!
「そうか、じゃ、ハルもジュンさんも誕生日はもう終わっているんだな。アルノーはどうだ?」
―わしは冬の寒い日に生まれた。それ以上はわからん。
「アルノーは寒い冬らしい。」
「なら、明日、全員の誕生日をお祝いしませんか。」
「そうしましょう!!」
「わたし、ケーキ作ります!!ご飯も作ります!!」
「みんなのプレゼントもいりますね。」
「手分けして用意しよう!」
「「おー!!」」
若干、トモさんがこのノリに付いてきていないような気がしたけど、そこはまぁいいや。わたしはわくわくしてきちゃった。レンくんも、ジュンさんもノリノリだ。わたしは思いついたアイデアをそれぞれの担当してくれる人に話をした。明日の準備はOK。この年になって誕生日会だなんて、なんだか楽しみー!!
トモさんとジュンさんが街に転移の魔法で飛び、わたしはレンくんに作って欲しい物を二つ頼んだ。わたしはわたしでせっせと作る。
そしてドギマギの誕生日会当日!!
「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」
妙に緊張しているトモさんは置いておいて、みんなでテーブルを囲む。へへへ。今日の料理は大人お子様ランチなのだ。チキンライスに唐揚げ、たこさんウインナー、ナポリタン、ミートボールにフライドポテト、デザートはプリン。チキンライスにはちゃんと旗も立てておいたよ!それに大きなホールのケーキはイチゴっぽい果物をたくさん乗せてみた。可愛いし、とっても美味しいはず!
「うわぁ。凄いね。ハルさん!お子様ランチなんて久しぶりだよ!」
「わたしはお子様ランチ食べたことがないので嬉しいです。」
「え?ジュンさんないのですか?」
「実家がお寺というのもあるかもしれないですけど、お子様ランチは今回初ですね。」
「俺もだ。」
どことなくテンションがあがっている、ジュンさんとトモさん。お2人にとって初めてのお子様ランチ、作って良かった!
「これ、1人分多くないか?」
「あ。これはアルノーさんの分、陰膳っていうんだっけ?」
「亡くなった人や、その場にいない人のために用意する食事のことは陰膳で、あっていますよ。」
「アルノーは食事が出来なくてもか?」
「えー。でも、アルノーさんはトモさんの中にいるよね。いる人にご飯出さないっていうのが出来なくて。残ったらインベントリに収納しておけるし!」
―物心ついてから誰かに誕生日を祝ってもらったことなぞない・・・。
「アルノーは俺と同じだ。誕生日を祝ってもらったことなぞないから、喜んでいるみたいだぞ。」
「トモさんも無かったの?」
「ああ。縁が無かったな。」
「じゃ、今年からはわたしたちが毎年お祝いしますよ!!」
「・・・。毎年できればいいな・・・。」
「出来ますよ!!きっと。」
「ええ、毎年しましょう!」
「僕も毎年お祝いしたいよ!」
みんなの気持ちがひとつになって、顔を見合わせて笑ってしまう。美味しい料理に楽しい会話。素敵な誕生日パーティーだ。
食事が終わって、アルノーさんの分はちゃんとトモさんが自分のインベントリに収納していた。なんなら、自分のお子様ランチの旗もそっと仕舞っているのを見てしまった。
そして準備ができたら、プレゼントをそれぞれ渡すことになった。最初は一番期待しているレンくんからだ。トモさんがインベントリから出したのは、新品の皮の防具だ。
「レンは、強くなりたい夢があるから、防具にしたぞ。ジュンさんが治せるといっても、痛い思いはしない方がいいからな。」
「やったー!!ありがとう!!防具は欲しかったんだ!!嬉しいー。」
次はなんだか少し緊張しているトモさんへ。
「はーい。これはがま口のお財布です!がま口の金具はレンくんに作ってもらって、布の部分はわたしが縫いました!今は共有のお財布に巾着を使っていると思うけど、これでトモさん個人の酒造の儲けを入れてください!大きめに作りました!!」
「あ。ありがとう・・・。なんか誕生日プレゼント初めてもらった。嬉しいもんだな。」
しみじみと、なんかの感情を噛みしめているトモさんは、ほんのすこーし涙目のような気もしたけど、ここはそっとしておくべきでしょう。次行きます!
「今度はジュンさんです!これはお釈迦様のミニ仏像っぽいものです。レンくんに作ってもらいました!」
「まぁ。可愛らしい。」
「僕、お釈迦様がよくわからなくて、お地蔵様みたいになっちゃった。ごめんね。」
「いえいえ、レンくん、これはこれでとても有難いものです。お地蔵様はお釈迦様とは別ですが、お釈迦様が亡くなられた後の世界で人々を救う存在とされています。だから。わたしにとって十分嬉しい贈り物です。」
「本当に?」
「ええ、レンくんがわたしのために作ってくれたことが一番嬉しいですよ。」
「良かったー。ジュンさんが嬉しそうだから僕も嬉しいや。」
「大切にしますね。」
「次はハルさんですね。これ。街で探してきました。」
ジュンさんの手には薔薇色のリボンだ。
「あ。あ。なんて可愛い!!ありがとうございます!!!めちゃくちゃ嬉しいです!!」
こんな綺麗な色のリボンは、自分では買えなかった。薔薇色の繊細なレースのリボンだ。乙女心をくすぐる一品!オトメンは恥ずかしいと思っていないとは思っていたけど、やはり心のどこかで抵抗があったのかな。自分で買えそうで買えなかったもの。いただいて、なんだか本当に嬉しい。自分の好きをみんなが受け入れてくれたような気がして余計嬉しかった。
「じゃ、最後。アルノーさんには革表紙のノート!」
レンくんが一冊のノートをトモさんの前に置く。
―な。死んだわしに誕生日プレゼント??わしに??
「アルノーが、驚いている。でも何故ノートなんだ。」
「これにアルノーさんから教えてもらった魔法のことを書いていけばいいかなと。」
「ああ。それはいいな。」
―誰かの役に立つ、求められているっていうのは心が温かくなるな・・・。今日は生まれて初めて心が満足したよ。ありがとう。
「俺もだよ。アルノー。」
トモさんとトモさんの心の中に住むアルノーさんがなんだかしみじみと会話をしているみたいだ。アルノーさんの声はトモさんにしか聞こえない。そのトモさんが感無量っていう感じで口をぎゅっと閉じるからわからないや。ただ、嬉しそうな恥ずかしそうな子どものような壊れそうな笑顔をぎゅっと自分で抱いているかのようなトモさんになんて声掛けしていいのかわからなかったので、そっとしておいた。幸せそうで良かったね。トモさん!!
もちろん、夜はトモさんからお酒が提供された!エールで乾杯し、ハイボールが出てきて、あんなに食べたのに、クラッカーにチーズのせとか、フライドポテトとか出して見たらみんな少しずつ摘んでいく。タガが外れたような珍しいトモさんが、ひたすら上機嫌で、わたしたちも嬉しくなってしまって、レンくんがそれに釣られ、ジュンさんも今日は結構いっちゃっているようだった。わたしも楽しいから結構飲んじゃった!
その夜、何度も「かんぱーい!」という声が聞こえ、何度も「おめでとう!」と繰り返された。とても良い夜だった。うん、とっても良い夜だった。みんなもお誕生日おめでとう!!
そして、次の朝、誰も起きてこなかった・・・。ジュンさんの二日酔いの薬が良く効いた。これ売れるよ!ジュンさん!!




