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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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橋の上の子ども


 今でも思い出すとゾッとするんだけどさ。

 去年の冬、夜にスーパーへ買い物に行ったのね。キッチンペーパーを切らしてたのを思い出して。旦那には明日でもいいんじゃないって言われたんだけど、ついでにお菓子も買いたいからって自転車ででかけたの。

 別にすごく遅い時間ってわけじゃなかったんだけど、橋を通っていくルートが近道だったのね。ちょっと暗い道だから、歩いてる人を見かけることはあんまりなかった。街灯も少ないしね。橋はそんなに長くないし、下に流れてるのも浅くてほとんど流れがないような川なの。川面まで2メートルもない感じかな。

 橋の左右の欄干も全然高さがなくてさ。大人の膝よりちょっと上くらい。だから酔っ払いとかがときどき落ちたりするみたい。まぁ大した高さもないから、落ちたところでちょっとしたケガくらいしかしないんだけどさ。

 人通りが少ないし、暗くて寂しい通りではあるんだけど、ここで怖い話なんていうのは聞いたことなかった。


 それでね、スーパーからの帰り道。まだ21時にもなってなかったと思う。

 寒くて、私の吐き出した息が白かったのを覚えてる。

 そろそろ例の橋に差しかかるなってなったとき、橋の上に小さな人影があったの。暗かったけど、その子どもは白いフードつきのパーカーを着てたからすぐに分かった。

 年齢は、幼稚園か小学校低学年じゃないかな。21時前とはいえ、そんな小さな子がひとりで寒空の下にいるのって変じゃない。

 近くに親がいるのかなって思って、私はちょっと自転車のペースをゆるめて辺りを見回したけど、誰もいなかった。

 どうしよう、警察に連絡したりした方がいいのかな、なんて考えてたら、自転車が急に重くなった。私の自転車には後ろのところに荷台がついてるんだけど、それを力の強い誰かが思いっきり掴んでる感じ。

 振り返って確認したけど、荷台を抑えている誰かなんていなかった。


 前に向き直ったら、さっきの子どもがこっちに向かって歩いて来てたのね。

 私と同じように白い息を吐き出して、ゆっくり、ゆっくりこっちに歩いて来るの。なんだか急に怖くなって、早く通り過ぎようと私は思いっきりペダルを踏み込んだ。でも、自転車は重くてノロノロとしか進まない。

 子どもとの距離はどんどん近づいて、月明かりにうっすら照らされた子どもの顔が見えた。

 その子どもの顔は、目が、白目の部分がなくてぜんぶ黒目みたいに真っ黒だった。ちゃんと見てないけど、もしかしたら空洞だったのかもしれない。そして白い息を吐き出している口はカエルみたいに裂けてて、白い小さな歯がぞろりと並んでた。


 人間って、驚きすぎると悲鳴なんて出ないのね。

 私はこの状況から逃げ出したくて、渾身の力で自転車のペダルを踏んだの。そうしたら、さっきまでの重さが嘘みたいになくなって、自転車はぎゅんっと進んだ。今度はいきなりすごい早さで自転車が進んで、このままだと橋の欄干にぶつかって川に落ちちゃうって思った。

 慌ててブレーキを握ったけど、自転車は橋の欄干に激突。でも自転車が欄干を乗り越えることはなくて、私は横に倒れて地面に叩きつけられた。

 とにかくあの異様な子どもから逃げなくちゃって、痛む体をむりやり起こして子どもの方を見たら、そこにはもう誰もいなかった。

 私はしばらくそこで呆然としてた。転んで打ちつけた場所がじんじん痛んで、立ち上がる気力もなかった。


 その後、たまたま通りかかったサラリーマンのお兄さんが地面に座り込んだままの私を助けてくれたのね。人に話しかけられてほっとしたのか、私、ぼろぼろ泣けてきちゃって。思い出すとすごく恥ずかしい。でもそのお兄さん、本当にいい人で、自転車を引いて私を家まで送り届けてくれたんだ。

 家で待ってた旦那がめっちゃびっくりしてた。私、派手に転んでジャケットがやぶれたりしてたんだよね。

 旦那にあったこと話してさ、旦那も私もこの辺りが地元だから、例えばあの橋から落ちて死んだ子どもがいるなんて話は聞いたことないよねって。そもそも本当に浅い川だから、よっぽどじゃないと溺れることなんてないのよ。

 もう私、絶対にあの橋は通らないわ。

 

 

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