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次の日、起きてきたレンくんの第一声は、
「いたーい!!」
「筋肉痛か?」
「うん、たぶん、それ。体中痛い!!」
「治しましょうか?」
「いや、筋肉痛は治さない方がいい。筋肉が出来るための過程だからな。痛いのはその分頑張ったってことだよ。森へ討伐しにいった時は筋肉痛でなかったけど、本格的に鍛えるとやはり筋肉痛になるんだな。どうなっているのかわからんが、成長を促しているから仕方がないな。」
「久しぶりにきちんとした稽古したからなぁ。」
「レンくんは楽しかった?」
「うん、筋肉痛は痛いけど、稽古は楽しかったよ!どんどん自分の剣術のレベルが上がるのを感じたから。僕、物凄い才能ありかも!!」
「そうか、レンはスキルで剣術持っていたもんな。それであっという間にレベル上がったのかもな。」
「あ、そうか僕のスキルだった・・・。スキルって凄いね。トモさんは格闘技だったっけ?」
「ああ、俺のスキルは格闘技だ。だから昨日は大男にぎりぎり勝てた。スキルが無かったらきっと負けていたな。」
「凄かったらしいですね。わたしも拝見したかったです。」
「あー。僕も見たかった!!」
「わたしもです!!」
「ああ。また今日から4日間稽古に行くからどこかで見ることが出来るんじゃね。」
「そうだね。楽しみだねー。」
「わたしも今日から欠損の方に回復魔法をかけることになったので、緊張します。」
「指の欠損は治せたんだよね。ジュンさん凄いや。」
「ええ、なんでも出来そうな気がして少し怖いのですが、人の苦しみが少しでも解消できるのであれば、わたしがここに来た意味があるのではないかと思ったりします。」
「ああ、そうだな。なんで狭間に落ちたのが俺たちだったのか。答えは出ないもんな。」
「僕は結構、今の生活楽しめてきているかな。スマホもゲームも漫画も無いけれど、みんなと討伐して、街仕事して、歌ったり、レベル上げたり、わいわい共同生活をするのが楽しいよ!」
「わたしも以前の仕事は嫌いではなかったけど、今好きな家事をすることに誰も奇異な目で見られることもなく、美味しいご飯を喜んでくれる人がいるのが嬉しいです。」
「うん、今の生活は悪くない。カスハラに合わなくて済むだけ精神的にもましだ。変な女に言い寄られたり、街歩いていて喧嘩吹っ掛けられることもないしな。」
え?トモさんの日本での生活って結構荒んでいた?!こんな圧の強いイケメンに喧嘩を売ってくる人っていたんだ!!ちょっと驚いた。トモさんはそれが普通っていう顔をしている。なんだか凄いな。
そんな驚きをしながら、いろんな具入りのおにぎりを大量に作り、卵焼きにソーセージを焼き、鮭に似た魚も焼く。塩加減もちょうどいい。今日はきゃべつっぽい葉物と油揚げのお味噌汁。そう豆腐から油揚げも厚揚げも作れるようになったのだ!わたし凄い!!
みんなに感謝されながら朝食が終ると今日も騎士団稽古場に足を運ぶ。マルシェさんは豪快なおばちゃんで、なんか実家の母に似ている気がして懐かしい。うちの母も、わたしがオトメンだということを、豪快に受け入れてくれたなぁ。まぁそのせいで実家住みの時は共働きの我が家の家事はほとんどわたしがやっていたので、親が楽をしたかっただけなのでは?と、ちらっと思ったりもしたけど、好きなことをさせてもらったのはいい思い出だ。
さて、今日は騎士団で何を作ろう。家の芋が無限芋だから、たくさん持っていって、コロッケ作ろうかな。あー。ポテサラ作って、サンドイッチと唐揚げにしようかな。卵サンドとポテトサンドはレンくんもトモさんもジュンさんも好きだし、そうしよう!
