25 運搬
新連載、開始しました!
『お菓子な魔女の領地開拓』
お菓子で領地を開拓し、世界を幸せにする、ほのぼの無双!
あとがきの下に、小説へのリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!
ヘルロウは、亡者たちに石材を切り出しさせると、次は石の運搬方法を教える。
「よし、じゃあ次は石の運び方だ。いつもはリアカヤックに積んで目的地に運んでいたが、今回はリアカヤックなしの方法を教える」
ヘルロウはあらかじめ準備していた、長い丸棒と、葛で創ったロープを取り出す。
まずは、ロープを手早く交差させ、目の粗い網のようなものを創り上げる。
さらに、その網の両端を、別のロープで結びつけ、棒からハンモックのように吊り下げた。
そうしてできあがったものに、さっそくピンキーが食いつく。
「わあっ、なにこれなにこれっ!?」
「これはな、『もっこ』だ……!」
【もっこ】 道具レベル:2
長い木の棒に、網を吊したもの。
「もっこ!? どうやって使うの!?」
「じゃあ、さっそく試しに使ってみるか」
ヘルロウはゴルバに頼んで、切り出したばかりの岩を、網の中に入れてもらった。
怪力のゴルバにとっては軽々とだったが、ヘルロウや亡者にとっては押しつぶされそうな大岩である。
ヘルロウはふたりの信者に、岩の入った網の棒を担ぐように指示する。
すると亡者たちばかりか、鬼たちまでもが驚いた。
「ええっ、そんなの無茶だよ、ヘルロウ君!」
「そうどす! ゴルバにとっては軽い石でも、たったふたりの亡者に持たせるやなんて、いけずにも程がありますえ!」
「ふぅ、いくら栄養で強化されたとはいえ、そんな重い物を担いだら、肩の骨を折ってしまうでしょうね。試してみるまでもないことです」
「そんな無理難題を押しつけるなど、地獄の責苦と変わらぬでござる! ヘルロウ様が亡者のことを気遣っているなど、やっぱり早合点でござったか!」
「だーっ!? ヘルロウは鬼なのだーっ!」
しかし批判にさらされても、ヘルロウは暴君のような余裕を崩さない。
「いーからやってみろって。大丈夫、骨は折れたりしないから」
そこまで言われては、亡者としては命令に従わざるをえない。
彼らは嫌々ながらも棒を持ち上げ、しゃがみこんで肩の上に置いた。
そして、断頭台かけられているかのように、きつく目を閉じ……。
せーので立ち上がると……。
……ぐんっ……!
なんと、軽々と上がった……!
いままでは持ち上げようとするだけで肩が外れ、腰の骨までポッキリといっていた、大岩が……!
これには当人たちばかりでなく、鬼たちがいちばん仰天していた。
「えっ……!? ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
「うそうそうそっ!? なんでなんで、なんでっ!?」
「鬼でも重い岩を、いくらふたりがかりとはいえ、あんなに軽々と……!?」
「せ、拙者は夢でも見ているのでござるかっ!?」
「まさかあれだけの道具で、ゴルバと同じだけの力を亡者に与えるやなんて……! ヘルロウ様はやっぱり、どんでもないお人やわぁ……!」
大げさな反応かもしれないが、無理もない。
なにせこの世界で、重いものを持ち上げるためには、それ相応の力持ちを連れてくるか、たくさんの人を用意するか、魔法を使うのが一般的だったからだ。
城などの大きな建造物を建てる場合は、魔法は必須とされている。
しかしそのことに、疑問を持つ者はいなかった。
なぜならば魔法が使えるのは権力者だけなので、必然的に権力者だけが、石でできた大きな建物に住める。
魔法が使えない庶民は、吹けば飛ぶような、木造の小さな建物に住むしかない。
自分の地位と、住む家がピッタリ合致していたので、誰もが思考停止していたのだ。
ヘルロウはその風潮を、良しとしなかった。
「お前たち亡者は石を切り出せるようになったし、この『もっこ』があれば重い石も運べる。あとは石の積み方さえ覚えれば、魔法もなんにも使わずに、自分たちの力だけで、石の住居も創れるようになるぞ」
それは、にわかには信じがたいことであった。
なぜならばその言葉を現代に置き換えたら、『クリックして登録すれば、誰でも簡単に50万円の副収入』と言っているのも同然であったからだ。
鬼たちがへんなポップアップウインドウを見せられたような表情になってしまうのも、無理もなかろう。
「言葉で説明したところで、理解してもらえなさそうだな……。とにかく鬼も亡者も、ふたりでペアを作るんだ。そして『もっこ』を創って、岩を運んでくれ」
ピンキーはアローガと、ゴルバはミヅルと、ダーツエヴァーはストローと。
亡者たちはめいめいでペアを組み、『もっこ』を作って岩を運搬する。
すると、信じられないような声があちこちで起こった。
「わぁっ! 軽~いっ! いつもなら持てないような岩も、こんなに軽いだなんて!」
「ほんに、なにも持ってないみたいやわぁ」
「えばーっ! こんなに重いものを持ったのは、初めてなのだ! 力持ちになった気分なのだ!」
「ミヅル、押しつぶされている場合ではないでござる! 我らが一番のりを果たさなければ、亡者たちに示しがつかないでござる! 幼いダーツエヴァーとカカシのストローですら、息を合わせて岩を運んでいるというのに……! このままでは、ドンケツになってしまうでござる!」
「ふぅ、ゴルバが大きすぎるせいで、重さが全部こっちに傾いてくるんですよ。それ以前に小生は、ホワイトカラーなんです」
一部のペアを除いて、運搬は順調。
掘割のすぐそばに、あっという間に石材が積み上げられた。
亡者たちは重い岩を運んだという自信から、すっかり作業に前向きになっている。
非常にいい空気だったので、ヘルロウはそのまま次の作業へと移った。
「よし……じゃあ次は、いよいよ『石積み』だ。金持ちの家にしかないような立派な『石垣』を、お前たちの手で創るんだ……!」
まえがきにも書きましたが、新連載、開始しました!
『お菓子な魔女の領地開拓』
お菓子で領地を開拓し、世界を幸せにする、ほのぼの無双!
このあとがきの下に、小説へのリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!




