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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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受け継いだお守り


 半年前におばあちゃんが亡くなったんだけどさ。

 おばあちゃんが亡くなったときに、お守りをもらったんだよね。お守りって言っても、神社で売られているようなやつじゃないよ?

 めっちゃボロい木の板で、墨でなんか文字が書いてあるの。字はかすれてるところもあるし、漢字っぽいけど見たことないような画数が多い字で、さっぱり読めないんだよね。

 おばあちゃんは病院で死にたくないって言って家で過ごしてさ。亡くなる前に私とふたりっきりにさせてくれって私以外を部屋から追い出してたの。それで、お守りをくれたんだよね。


「Aちゃん(私のこと)、小さい頃に夢の中できれいな女の人に会ったって話をしてたじゃない。覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」

「その人、どんな人だった?」

「髪の毛が黒くて長くて、白い着物を着てたよ。着物は白いんだけど、裾の方は赤いの。すごくきれいな人で近づくとあったかい感じがした。にこにこ笑いながら、私を見てたよ」

「あぁ、やっぱりねぇ。B子(私のお母さん)の夢には出てきてなかったみたいだから、もうおばあちゃんで終わりなのかと思ってた」


 おばあちゃんはちょっと涙ぐみながら、部屋にある小さなタンスを指さしてね、「そこに木のお札があるから、とってきて」って言ったの。

 私、言われた通りにした。

「これはね、おばあちゃんの家にずっと伝わる魔除けのお守り。ずっとおばあちゃんを守ってくれたお守りなのよ。Aちゃんもこれを持っていれば、何があっても大丈夫だから」

 そう言って、私にそのお守りをくれたの。

 私は「でもこれって、おばあちゃんを守ってくれるものじゃないの?」って聞いたら、「おばあちゃんはもう死んじゃうから、いいのよ」って。

 そんなやりとりがあって、おばあちゃんは本当にすぐに亡くなっちゃった。亡くなったときのおばあちゃんはすごく苦しそうな顔をしててさ。私はおばあちゃんが大好きだったから、なんでおばあちゃんがこんなに苦しんで死ななきゃならないんだろうって思ってた。


 おばあちゃんの四十九日が過ぎた頃、私の身の回りに変なことが起き始めたんだよね。

 ひとりで部屋にいると、壁をカリカリ引っ掻くような音がする。部屋の隅に誰かが立っているような気がする。私もお母さんも髪型はショートなんだけど、お風呂に黒くて長い髪の毛が浮いてる。

 それから、夢の中にまた女の人が出てくるようになった。おばあちゃんとも話した、きれいな女の人。女の人が出てくる夢は本当にあったかくて、女の人も私を迎え入れるように腕を広げてくれてたから、私、この人に抱きつこうとしたのね。

 そしたら、どこかでカランって乾いた音がした。

 その音がした途端、女の人の表情が曇って、辺りの温度が下がったのね。

 私は夢から覚めて、部屋を見てみたら例のお守りがフローリングの床に落ちてたの。たぶん夢で聞いた音って、これが落ちた音だったのね。

 拾い上げてみると、木の板だから温度なんてないはずなのに、ほんのりとあったかかった。でも私、このお守りは机のひきだしの中にしまっていたはずなんだよね。とりあえずその日は、お守りを枕元に置いて寝たんだ。


 その日からなんとなく、寝るときは枕元にお守りを置いて、でかけるときにはお守りを持ち歩くようになったの。

 部屋の中で壁を引っ掻く音や、誰かが立っているような気がしたときは、お守りをぎゅっと握ると音がやんだり、気配が消えたりしたの。だから守られてるって感じがしてた。

 でも、夢の中に女の人が出てくることもなくなっちゃったんだよね。それは少し寂しかったなぁ。


 この間、お母さんと話してたらおばあちゃんの話になったのね。

 それでお守りの話とか、夢の中の女の人の話とかしたの。お母さんは夢であの女の人を見ていないって言ってたから「おばあちゃんもその女の人を夢で見てたのかなぁ」って私が言ったのね。

 そうしたら、お母さんはすごく難しそうな顔になってさ。

「お母さんもおばあちゃん、あぁ、あんたのひいおばあちゃんね、ひいおばあちゃんから聞いたことあったのよ。その、夢の中に出てくる女の人のこと。その人ね、ひいおばあちゃんの家系にずっと憑いてるんだって」


 憑いてるって、普通あんまり良くないことに使う言葉じゃない? だから私、ビックリして。だって夢の中の女の人ってすごくいい感じだったから、むしろ守り神なんじゃないかって思ってたんだよね。

「でね、ひいおばあちゃんの家系では、その女の人は長女にとり憑くんだって。だから絶対、女の子が生まれるんだって。それで、子どもの頃にその女の人を夢で見る。で、次にその女の人にとり憑かれるのはその子になるんだって。だから、災いを避けるためにそのお守りを伝承してるらしいの」

 お母さんには、生まれてすぐに死んじゃったお姉さんがいたんだって。だからお母さんの夢には女の人は出てこなかったのね。もしかしたら家系の長女が死んだことで、女の人はもう憑かなくなったんじゃないかって考えてた。だけど、私が生まれて、私が夢で女の人を見ちゃった。つまり、その女の人は、今は私に憑いてるみたいなの。


 おばあちゃんが亡くなるときにすごく苦しそうな顔をしてたのって、あの女の人に殺されちゃったからなのかな? ってことは、私も死ぬときは苦しんで死ぬのかなぁ。

 お母さんにお祓いに行ってみようかって言われたけど、ずっと憑いてる人が、お祓いなんかでいなくなるのかな。

 とにかくもう、私はこのお守りを手放せなくなっちゃった。


 

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