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**4人が帰ってからの騎士団では**
騎士団長、レンと最初に知り合ったマーベル、トモと戦ったダグ、ハルと一緒に食堂でご飯を作ったマルシェ、救護班のボルクにラウルが夜の集会場に集まった。
5人は長机を囲み、それぞれ飲み物を手にしていた。
「あいつら4人をどう思った?」
団長に聞かれ、それぞれ4人が答えていく。
「どうって言われても・・・俺はレンとだけ一緒だったからレンの話だけだが、レンとはこの前の巡回の時に、迷子の猫を追いかけてレンが木の上に登っていて、そこから落ちかけていたから俺が助けたんだ。そしたら、猫がレンに懐き、レンが俺に懐いたんだよ。」
「ははは!」
マルシェが豪快に笑う。ダグも笑っている。
「何やっているんだよ!」
「それで、俺が騎士団員だ、また遊びに来いよって半分社交辞令で言ったんだ。じゃ、今日仲間を連れて来たんだよ。」
「素直な子だねぇ。」
「ああ、レンは剣の筋も素直だ。今日一緒に稽古したが、真面目に俺の言うことを聞いて、何度も厭わず繰り返し、帰りにはかなり上達した。筋がいい。センスもいい。」
「そうか。」
「あ。俺はトモだ。最初にあいつを見た時、こいつは強いってわかった。姿勢が良かった。体の芯がぶれていない。戦える男だと思ったから試合を申し出た。」
「それで負けたのか。」
「・・・そうだ。でも物凄く良い勝負だったんだ。真っ向勝負の真っすぐな強さだった。心がひねくれている奴の戦い方じゃなかった。俺が言えるのはそんなところだ。」
「ハルはどうだった?」
「ハルかい。あの子は凄かったよ!!あんな料理見たことなかった。丸いパンに、焼いた肉と野菜を挟んで手で持って食べるなんて今まで見たことが無かった。物珍しいだけではなくはっとするぐらい美味しかった。食べやすい、美味しい。腹に溜まる。完璧だよ。」
「ああ、昼のあれは旨かったな。」
「それにあの子は料理だけではなく、後片付けも掃除も手際がいい。あっと言う間に厨房も磨き上げていたよ。あたしゃちょっと羨ましかったよ!素直で良い子だよ。こっちが聞けば、料理も飲み物も全部レシピを教えてくれたよ。最近街でハーブを使う料理が増えたが、あのハーブはあの子が提案したらしい。凄い子だよ。料理が美味しかったって言えば、嬉しそうに笑っていたよ。」
「なるほど・・・。」
「最後はジュンだな。ジュンのことは今日団長に報告したが、どんな報告だったか今から話すよ。これを見てくれ。」
ボルクは自分の手のひらを広げた。
「俺は以前の訓練で指を1本失った。それで騎士ではなく救護班の担当になった。だが、今日ジュンが俺の指を治した。」
「指の欠損をか?!」
「ああ。そうだ。あっという間だった。俺が光ったと思ったら指が戻っていた。」
「あれだけの回復魔法が使えるのは王都にも数人だ、まるで聖女様と同じぐらいだと思ってしまいました!」
「俺だけじゃない、ジュンは明日から欠損で騎士を辞めた元団員を治してくれると約束してくれた。出来るかどうかわからないけどやってみたいって言ってくれた。」
「も、もし、欠損が治れば、騎士に戻れるやつもいますね。」
「だから、ジュンは悪い奴だとは思えない。どっちかといえばお人よしだ。」
「4人とも真面目で素直でお人よしか・・・。どこかの国の諜報員ではなさそうか?」
「あ、どこかの国といえば、街であの4人の噂をちょっと聞いたことがある。」
「例の噂か?」
「街の女の子たちの間で、あの4人はどこかの国の王子様じゃないかという話が出ている。」
「王子様?」
「政権争いから逃げてきているんじゃないかという話が出ている。」
「まぁわからなくもないね。あの子たち、妙に品がいい。顔立ちも綺麗だし、育ちの良さが隠せていない。」
「見慣れない料理」
「めちゃくちゃ美味しい新しい酒」
「猫に好かれる男」
「桁外れの回復魔法」
「戦える男」
「街の女の子たちは、兄王子様と弟王子様とその2人を守る騎士と身の回りの世話をする従者だと言っていた。」
5人で顔を見合わせて、ああーっという顔をした。ぴったり当てはまる気がした。桁外れの回復魔法を持つ兄王子、邪気のない笑顔で猫に好かれる素直な弟王子、2人を守り、酒を造って路銀を稼ぐ騎士、美味しいご飯を作り身の回りの世話をする従者。うん。妙にしっくりくる。
ダグが口を開く。
「あいつら悪い奴じゃないと思う。」
「あたしもそう思うよ。あの子ら邪気がない。」
マルシェも同意する。続いてマーベルも、ボルクもラウルも同じく頷く。
「そうだな、明日からしばらくやつらは稽古に来る。様子をみよう。」
「ああ。万が一王子だろうが、俺はちゃんと稽古をつけるぜ!」
