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「ねぇねぇ。レベルも11になったし、管理人さんが言っていた大金ある場所にそろそろ行かない?」
「あー。熊が出るかもしれないから注意というやつか。」
「僕かなり強くなったと思うから、マックスベアに負けないと思うんだけど、どう?」
「大金ってどのぐらいだろうな。」
「大金あれば、防具が買えますね!!」
「ああ。防具必要ですね。長剣とか短剣はあったのに、何故防具は最初用意されていなかったんでしょうか。」
「魔物と戦わずに自給自足するとか思われていたのかな?」
「まぁ戦わなくても酒造と、アクセサリー作りに、傷薬、お菓子作って稼ぐっていう方向にいけば、防具要らなかったかもな。」
「あー。それでも暮らしていけそうだけど、僕は強くなりたい。せっかくの異世界だもの戦いたいよ!」
「そうだな。俺は稼ぐ方法はいくつあってもいいと思っている。何があるかわからんからな。」
「わたしもせっかくの異世界ならダンジョンで宝箱開けてみたいですね。」
「ダンジョンの宝物なら、アンデッドダンジョンだって聞いたよ。今度そっちも行こうよ!」
「今日は管理人さんの宝の地図の先に行きたいよ!!」
「この家から1時間ぐらい先かな。前にマックスベアに出会ったとこより北に行く。」
「大金って埋まっているのかな。」
「まぁ行けばわかるさ。」
「じゃ、行こうか!」
「「「おおー!!」」」
◇
と、いうことで森の中を歩くこと約1時間。目の前に洋館が聳え立っている。えー。お化け屋敷?!なんだか妙に趣のある家だ。家というのか、ちょっとしたお城だ。
「僕が行きますー!!」
物おじしないレンくんが突撃した。ちょっと待って、1人じゃ危ないよ!!みんなで後を追いかける。
「あー。ダメみたい。資格の無いものは帰れって頭の中に響いた。」
「えー。ちょっと面白そう。次、わたしやってみたい!」
「へー。ハルさんって、そこで興奮するたちなんだ。」
だって、頭に声が響くって楽しそうじゃない。レベルアップする時も頭の中に響くけど、異世界の不思議だよねー。
「あ。ダメだった・・・。わたしも資格なしって言われてしまいました・・・。」
「レンもハルもダメだっていうのは年齢か?」
「じゃ、次に一番年上のわたしが試してみます。」
ジュンさんが玄関まで行き、扉を開けようとしたけど、しゅんとして戻ってきた。ダメだったようだ。でも、宝の地図はここを差しているのは確か。
「じゃ、最後は俺か。ここは俺のための城なのか?」
トモさんが少しひきつる顔で扉に手をかけたら、複雑そうな顔をして扉を開けた。そう、扉は開いた!!トモさん!凄い!!
「トモさん!!凄いや!!一体なんの資格が必要だったんですか!?」
「ああ・・・。」
「だから、何の資格ですか!!」
興味はみんなあるけど、何故か言いたくないようなトモさんに、レンくんがしつこく食いつく。だって、3人とも資格なしって言われたもんね。
「ああ、資格とは、孤独を知っている奴だった・・・。」
「「「え??」」」
「孤独を知っているということが条件だった。」
「と、トモさん・・・。」
「とりあえず、中に入らないか。」
初めて入る家は、少し埃臭かった。美しい飾り彫刻の壁に広々とした広間と真ん中に大きな階段、吹き抜けの天井には煌びやかなシャンデリア。でも、トモさんから聞いたせいか、どれも、どこも少し寂しそうに見えた。
「こっちだ。こっちに応接間があるらしい。」
「え?なんでトモさんわかるの?」
「ああ。頭の中で声がする。ここの元の持ち主だったものの声がするんだ。」
「「「えー!!」」」
扉を開けると、そこには広々とした応接間があった。磨き上げられた床、大きな暖炉、壁際には背の高い本棚が並び、古びた本がぎっしりと詰まっている。
窓の外には、先ほどまで歩いてきた森が見えた。
中央には大きなソファーとテーブル。まるで、いつか誰かが訪ねてきてもいいように、ずっと準備がされてあったようだった。
「素敵な応接間ですね。」
「誰か来られたことってあったのでしょうか。」
「さぁな。」
「でも、誰かに来て欲しかったのかもしれませんね。」
―そうだったのかもしれない。だが、誰も来たことなどなかったがな。
「誰も来たことはなかったそうだ。」
「トモさんの頭の中の声がそう言っているんですか?」
「ああ。せっかくだから、こいつの話をしておこう。魔術師のアルノーだ。こいつが言うには、物凄く魔力が多かったそうだ。そのせいで、小さい頃は魔法の失敗も多かったそうだ。上手くコントロールできなかったらしい。親や友達に失敗を笑われて、悲しくて辛くて悔しくて努力して魔法が使えるようになって、家を飛び出したそうだ。」
「凄い人だったんですね・・・。」