騎士団に着くと、今日は門番さんも顔パスで通してくれた。マーベルさんもダグさんという人も待っていてくれて、トモさんとレンくんは稽古場に、わたしは食堂へ、ジュンさんは救護班かと思いや、団長室へ行くと言う。欠損の方が団長室で待っているそうだ。ジュンさんの回復魔法は瀕死のレンくんを助けたほどだ。うまくいくといいな。
食堂では、マルシェさんが諸手をあげて待っていてくれた。
「おはよう。ハル、今日は何を作るんだい?」
「今日は具沢山の卵サンドとキュウリとポテトサラダのサンド、ハムとチーズのサンドと唐揚げにするつもりです!」
「卵サンド?って何だい?他にもたくさんサンドが出てきたが同じものかい?あと唐揚げ?ってなんだい?」
「マルシェさん、全部作っていくので、見ていて下さい!!」
「そうかい、じゃ、今日のお昼もハルに任せようかね。」
にっこり笑うマルシェさんはやっぱり母に似ていて、なんかちょっとくすぐったかった。
**その頃トモさんは**
「トモ!待て!今日は俺が勝つ!!」
「おっさんがいってらー!」
「今日もやるか!」
「今日も俺が勝つぞ!!」
「はは。今日は俺だな。連日負けるわけにはいかない。よしっ、こい!!」
汗が飛び散るトモとダグはお互い不敵に笑いながら間合いを取っていた。今日も楽しめそうだと思うのだった。
**その頃レンくんは**
「レン、そこは持ち方がちょっと違う。こうしてこうだ。」
「あ、剣道とはちょっと違うんだな。すぐに前の癖がでちゃうな。」
「でも、基本は出来ているからその持ち手のまま50回素振りだ!」
「はい!!ねぇ、この振り、かっこいい?」
「はぁ?レン!かっこいいとはなんだ!」
「いや、カッコ良かったらやる気でるじゃん。って思って。」
「はー。わかった。お前はカッコいいぞ。だから素振り50回頑張れ!!」
「はーい!!マーベルさん、僕めちゃくちゃ強くなっていない?」
「あー。口を動かすより素振りだ!素振り!!」
レンは自分がどんどんうまくなっていくのを感じて笑いが止まらなかった。笑いながら素振りをするレンをマーベルは不気味に見守るのだった。
**その頃ジュンさんは**
「こいつは、魔物討伐に出て、足を持って行かれた。優秀な騎士だった、どうだ。出来そうか?」
「はい、やってみます!!」
「おおおおお!!!体が黄金色に輝く!ま、眩しい!!」
黄金の光に何かがちかちか近寄ってきたような気もしたけど、みんなそれどころじゃなかった。
「だ、団長!!!俺の足が!!!俺の足が!!!!」
「ああ、サーモス!!!サーモス!!」
「良かった。足が元に戻りましたね。」
「ジュン!なんてお礼をすればいいのか!」
「いえいえ、わたしの回復魔法で治って良かったです。」
「ぎ、義足でも歩けたが、もう二度と剣は握れない。騎士は出来ないと思っていた。ほ、本当に感謝する!!ありがとうございました!!」
「ジュン本当に・・・。サーモスは優秀な騎士だったんだ。本当に俺が目にかけていたのに、魔獣に囲まれて、他の団員を助けるために自分が犠牲になったのだ・・・。ありがとう。」
「いえいえいえいえいえ。ほんとわたしの回復魔法が効いて良かったです!!!」
「後、3人今日は来てもらっているんだ。残りもよろしく頼む!!」
「はい!!!!」
治療が出来て本当に良かった。心からほっとした。でも、さっき黄金の回復の光につられて何かがちかちかと光って飛んでいたような気がしたけど、何だったんだろう?
