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そして、領主館へ向かう当日。
朝から4人はいつもと少し違った空気に包まれていた。
「これ、着ていくんだなぁ。」
明るい青の上着をつまみながら、トモさんが確認する。
「せっかく、アルノーさんに領主様の前に出て恥ずかしくない服をいただいたのだから、これで行きましょう。」
「ああ、タダだったしな。我慢するか。」
そういう、トモさんはわたしが見立てた明るい青の正装は、はっとするぐらいに似合っている。まるで本当に氷の貴公子かっていう感じ。少し圧の強いイケメン度がさらにあがり、煌びやかさが増している。なんだか、凄い。わたしはというと新緑を思わせる黄緑色の服を既に着ている。柔らかな色合いの生地が本当に綺麗で、心がうきうきしてしまう。こんな素敵な衣装を着ることが出来るなんて、こっちの世界に着て本当に良かった!!
わたしの隣で、淡い紫色の服を着込んだジュンさんがいる。は。素敵!なんて美しいんだろう。妖艶。妖精。いや、女神様か。ジュンさんの正装はいつものジュンさんを更に素敵に見せている。これは凄い。
「僕も着てみたよー。どう?」
元気なレンくんが薄紅色の正装を見せびらかしてくる。はう。なんて美青年!お菓子の国の王子様!キュートで甘いマスクが醸し出す気品まであって、素敵!ほんとうちの子たちなんて素敵!目の保養!!4人並べば冒険者には見えない・・・。
「今、思ったんだけど、これで街まで30分歩くの?」
「いや、4人で転移魔法使ってみる。アルノーがいけるって言っている。」
「「「お願いします!!」」」
3人の意見は一致した。
◇
転移魔法で街の入り口近くまで移動できたので、待ち合わせの冒険者ギルドまで歩いていく。普段歩いている道だけど、なんか視線が痛い。道端の人がちらちらをこっちを見ているようだ。
「なんだろう・・・。」
「いや、普通に目立っているんだろう。こんな服きてりゃ。」
あー。そうか、みんな煌びやかだもんね。遠くの方で若い女性たちがきゃっきゃっいう声も聞こえてくる。少し恥ずかしくなった。煌びやかなのは他の3人なのに、混ざってしまって少しごめんなさいーっていう気分。
そんなやり取りをしながら冒険者ギルドの前に来た。ヴァルドさんが待っていてくれている。知っている人の顔を見ると何故か安心する。
「おまえたち、化けたな。物凄くお貴族様に見えるぜ・・・。」
少し呆れたような顔でまじまじと見てくるヴァルドさん、そのお隣に知らない人。
「ああ、こっちが今日の領主様からのお迎えの人だ。あのでっかい馬車で来られた。」
お迎えの人は、きちんとした身なりの真面目そうな男性だったけど、わたし、トモさん、ジュンさん、レンくんを順番に見て、なんか驚いている。
「あの、失礼いたしますが、本日、領主様がお会いになる冒険者の方々でお間違いないでしょうか。」
「ああ。俺たち4人だ。」
「ははは。大丈夫だ。こいつらが領主様が呼んだ4人だ。俺が保証する。」
豪快に面白そうに笑う、ヴァルドさんから、しっかり保証されたのを聞いて、ようやく納得したのか男性が頭を下げた。
「失礼いたしました。それではどうぞお乗りください。」
◇
馬車が向かった先は、街の中心だった。普段4人で歩く、冒険者ギルド周辺、騎士団の稽古場、市場、中央広場の雰囲気とはちょっと違う。こっちは高級住宅地なので、ちょっと場違いな気がして足を運んでいなかった場所だ。手入れされた街路樹が並び、立派な屋敷が次々見えてくる。
「この辺って、あんまり来たことなかったね。」
「俺もないな。高級な家しかないしな。」
「僕もー。綺麗な街並みだけど、買い物もできる場所じゃないしね。」
「冒険者ギルド、騎士団、商業ギルド、薬師の師匠のお店、治療院、市場、露店ぐらいまでですね。」
「それで充分だったしな。」
窓の外を眺めながらそんな話をしていたら、馬車はやがて大きな門の前で止まった。門の向こうに見えるのはお城だ!!凄い。めちゃくちゃ大きい。
「うわ、お城だ!」
「市長かと思ったが、もう少し立派そうだな。」
馬車は門をくぐり、広い前庭を進んでいく。ひやぁー。ちょっと緊張してくるー。トモさんもジュンさんも平気そうだ。レンくんははしゃいでいる。3人を見ていると、少し安心して緊張も緩和してきたようだ。良かった。4人で!