「ああ。転移魔法が使えたそうだ。それぐらい凄かったのに、いつまでたっても誰かに笑われているような気がずっとして苦痛だったので、この森の奥に家を建てて1人で暮らしていたぞうだ。魔法の才能は凄かったので、1人で暮らすことに不便はなかった。この館にこれだけの魔法が残っていたんだ。死んでも残留思念が残るほど後悔も未練も多かったんだろう。魔法の腕はあったが、最後まで1人で寂しかったんだろう。」
「それで、この家に入る資格が必要な仕掛けを作られたんですね。」
「この家に入る資格は孤独を知っている者、その資格を持つものが課題をクリアしたら、この館を譲ると言っている。」
「課題ってなんですか!?」
「その課題は、『孤独を知っている者が、この先、人を信じることが出来るのか、確かめて欲しい。』というものだ。」
「トモさんが課題にチャレンジするんですね。」
「ああ、俺は課題を引き受けた。だからこの家は俺のものだ。」
「え!?もう課題をクリアしたっていうの?」
「ははは。もうすぐクリアできるっていう感じかな。俺の話も少ししたい。俺の実家の父は空手の師範代だった。だから空手を子どもの頃から習わされていた。父は外では評判にいい人で、礼儀正しく面倒見がよく、周りから立派な父親だと思われていた。」
そう、言うとトモさんは苦笑した。
「でも、家では違った。殴られる、蹴られる無視される。何をしても気に入らない。母も父からかばってくれたことはなかった。大人になれば母も父が怖かったのだと思えたけど、子どもの頃は守ってくれない母にも失望してまった。愛された記憶なんてないんだ。」
トモさんは、テーブルの上に組んだ自分の手をじっと見ていました。
「世間体は気にする人たちだったから、高校は通わせてもらっていたが、一刻も早く家から逃げたかったので、秘密でバイトしお金を貯めて、高校卒業と同時に遠くの役所に就職し、実家から出た。そこから一度も実家に帰っていないし、今住んでいるところも教えていない。だから、ここの魔術師の孤独はわかる。親が自分の味方じゃなかった気持ちは凄くわかるんだ。俺は次元の狭間に落ちて、二度と元に帰られないと聞いた時、これで親から完全に逃げられたと思って歓喜したよ。」
トモさんは噛みしめるように言葉を紡ぐ。わたしたちはただ聞くことしかできなかった。
「でも、この異世界に来てから、偶然居合わせた4人で生活しながら、たまたま一緒にいた人なのに、いつの間にか、ただの同居人から仲間になって疑似家族になって絆が出来てきた。一緒にご飯を食べる。ハルが美味しい家庭料理を作ってくれて、はじめて家庭の雰囲気を知った。みんなで街を歩く。一緒に歌う。騎士団で稽古する。森で討伐に出かけ、酒を造って一緒に飲む。前の世界ではありえなかった生活が続いている。俺は孤独だったけど、もう孤独じゃないんだ。それが課題の答えだな。」
―そうか、おまえはもう孤独じゃないんだな。ちょっと羨ましい・・・。ああ、おまえの心の温かさが俺 にも伝わってくるぞ。いいな。なんだか・・・。そ、そうか。俺はしばらくおまえの中に住む。そして俺の孤独が癒せたら成仏しよう。そうしよう。
「な!?」
「トモさん、どうかしたんですか?」
「トモさん、大丈夫?」
「ああ。アルノーがしばらく俺の中に住むって言いだしたから驚いたのだ。」
「え?成仏されないのですか?」
「こいつは孤独だったのが未練だったんだ。俺がもう孤独じゃないって言ったら羨ましがった。仕方がないな。おまえの心が癒えるまで、俺の中にいるがいい。」
うわ。トモさん、男前!!こういうところかっこいいよねー。
「おまえには、転移の魔法を教えてもらう、この家の大金も貰わないといけないからな!!」
ああ、トモさん!!このお金にシブイところは、やはり実家から逃げてきた時の苦労が出ているんでしょうか!ちょっと残念な感じが・・・。
「それに、みんなちょっとしんみりしているけど、俺はもう大丈夫だ。いい年した大人だ。父のモラハラのお陰で、役所に来るカスハラのじじいとかあしらうのも上手かったんだぜ。」
にかっと笑うイケメンに少し胸が痛くなりながら、もう大丈夫ならわたしが心配することは余計なお世話だ。わたしのご飯がトモさんの家庭を感じさせることが出来ていたのなら良かった。もっと美味しいのを作るねー。
と、いうことで、トモさんの中に孤独の魔術師アルノーさんが住み着くことになった。ご本人は未練が大きくて残留思念が残ったんじゃないかと言われるが、ジュンさんはどうすれば成仏できるのか、ぶつぶつ考えている。わたしはトモさんと一緒に楽しい時間を過ごせばいいんじゃないかなって思っている。レンくんは、火魔法を教えて欲しいってお願いしている。人から頼られるのに慣れていないアルノーさんはトモさんを通じて孤独じゃないって知って欲しいな。




