表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第2章
87/109

21 委員長の決断

「オーベルジーヌ先生……。私がいない間になにがあったのか、説明していただけますか?」



 委員長から問い詰められるオーベルジーヌ。


 相手は委員長とはいえ、一介の生徒。


 かたやオーベルジーヌは、この学校の風紀を司る、ベテラン教師だというのに……。

 ナスビのような顔を、お盆に串刺しにされた精霊馬のように歪めていた。


 そして、開口一番、



「めっ……メタトロン君! アテクシは何も悪くないザマス! 悪いのはフローズさんにフレイルさん……! いいえ、なにもかもヘルロウが悪いんざます!」



 メタトロンと呼ばれた少年は、いつもうっすらとした後光をまとっている。

 彼の表情は菩薩のように穏やかであったが、その光だけが取調室のデスクライトのように、



 ……カッ!



 と目も眩むような輝きで、女教師に向けられた。


 「ううっ!?」と怯んでしまうオーベルジーヌ。


 メタトロンの声は、頭の中に直接響いているかのようであった。



 ……オーベルジーヌ先生。

 あなたはかつて、百貨店で下着を購入しましたよね。


 すでに天国では禁忌とされている、『悪魔のブラ』を。


 そしてそれを店員に頼んで、ある住所に送らせましたよね。

 ユズリハ先生の、家に……。


 オーベルジーヌ先生の自宅に配送しては、百貨店の配達記録で足がついてしまうことがある……。

 だからそれを防ぐために、ユズリハ先生を利用した……。


 配送日の当日、オーベルジーヌ先生は、ユズリハ先生の家に張り込んで……。

 荷物を受け取った瞬間を、押えたのでしょう。


 ユズリハ先生が受け取った荷物を無理やり開けさせて、中から出てきた『悪魔ブラ』で、ユズリハ先生を脅迫する……。


 それに『悪魔のブラ』は自分が処分するといって奪ってしまえば……。

 『悪魔のブラ』を安全に手に入れられたうえに……。


 いざとなったら、自分が犯した罪を、すべてユズリハ先生になすりつけることができる……。


 現にあなたは、『美魔天使コンテスト』で『悪魔のブラ』の着用がバレてしまった時……。

 ユズリハ先生に脅迫されて、無理やり着けさせられたものだと供述しましたよね。


 ユズリハ先生は、もちろん否定していましたが……。

 その時に、私が口添えしてさしあげたので、オーベルジーヌ先生は無罪放免となった……。


 でも、勘違いしないでください。

 私はオーベルジーヌ先生を、助けようとしたわけではありません。


 このクラスを劣等たらしめていた、ヘルロウに続き……。

 ユズリハ先生をも、追放するためだったのです。


 ……この意味が、わかりますか?


 私が、この事実を公表すれば……。

 オーベルジーヌ先生が、どうなってしまうのか……。



「もっ……もちろんザマスっ! だっ、だからこうして、このクラスの担任も引き受けたんザマスっ!」



 そこまでわかっているのであれば……。

 私に対して『言い訳』が無意味であることも、わかっているでしょう?


 私がオーベルジーヌ先生に求めているのは、『誰が悪いのか』ではありません。

 『還りの会』と同じで、『純然たる事実』です。


 『誰が悪いのか』を判断するのは……。

 委員長である、私の責務です。



 オーベルジーヌは脂汗をしとどに垂らしながら、しどろもどろに説明をはじめた。

 クラスが崩壊に至るまでの、その一部始終を。


 フローズは、クラスの『美観』をひとりで背負ったプレッシャーで、心労がたたって入院中。


 フレイルは、フローズが入院したあとも、例の髪切りイジメを続けていた。

 フローズがいなくなったことをいいことに、今度はギャルグループではない女子にまで魔の手を伸ばしていた。


 当初の目的である『美観の回復』ではなくなり、フレイルは完全にウサ晴らしのために、女子たちの髪の毛を切っていたのだ。


 フレイルの手にしていたハサミが、バリカンに変わるまで、そう時間はかからなかった。

 それが、ダメ押しとなる。


 クラスでは大人しい文学女子が、坊主にされてしまったショックで不登校に。

 さらにフレイルの取り巻きたちまでもが坊主にされてしまい、ついに……!



「うちらは一生懸命フレイルに尽くしてきたのに、フレイルはぜんぜんうちらのことをわかってくれない! それに、この仕打ち……! うちはもう、外を歩けねぇよっ! もう我慢できねぇっ! お前も同じようにしてやるよっ!!」



 蜂起した取り巻きのひとりが、フレイルからバリカンを奪い取り……!



 ……ジャキィィィィーーーーーーンッ!!



 赤い巻き毛を、バッサリと……!



「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ! あーしの命の次に大切な髪に、なにしてくれてんだよっ!? あーしのサルマネしかできねぇ雑魚のクセして、調子乗ってんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」



 激昂したフレイルは、最悪の行動に出る。

 ポケットから取り出したハサミで……。



 ……グサァァァァァーーーーーーッツ!!



 天使中学始まって以来の、刃傷沙汰を引き起こしてしまったのだ……!


 すべてを聞きおえたメタトロンは、表情ひとつ変えずに頷いた。

 そしてまたの声を、響かせる。



 ……わかりました。


 オーベルジーヌ先生への処分は、いったん保留としましょう。

 それよりも、このクラスを建て直すことが先決です。


 私が想像していた以上に、ヘルロウの爪痕は大きいようですね。


 となれば、このクラスには、もう一度(●●●●)……。

 『情操教育』を施す必要があるでしょう。


 先日、私が参加していた『集会』においても……。

 ヘルロウが要因による、『情操教育』の場が設けられることに決定いたしました。


 ちょうどよいので、一緒に教育(●●)することにしましょう。

 施術(●●)は大規模であればあるほど、植え付けられる意識は強固なものとなりますから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
人生をガチャに賭けたら、嫁も、飯も、家も、チートスキルも手に入れました
ガチャを引いたら、女子高生が家に来た…! そんなお話です!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] んーフレイルあれだけ後悔していたのに続けていたのが気になるな。堕天するためにわざとやったのかなと思ったけど考えすぎかな?
[良い点] なるほど 委員長ことメタトロン 情操教育という洗脳をしますかな!(汗) フローズがヘルロウを見捨てたのは その影響でしょうかな! そうなると現在の状況は その情操教育をしたせいとなれば さ…
[一言] なぁるほど……ユズリハを嵌めて追放したんだ…… オーベルジーヌ……メタトロン………… それと情操教育って何?ロクなもんじゃないですけど?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