館の中に入ると、使用人の綺麗なお姉さんが丁寧に案内してくれる。リアルメイドさん!?少しテンションがあがる。
「こちらでしばらくお待ちください。」
案内された小部屋には、柔らかな椅子と小さなテーブルが置かれていた。これだけじゃ、歓迎されているのか警戒されているのかぜんぜんわからない。トモさんも、ジュンさんも平気でゆったり座るので、わたしも恐る恐るお高そうな椅子に座る。レンくんは壁にかかっている絵が素敵だとじっくり見ているようだ。
どのぐらい待ったんだろう。4人でヴァルドさんは結婚していると思うか独身かとかいうどうでもいい話をしていると、お呼びがかかった。
「お待たせしました。どうぞこちらへ。」
◇
そこは、広い応接室だった。その奥に領主様がいた。あんまり見ないように目を伏せる。わたしたち4人を見た領主様は少し驚かれた顔をされたが、すぐに真顔に戻った。
「よく来てくれた。」
「お招きいただき、ありがとうございます。」
トモさんが堂々と応えている。隙がないビジネスモードだ。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。」
ジュンさんもビジネスモードだ。美しく礼をする。あ、あ、わたしも真似っこしなくては!!レンくんに目配せして、同意を得る。2人で一緒に頭を下げる。
「「よ、よろしくお願いします」」
「そんなに緊張しなくても良い。そんな堅苦しい話をするつもりはない。まずは酒だ。街で今評判の旨い酒を領主館にも納品してもらいたい。」
「商業ギルドが窓口ですので、そこを通していただければ。」
「うむ。わかった。次は『穂草』の料理だ。あれが、人が食べられるものだと思ってもみなかった。噂ではかなり美味しく料理できると聞いた。それらを領主館の料理人に教えてもらいたい。」
「はい!『穂草』の料理はわたしの大好きな料理です。たくさんの人に食べてもらいたいからすぐにでも!」
「ああ、助かる、頼むぞ。次に、破格のレベルの回復魔法が使えると聞いた。騎士団、冒険者ギルド、街の治癒院で治療をしてきたと聞いているが、時々、領主館でも治療をお願いしたい。もちろん、酒も料理指導も回復魔法もそれに見合った金は払う。」
「承知いたしました。予定が合えばお伺いいたします。」
「助かる。」
領主様がこれで終了とばかり満足されたように見えた時、そのお隣で妖艶に笑みを浮かべておられた奥方様が、レンくんをじっくり見ている!
「あなた、素敵なアクセサリーを作っていると聞いたわ。」
「え?素敵というのか、材料が足りないから簡易なものですけど・・・。」
「それでも、可愛らしくて恋が叶うアクセサリーだと聞いたわ。今度見せて欲しいわ。」
「はい!じゃ、ちょっといい材料採りに行って頑張って作ってくるよ!」
「まぁ。楽しみだわ。」
しばし奥方様とレンくんでどんな意匠が好きだとか話が盛り上がったけど、領主様がその辺でやめなさいと奥方様に耳打ちをされて終了。
「本日はこれぐらいで。」
「「「「ありがとうございました。」」」」
「今後もよろしく頼む。」
「「「「はい!」」」」
こ うして、和やかに面会は終わった。ほっとしたー。良かった、優しそうな領主様で無茶言われなくて。わたしたちは、送りの馬車に乗って、冒険者ギルドの前で下ろされ、ヴァルドさんに無事に行ってきたことを報告して速攻で家に帰った。
やっぱり緊張したし疲れたー。みんなも同じだったみたいで、ちょっと疲れていたからここはみんなが大好きなハンバーグを作って提供!ハンバーグはいつ食べても美味しいよねー。みんなもほっとした顔で食べてくれた!