◇
「マルシェさん、これが卵サンドの卵の部分です。ゆで卵にマヨネーズという調味料で和えています。これを食パンというパンに挟んで、少し辛子を入れて形を整えて切れば出来上がりです。簡単でしょ!」
「ハル!まよねいずというのが、よくわからんよ。あと、食パンというパンもこの辺じゃ売ってないわね。」
「ああ、えっとマヨネーズは卵とお酢と油を混ぜたら出来ます。食パンは金物屋のハントさんに型を作ってもらったんです。ハントさん器用ですねー、もうかなりの型を作ってくれています。」
「ハルは新しいことを発明しすぎだね。」
「新しいというより、前に住んでいたところの常識なんですよ!」
「前に住んでいたところ?」
「ええ、突然こっちにきちゃったし、もう二度と帰られないんですが・・・。」
「・・・そうなのかい。悪いこと聞いてしまったね・・・。」
「いえ、大丈夫です。わたしには3人の仲間がいますから!!辛くも寂しくもないんですよ!」
「そうかい。それなら良かったね。じゃ、その前に住んでいたところの美味しいものをもっと教えてもらおうかね。」
「はい!!」
◇
こうして、騎士団での2日目も無事に終わった。無事に?わたしの作ったお昼は昨日より熱烈に歓迎してもらったし、トモさんはすっかり団員に馴染んでいたし、レンくんはひたすら剣術が上達したのか嬉しそうだったし、ジュンさんは団長に物凄く好かれていたけど、それでも無事に終了したと思う。うん。そうだと思う。
◇
信頼関係が出来てきた騎士団での生活。次の日には、わたしは家畜の餌だと思われていた『穂草』を使ったおにぎりを登場させ、多くの団員から美味しいという言葉をいただけた!!マルシェさんからも絶賛されたしね。その次の日は親子丼に、最終日はカツ丼とカツサンドにしてこれからも毎日ご飯を作りに来てくれと言われるようになってしまった。でも、約束は5日間だけだからね。
トモさんとレンくんは望む強さを手に入れたようだ。トモさんは当初の長剣での練習ではなくほぼほぼ体術の練習だったけど、スキルがあるから上達は凄かったそうだ。ジュンさんは欠損のあるこの街に住む元騎士団員を全員治療したそうだ。団長さんが欠損治癒に対して代金を払うと言い出した。
最初、トモさんとレンくんの稽古を見てもらう代わりに、ジュンさんが回復魔法を使い、わたしがお昼ご飯を作るという話だったのに、わたしのお昼だけで稽古代は賄えているそうで、欠損の回復魔法はやりすぎだっていうことになったらしい。
「これだけ多くの仲間が、また一緒に騎士団に戻ってもらうための手伝いをしてくれた、これは無償では騎士団として申し訳ない。絶対対価を支払う!!」
「承知いたしました。有難くお受けいたします。あの、少し気になっていたのですが、わたしが回復魔法を使った後に、黄金の光のそばを浮遊しているようなちかちかと光るものを何回か見たのですが、あれはなんでしょうか?」
「あー。あれは、きっと光の精霊だよ。ジュンさんの回復魔法の清らかな光が気にいったんだろう。」
「え?精霊!?精霊っているんですか?」
「ああ。いるよ。街でも時々見ることがあるよ。見たことがなかったか?」
「綺麗な水のそばとか、咲いたばかりの花のそばや、夜にミルクを出しておくと飲んでいくとか言われているぞ。」
「団長さんは見たことがあるんですか?」
「ああ。あるよ。俺は風魔法を持っているんだが、時々俺の風魔法と一緒に飛んでいるのがいる。可愛いかな。」
「へー。そうなんですね。お会いしたいです。」
「じゃ、花を飾っておくか、寝る前にミルクを置いておくか。精霊の気分次第だが、会える確率はあがるな。」
「そうなんですね!試してみます!!」
というような、驚きの報告をジュンさんから聞いた。精霊が普通に街を浮遊しているんだ!凄い!!ジュンさんは早速今日から寝る前に部屋にミルクを置いてみたいと言っている。いいんじゃないかな。素敵だな。とっても、もちろんわたしも花を飾って、綺麗な水を置き、万全に備えたいところ。精霊だなんて乙女心くすぐるー。異世界にいるっていう実感が湧いてくる。この日、トモさんもレンくんもジュンさんもミルクを夜厨房から持って行っていた。それぞれ会えたのかな。会えたのなら嬉しいね。




