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020

 無数に落ちる雷から慌てて逃げ出そうとするゴブリンたちだが、進撃してきた村の北側は開けた土地であり逃げ場などあるはずがない。右往左往しているうちに雷に焼き殺されている。


 そんな中ひときわ大きなゴブリンがエドヴァルト目がけて突進してくる。この人間が雷を落としていると考えたのだ。実際に落しているのはこの村にはいないヨハンなのだが、目につく人間はエドヴァルトのみなのでそう判断したのも無理もない。

 

 ちなみにこのゴブリンキングこそがこの村を襲撃した張本人だ。

 

 「げへへ。他のザコどもならともかく、この俺様は倒せねえぞ!」


 ゴブリンキングは雷を落されながらも平然と進んでくる。『キング』と名乗るだけあってさすがに肉体的にも他のゴブリンとは一線を画している。


 千匹を超えるゴブリンを従えたこのゴブリンキングはいずれは『魔王』つまり魔族全体のキングになるという大望を抱いていた。人間の国を征服し、そこにいる人間の女を利用して配下を増やして自分の勢力をさらに拡大するつもりだった。


 今回の村の襲撃はそのための足がかりにするつもりだったのだ。


 今は千匹にすぎないが、それを何千、何万、、何十万、何百万に増やすつもりだった。非力なゴブリンでも数がいれば十分脅威になるのは魔法騎士団が逃げ出したことからもわかるようにその考えはあながち間違いではない。 


 ちなみにこのゴブリンキングの現在地は『魔王』直属の幹部『四将軍』のその下の『十六魔将』のその下の『三十人衆』(現在2つの空席あり)に何とか選ばれたいと日々奮闘しているところで、その道のりははるか遠いものだったが、夢を大きく持つのは悪い事ではない。


 実際、他のザコゴブリンが一撃で絶命している雷を何度も落とされながらもこたえた様子がないのでゴブリンにしては破格に強いのは間違いないのだろう。


 「貴様ぁ、よくもやってくれたなぁ!」


 「いや、ボクはこんな非常識なことはできないよ」


 目の前まで来たゴブリンキングに大斧を突き付けられたエドヴァルトだが、激昂しているゴブリンキングとは対照的に普通のテンションで返事をしている。


 実際、接近戦の戦闘能力ではゴブリンキングの方に分があるとエドヴァルトもわかっているが、あまりにも身も蓋もない感じで全滅させられているので恐怖を抱かなくなっているのだ。


 (とりあえずこれはボクのせいじゃないしなあ)と変なところで正論をいう癖がでている。


 しかし、ゴブリンキングは自分が聞いたくせにエドヴァルトの返事に聞く耳を持たないで大斧を振り上げる!


 「貴様を殺してこの雷をとめてくれるわぁ!!」


 「違うって言うのに!」


 エドヴァルトがさすがに焦って剣を構えなおす。




                     * 


 その頃ヨハンがいる町ではミカヅチがブツブツ言っていた。


 「おっ、なんかしぶといのがおるのう。なかなか死なんな…こいつ。このっ、この!え~い、さっさと死なんかいっ!」


                      *

 

 ミカヅチの「さっさと死なんかいっ!」と共にその身体を包み込むほどの特大の雷がゴブリンキングに落ちる! 


 「がっ…」


 口から煙を吐きながらゴブリンキングがピクピクと地面に倒れ伏す。どうみても瀕死なのでほおっておいても間違いなく死ぬだろうがエドヴァルトは「まっ、一応ね」と冷静に喉を切り裂いて絶命させる。


 漁夫の利っぽくもあるが、相当生命力が高そうなので確実に殺しておく必要があると思ったのだ。


 (これでだいたい大丈夫だろう)とエドヴァルトが一息ついたところで声をかけられる。


 「これは…エドヴァルト様がされたのですか?」


 いつの間に来ていたのか、マリオンが見渡すかぎりに倒れ伏しているゴブリンたちの死体を驚愕した表情で目を見開いている。


 この好奇心がありすぎるシスターは無数の雷が村に落ちだした時に、居ても立っても居られないで(駐留兵たちにはかなり止められたが)ここまで様子を見にきたのだ。


 「まさか。やったのはボクの上司の騎士長だよ」


 「この村に来られたのですか?」


 (どんなに急いでも間に合うはずがない)とても信じられないといったマリオンに、


 「いや、騎士長は、魔法騎士たちが援軍を呼びに行った町にいながらこれをしてるんだよ」


 「えっ?!援軍を呼びに行った町にいながら?どういうことですか?そっ、そんなの…」


 マリオンは魔法の知識があるのでこれがどんなに非常識な事か理解して絶句している。


 (そりゃあ、驚くよなあ。どう考えても人間技じゃないからな)


 エドヴァルトはヨハンが本気を出したがらない理由がよくわかる。やっている事がすごすぎて、称賛されるよりは恐れを抱かれる事が多いのだ。


 強すぎる力は時に排除の対象になる。特に神レベルの行いをすると、宗教家たちは「神の奇跡を冒とくしている!」と無茶苦茶な理屈をたてて攻撃してくる事が多々ある。


 (そういえばこの子もシスターだったよな。大丈夫かな…)


 エドヴァルトが打ち震えているマリオンの顔を恐る恐る覗き込むと、マリオンはばっと顔を上げる。


 「神、まさに神!これは神の所業ですわ!わたくし新たな神を得ました!精霊騎士長様という神です!」


 感激のあまり涙を流しながら祈りのポーズをするマリオン。


 (そっちかよ!やっぱこのシスターちょっとズレてるなあ。だけど…)


 「創世母神のシスターが他の神を信じても大丈夫なのか?」


 エドヴァルトは思わず余計な心配をしてしまう。どうもこのシスターはあぶなかっしいところがあるのでほおっておけないらしい。


 そんなエドヴァルトの心配をよそに、


 「大丈夫です!わが母神様はが心が広いですから!両方信じても大丈夫なはずです!」


 (他の神を信仰するのを許すのはさすがに寛大すぎるだろ…)


 自分を祀っている聖堂を壊されたり、他の神を信じてもよかったり、とマリオンの思う創世母神は少し心が広すぎるようだ。


 こうしてヨハンは自分の知らないところで神になるのだった。

主人公、登場しない間に神になりました。次回はしっかり登場します。

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