30
朝、凄いテンションでトモさん、ジュンさん、レンくんが起きてきた。わたしもおんなじだ!見た!精霊か妖精!光っていた。羽っぽいものを見た!本当にいたんだ。みんなで興奮を共感した。ふーふーふ。こんなことあるんだ。普通だけど普通じゃない。ここは本当に異世界なんだ。精霊については、今後ゆっくり様子を見て行こうっていうことになった。毎日の楽しみが増えたー!!
と、早朝はみんな興奮したけど、騎士団での5日間は大変濃い日々だったので、続く2日はゆっくり休憩。わたしは街で買った布で可愛いクッションを作っている。白いレースで縁取る。可愛いー。ついでに精霊か妖精に似合う小さな小さなクッションもお揃いで作る!可愛い!可愛い!!テンション上がる!!
トモさんはお酒を造るために商業ギルドまで原材料を受けに行ったようだ。ジュンさんは薬師の師匠のところへ顔を出しに行った後に、治癒院に寄るって言っていた。レンくんは5日間いっぱい稽古したので、今日は一日寝ているそうだ。若い子はたくさん眠れるからねー。
騎士団での稽古が終ったので、休み明け、今日からいつもどおり、冒険者ギルドに顔を出す。先週一度も顔を出していなかったので、ヴァルドさんに挨拶だけでもしておこうかってそんな感じ。
「あれ?なんかいつもとちょっと違わねぇ?」
そういえば、何人かの冒険者がわたしたちを見てなんか言っている。
「騎士団のせいじゃないですか?」
「騎士団が5日間も俺たちに稽古をつけてくれたんだ。それにもしかしてジュンさんの回復魔法も噂になっているのかもな。」
トモさんが苦笑する。ジュンさんが、え?わたし?と少しおろおろしていた。年上なのに、そんな表情が何か可愛い。レンくんが僕が強くなったのも噂になっているかなっと得意そうだ。
「おまえら、久しぶりだな!」
「ヴァルドさん、ちょっとすみません。」
「聞いたぞ!騎士団でみっちり鍛えてもらったんだとな。」
「はい!!」
レンくんがそれはそれは嬉しそうに返事をする。
「俺だって、稽古ぐらいつけられるぜ。騎士団だけにいい顔させると思うなよ!」
「ヴァルドさん、対抗意識燃やしているんですか!」
「燃やしてなんかいねえよ!」
4人で顔を見合わせて笑ってしまった。
「そうだ、ジュンの回復魔法のことも聞いたぜ。欠損治療ができたんだってな。おまえ、気をつけろよ。」
「気を付けろとは?」
「治療の依頼が殺到するんじゃないか。」
「ええ、薬師の師匠と治癒院の先生とはその話をしてきました。無理のない範囲で治療は受けていくつもりです。ただし、病気は治せないので、怪我だけですけど。ああ、ヴァルドさんの古傷治してもよろしいですか?」
「ああ?」
ヴァルドさんが返事をしたのかどうかの時に既に体が黄金色に光って、光が消えたら、顔にあった傷が消えていた。
「あー。脇腹の引き連れがない・・・。体の痛いところが無い・・・。ジュン、おまえの回復魔法はこれほどのものなのか!」
「騎士団で治療を続けたせいか、回復魔法の効果も性能も上がったようです。」
「おう、ありがとな。怪我のせいで、冒険者を辞め、ギルドで雇ってもらっていたが、これならばもう一度冒険者も出来るかもな。感謝する・・・。」
最初は強面のヴァルドさんだったが、心配症で優しい人だとわかってからはその怖い顔も怖くなくなってきていたが、顔についていた傷も消えた今、渋めのイケオジに見える。結構カッコよくない?
「ねぇねぇ。ヴァルドさん、古傷も治ったんなら、僕と稽古しようよ!!」
強くなったレンくんはその強さを確かめたくて仕方がないんだろう。
「良し!ギルドの練習場へ行くぞ!!」
ヴァルドさんはそう言うと、冒険者ギルドの地下へ案内してくれた。そこは結構広い場所で、その周辺の壁は、魔法で衝撃とか吸収してくれるようになっているらしい。
「さぁ。かかってこい!」
やる気満々のヴァルドさんとレンくんが剣を構えてわくわくしている顔をしている。2人とも戦闘狂?!
「行くよ!!」
剣と剣のぶつかる音がする。レンくんが元気いっぱいだ。わたしは、戦いはよくわからないけど、動きが軽い。リズミカルだ。足取りが踊るようだ。綺麗だ。戦っている人を綺麗だと思うなんて!体感で5分ぐらいか、打ち合いが続く。えい!とレンくんが気合を入れると、剣が飛んだ。ヴァルドさんに弾かれたのだ。凄い!!
「あー。負けちゃった・・・」
「いや、思ったよりいい勝負だったよ。俺はこう見えても冒険者引退する前は上級冒険者だったんだぞ。初級のレンに負けていいわけないだろう。ジュンに古傷も治してもらったんだ。絶好調だぞ。」
「あー。ジュンさんが古傷治す前なら勝てたかな?」
「それでも、俺の方がまだ強いぞ!」
ちょっとしょげるレンくんの肩を抱きながら、ヴァルドさんの機嫌が良い。イケオジに肩を抱かれる美少年!いい。わたしの中の腐った部分が少し時めく。いやいや。そんな属性など持っていないはずなのに!
「それはそうと、トモは酒、ハルは飯を騎士団に提供したんだな。」
「おう、俺も稽古をつけたぞ。冒険者ギルドの酒場にも酒と飯の提供を頼むぞ!」
「ああぁー。ヴァルドさん嵌めたな!」
「ははは。金はちゃんと払うぞ!」
「わかった。商業ギルドが窓口だ。冒険者ギルドにも卸すように話をしておく。」
「そうか。はは。楽しみだな。」
「わ。わたしは。毎日冒険者ギルドにご飯作りに行くのですか!?」
「ハルは、レシピを教えてくれないか。こっちも金は出す。『穂草』で美味しい料理だしたんだってな。あれが食べられるようになれば、見習いが助かる。草原ダンジョンの2階に山ほど生えているからな。」
「ああ。レシピならいくらでも出します!!」
「そうか、助かる。・・・助かるよ。ありがとう。」
ヴァルドさんが少し照れたような顔をしたのを見逃さなかった。レンくんがヴァルドさんにくってかかり、トモさんがそれいけとはやし立て、ジュンさがその横で笑う。こういう空気感もいいな。とっても。




