↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/58

24

 そんななんてことのない日々を過ごしていると、時々、夜飲みながら、ジュンさんがお釈迦様のお話をしてくれる。お釈迦様はジュンさんの推しだ。酔うと人に話したくなるらしい。


「ねぇジュンさんはお釈迦様の話をよくするけど、どこが一番好きなの?」


「そうですね。お釈迦様は自分を神にしなかったところでしょうか。自分のことを拝めとか言わなかった。自分が見つけた道をただ示してくださったのですよ。」


「へー。偉い人なのに?」


「そうです。人間は生きていれば思い通りにならないことがあります。欲しいものが手に入らない。大切な人を喪う。嫌なことを言われる。誰かを好きになれば失うことを恐れる。でも、お釈迦様はそれを不幸だと言わなかったのです。苦しみがあれば、何故苦しいのか、その原因を追究し苦しみを減らす方法を探した方です。」


「へー。真面目な方だったんだ。」


「わたしは、お釈迦様の、心を鍛え、自らを変えることで苦しみから自由になれるという姿勢が好きなのです。誰かに甘えたり、誰かに救済されるのではなく、自力で自分の苦しみから逃げられるのです。いいと思いませんか?」


「僕は、あまり辛いとか苦しいとかを引きずらないからよくわからないけど、どろどろしている人、嫉妬や恨みや憎しみを抱き続けている人よりはいいよね。自分で自分を開放するって前向きー!」


 レンくんはいつも悩みがない。苦労もない。人生の重い物をいつもどこかで下ろしてくるんだろうな。そういう突き抜けた軽さに救われることも多い。ジュンさんも笑っている。酔えば語るお釈迦様の話を茶化さずちゃんと聞いてもらえて嬉しそうだ。


 わたしはおばあちゃんっ子だったから、仏様を拝む。手を合わせるは日常だったけど、お釈迦様と向き合うっていうことなかったので、おばあちゃんの信じていた仏教とジュンさんが推すお釈迦様との違いに驚いたりもした。おばあちゃんの仏様は念仏を唱えると救っていただけるだった。ジュンさんのお釈迦様は基本自力で頑張れなのだ。他力か自力、いろいろあるんだなぁ。


「自分の足で立てっていうことだろ。俺たちはたまたまあのスクランブル交差点で次元の狭間に落とされて一緒に生活していくことになったが、年齢も産まれ育った環境もまったく違ったけど、ひとつだけ、共通しているのは、自分の機嫌は自分で取れて、人生を誰かのせいにせずに生きてきたことかもな。」


「あー。わかる。わたしも自分の好きを邁進してきました。誰かに理解してもらいたいとも、誰かと同じでいたいとか思わなかったです。どうしても自分がやりたいって思うことだけやってきたかもしれません。」


「ある意味、自分に我儘なのかも。」


「そうだね。僕も来るもの拒まず去る者追わずで、誰かの機嫌を取ったりしなかったな。まず自分がいて、それで完了だものー。」


「ハルも、レンはわかりやすくて良いな。」


 トモさんが笑うと、ジュンさんがはっとして、


「わたしばかりお釈迦様のお話をしてしまいましたが、皆さんにも推しはいるのですか?」


「僕は、推しっていうのかアイドル全般が好きかな。特定の誰が好きっていうんじゃなくて、テレビに出ているアイドルと呼ばれる若い人たちが全体的に好きっていう感じだけど。」


「へー。変っているな。特定のこの人!っていうんじゃないのか。」


「うん、流行の音楽を聴いたり、ダンスをみたり、可愛いなとか、みんなカッコいいなっていう感じで見ていたよ。」


「俺は強いていえば、野球かな。推しの選手や球団はないけど、野球の試合を見ながら飲む時間は好きだったな。嫌なことも辛いことも何も考えなくて済む時間だったからな。」


「わたしは、憧れの手芸家の方がいらっしゃいました!めちゃくちゃ可愛いぬいぐるみとかポーチとか作られていて、よく真似していました!!」


「ふふ、たまに飲みながら推しの話をするのもいいですねー。」


「いや、たまにじゃないから!ジュンさん飲めば大抵お釈迦様の話だよ!」


「え?そうでしたっけ?」


「やだなぁ。たまじゃなくて、毎回ですよ!まぁでもお釈迦様の話は聞いていて嫌な気持ちにならないから毎回でもいいですよ。」


「ああ、ジュンさんのお釈迦様の話が出てきたら、ジュンさんが酔っぱらってきたなという目安になっていいけどな。ははは。」


 毎回、ジュンさんが酔って上気した顔は色気駄々洩れで愛しいお釈迦様の話をする様子は微笑ましい。それをジュンさん以外はわかっているから笑える。そして、酔った目安にしているので、そこでいつもお開き。なんだか毎日楽しい。そんな日々。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。