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ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第2章
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22 矯正施設

 ところ変わって、天国の『入国管理センター』。

 ここでは、天国に新たにやって来た者を審査するための施設である。


 同センターは、災害や戦争のあとが繁忙期となる。

 しかし最近は大きな災害や戦争はなかったというのに、職員たちは忙殺されっぱなしであった。


 ……その理由は、すでにご存じであろう。


 そう、地獄の賽の河原にいた子供たちが、一切合切……。

 ヘルロウの手によって、送りつけられていたから……!


 この時ばかりは、彼らも完全にオーバーフロー。

 落ちものパズルゲームの対戦でいえば、完全にオーバーキル状態。


 入国管理センターは多くの死者を扱うことがあるので、施設はかなり広大に作られている。

 普段はどれだけ多くの者が訪れても、大丈夫な設備と体制が整えられているのだが……。


 大挙として押し寄せた子供たちは、施設に収まることがなかった。

 行列は施設外に飛び出すどころか、街中まで席巻する始末。


 入国審査(イミグレーション)カウンターでは、休みの者まで駆り出されて、職員総出で対応せざるを得なかった。

 連日、24時間休まずに対応しても、行列は無限ループしているかのように終わりがなかった。


 なんと、ヘルロウが賽の河原で子供たちを送り出してから……。

 今の今までずっと、子供たちは行列をなしていたのだ……!


 子供たちからは特に不満はあがらなかった。

 なにせ、賽の河原で永遠ともいえる時間、石を積み続けてきたのだから。


 それに比べたら行列での待ち時間など、たとえ何年かかったところで、彼らにとってはまさに天国であったのだ。


 しかしそれも、ようやく終わりを告げる。


 げっそりとやつれた入国審査カウンターの職員が、



「次の方、どうぞ」



 と力なく手招きすると……。

 最後のひとりとなった少女が、元気いっぱいに走り寄ってくる。



「はいっ! 私の名前はドロエといいます!」



 ドロエは供養塔のキャップストーンを置く役割を果たしていたので、誰よりも先に天国に召されていたのだが……。

 どんくさい彼女は、後続の子供たちにあれよあれよという間に抜かされてしまい、列のいちばん最後になっていたのだ。


 しかしドロエはそんなことは慣れっこだったので、ぜんぜん気にしていない。

 希望に満ちた瞳をキラキラと輝かせながら、自己紹介を続ける。



「私は天使学校に入学して、天使になりたいです! そして、ヘルロウ君みたいに……!」



 職員は面倒くさそうにパタパタと手を振って、少女の言葉を打ち切った。



「あーはいはい。もういいですから、右側の通路に進んで」



「はいっ、ありがとうございます!」



 自分の前にいた子供たちもみな右側に進んでいたので、またみんなと一緒になれると、ドロエは喜び勇んでパタパタと駆けていく


 入国を許可された場合、入国審査カウンターの後ろにあるふたつの通路から、天国に入国することとなる。


 左側の通路を進むと、入国管理センターから出て、天国の街へと繰り出すことができる。

 いわば、そのまま天国に解き放っても、『問題なし』と判断された者である。


 しかし、右側はその逆。

 『問題あり』と判断された者の行先である。


 通路は『矯正施設』と呼ばれる建物に繋がっており、そこで天国で暮すにふさわしい性格となるように、再教育を施されるのだ。


 ちなみにではあるが、エンマ大王の裁きで送られてくる者に関しては、その審査も併せて行なわれている。

 なのでほとんどのケースの場合は、入国審査カウンターでは審査の必要はない。


 例外となるのは、エンマ大王の裁きを経由していない、特殊なケースで天国に送られてきた者である。


 たとえば、シャカの力によって、地獄から『救済』された亡者や、天使たちが遊び半分で地獄に糸を垂らして、それを這い上ってきた者などである。


 今回は『供養塔の完成』という、前代未聞のケースであった。

 そのため、最初のうちは厳正なる審査が行なわれていたのだが……。


 職員たちは途中で、考えることをやめてしまった。

 なにせ、子供たちはみな洗脳されてしまったかのように、同じことしか言わないのだ。



 「僕は、ヘルロウみたいに……!」

 「ヘルロウみたいに凄い……!」

 「ヘルロウみたいに、みんなを助ける……!」

 「目標とするのは、ヘルロウ……!」


 「ヘルロウ……!」


 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」

 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」

 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」

 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」

 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」 「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」「ヘルロウ」



「もう、ええっちゅーーーねん!!」



 などと半狂乱になって叫びだしてしまう職員がいたとしても、無理はなかろう。


 「ヘルロウ」はいまこの天国では、もっともホットなNGワードとされている。

 ディスるならともかく、少しでもリスペクトしようものなら、一発レッドカード。


 即、『矯正施設』行き……!


 しかしこれは、問題を少し先送りにしただけに過ぎなかった。


 なにせ賽の河原の子供たちを、みんな矯正施設送りにしてしまったせいで……。

 今度は矯正施設のほうが、パンク状態に陥ってしまったのだ……!


 莫大なる不良債権を押しつけられてしまったかのように、矯正施設の職員たちは、頭を抱えていた。



「いままでは一度にやって来るにしても、せいぜい数百人くらいだったのに……」



「な……何万人いるんだ!?」



「数える気も起きねぇよ! もう施設内はどこもかしこも、ガキでいっぱいだ!」



 そこに、彼らの上司である局長が戻ってきた。

 局長室までもを子供たちに占拠されているという有様に、彼が下した判断は……。



 私が参加していた『集会』でも、ヘルロウのことが問題になっていました。


 そこで『情操教育』の場が設けられることになったのですが、ちょうどいい。

 その『情操教育』に、この子供たちも参加させましょう。


 そうすれば、一気に清らかな思想を上書きすることができ……。

 この施設で、ひとりひとり子供たちを矯正する手間が省けます。


 かなりの人数増となってしまいますが、『情操教育』の施術(●●)は大規模であればあるほど、植え付けられる意識は強固なものとなるという、スケールメリットがあります。


 そのため、かえって喜んでくださることでしょう。


 『情操教育』の主催者である、あの(●●)方も……!

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[良い点] おー 今までで一番の 恩知らず がでてきましたか! 報いの末路が楽しみですね!(期待) これが今回の建築展開の仕込みなのでしょうかな!(期待) さて このバーコードハゲにチョビヒゲに小太り…
[気になる点] ヘルロウを天国から追放した際に、地獄側には 天国側から連絡は行われていたのでしょうか? [一言] ホットなNGワードとは、 なかなかのパワーワードですねw そして、天使たちが遊び半…
[一言] おい、ドロエ達を洗脳させたら承知しねえぞお前ら……
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