「俺も、トモともっと戦いたい。」
「あたしは、ハルにもっと異国の料理を教えてもらうよ!」
「俺たちは明日からどれだけの人数の欠損を治してもらえるのか今からどきどきわくわくしているぜ!」
彼らはまだ何者かわからない。その夜、騎士団の集会場で交わされた結果はそう出たが、彼らを疑うものは誰もいなかった。彼らが明日も明後日も騎士団の稽古場を訪ねてくるという事実だけが、やけに楽しみの5人だった。
**酒好き冒険者たちは**
「やったー!トモに会えた!商業ギルドで酒が買える!!」
「やったな。商業ギルドへ行こうぜ!!」
「ギルド長!!酒だ酒!!」
「お、おまえたちなんだ。トモの酒はここでは買えないぞ。」
「いや、大丈夫だ。さっきトモに酒の材料を渡したら商業ギルドで買えるようにしてやるって、ほら、この覚書を書いてくれた!」
「どれ。ああ。小樽1個、日本酒か。わかった。トモの字だ、渡そう。」
「「「やったー!!!」」」
酒飲みの冒険者3人は飛び上がって喜ぶと、急いで冒険者ギルド併設の酒場に走りこむ。さぁ飲むぞ。飲むぞ。
「うひゃー。なんて旨いんだ。この酒精の強さ。この水のようなのに喉に来る凄烈さ!」
「旨い。旨い。旨いぞ!!」
「ダンジョンまで行って、足濡らしながら『穂草』採ってきたかいがあったな。ほぉ旨いなぁ。おかわり!」
「これからも『穂草』毎日採りに行くか。小樽だと一晩で無くなっちまうな。」
「ああ。この旨い酒を飲みだしたら、他の酒は飲めねぇな。明日もダンジョン行くぞ!
「「おー!!」」
そんな感じで、酒好きたちは、毎日草原ダンジョンへ行って、『穂草』を採取しにいくようになった。昼間から酒を飲んでだらだらしていたおっさんたちは、みるみる間に健康になっていく。なんだ出ていた腹がへっこんできたな。とか、肌艶がよくなってきたんじゃねえ。昼間ダンジョン行くと、夜飲む酒が今まで以上に旨い!そんなこんなでいつの間にか不健康な酒飲みおっさん冒険者は日々ダンジョンへ通う健康的な冒険者へと変化していったのが、噂になっていく。『穂草』を刈って商業ギルドへ!酒好きの間で合言葉になるのも、もうすぐ!
**見守り隊の女子たち**
「今日も歌を聴くことが出来たわ!!」
見守り隊のリエナ、キャロン、リタの3人は偶然にも今回も4人の歌を聴くことが出来た!兄王子様の夢見るような澄んだ歌声、弟王子様の甘い歌声、騎士様の心地よく響く低音、そして従者なのにいつも主旋律を奏でる伸びやかな歌声、4人の声が重なりあった瞬間、一瞬場が静かになり、歌が終ると割れんばかりの拍手に包まれる。
もちろん、3人も拍手を惜しまなかった。全力で拍手するので、いつも手の平が痛くなるが、良いものは良い。手の平の痛みぐらいどうでもよい。
「今日も素晴らしかったわねー。」
「ええ、本当に素晴しかった!!」
「ところで、相談があるの。」
リエナが2人に真剣な目で問う。2人もすっと姿勢を正した。
「あの、どうしてももう一度聴きたい曲があるんだけど、題名がわからないの!!」
「「あー!!」」
「わたしもある。わたしも題名がわからない!」
「わたしもそう!同じ!!」
3人は顔を見合わせる。
「困ったわね・・・。4人とも題名も言わずいつも歌われるもの。」
「ええ。いつも4人で何か小さな声で確認は取られているけど、聞き取れないわよね。」
「わたしは、ほら、もの悲しく切なく心を揺さぶるあの曲がもう1回聴きたいの!!」
「わたしは明るい曲調の踊りたくなる曲がいいの。」
「わたしはどこか懐かしいふるさとを思い出す曲がいいわ。」
「ねぇ抜け駆け禁止だけど、歌のリクエストは禁止じゃないわよね。」
「ええ。迷惑をかけてはいけないけど、リクエストは禁止じゃないわ。」
「4人の迷惑にならない範囲で節度を持ってお願いすることは禁止じゃないわ!」
「でも、どうやって?曲名がわからないのに?」
「ご迷惑をおかけすることはできないわ。」
「でも、もう一度聴きたいのよね。」
「ええ、本当に。」
3人は揃ってため息をついた。すると、リタが突然ぱっと顔を輝かせた。
「ねぇ。今度歌っている時に居合わせた時に、歌い終わった瞬間に『素敵な歌でした。もし良ければ曲名を教えていただけませんか?』って聞くのはどうかしら?」
「リタ!あなた天才よ!!」
「うまくいくといいわね。」
「でも、わたし4人の歌が聴けるだけで幸せよ。」
3人の耳の奥には、まだ歌声が残っている。余韻を楽しんでいると、
「今日、歌い終わった時、弟王子様がふと微笑まれてどきっとしましたね。」
「ええ、あの笑顔最高!」
「みんな、見守るだけよ!抜け駆け禁止!!」
「もちろん!」
「当然よ!!」
3人は強く頷いた。王子様を見守る隊は今日も平和である。そして明日もきっと平和だろう。




