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ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第2章
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14 熱視線

「なんだ、アローガはピンキーやミズルとお揃いの水着が良かったのか。ならウサギをたくさん狩って毛皮を手に入れてくるんだな。そうすれば、ピンキーやミズルの水着もウサギの毛皮になって、お揃いにできるぞ」



 ヘルロウはそうやって、アローガをなぐさめるついでにやる気を出させようとしていた。

 しかしそれは火に油どころか、ニトロを注ぐような愚行であった。



「うっ……うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!!!」



 とうとうアローガは爆発したように泣き叫んだ。

 崩れ落ちるばかりか、地面を転げ回り、全身でイヤイヤを始めてしまった。



「な、何が気に入らないっていうんだよ……!? いったい、どうすりゃいいんだ!?」



 ヘルロウは大きな駄々っ子を前に、新人パパのように困惑しきり。

 ピンキーは、子育てをしてこなかった夫を見る妻のように、ジト目であった。



「……ずっと思ってたんだけど、ヘルロウ君って、どっかおかしいよね」



「な、なんだよそれっ!?」



「私への初プレゼントも水着だったし、しかもサイズがピッタリだったし」



「それのどこがいけないんだよ!?」



 すると、他の鬼たちも話に加わってきた。



「そういえば、小生のパンツもシンデレラフィットでした。特に股間のあたりが」



「だからそれのどこがダメなんだって!?」



「だーっ!? そんなこともわからないだなんて、ヘルロウはへっぽこなのだ!」



「ダーツエヴァーまで、俺がおかしいっていうのか!?」



「そういえば……! 最近ヘルロウ様の視線を感じるでござる! 特に股間のあたりに……!」



「股間って、見ちゃいけないものなのかよ!? 普通、他人の股間がどうなってるか、気になるもんだろう!?」



 鬼たちはずっと感じていた。

 ヘルロウの倫理観が、かなり独特であることを。


 しかし、まさかここまでとは……!


 鬼たちは処置無しとばかりに、「あちゃあ……」と手で顔を覆ってしまった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 アローガの機嫌が直るまでは、それから数日を要した。

 ヘルロウは、なるべくアローガの身体を見ないようにするという、見当違いの対応をして、さらに鬼たちを呆れさせたりもしたが……。


 なんにしても、ヘルロウはようやくアローガと口をきいてもらえるようになった。


 鬼たちが勢揃いするなかで、ヘルロウはアローガと向き合うと、改まった態度で切り出した。



「いろいろ悪かったな、アローガ。これからは亡者だけでなく、お前たち鬼の気持ちも理解できるよう、努力するよ」



「もういいんどすえ。うちもつい取り乱してしまって、はしたない姿をお見せしてしまったんどすから」



「そうか。じゃあ仲直りってことで、さっそく頼まれてくれるか? お前に、『狩猟班』の班長になってほしいんだ」



「『狩猟班』、どすか……?」



「ああ。今この村は、『農耕班』『漁猟班』『家事班』『拡張班』の4つの班に分かれて仕事をしてるよな。そこに新たに、肉や毛皮を手に入れるための『狩猟班』を作りたいんだ」



「この前したように、ウサギを狩るんどすな」



「その通りだ。お前はこの村いちばんの弓使いだし、それに矢は木の武器だから、お前の獄技(インフル)を使えばいくらでも出せる。これ以上ないくらいの適任なんだ、やってくれるか?」



「もちろん。ヘルロウ様の頼みなら、断るいわれはあらしまへん。でも、うちからもお願いがあるんどす」



「なんだ?」



「うちのことを、もっと見てほしいんどす」



「へっ? 見ちゃダメなんじゃなかったのかよ?」



「そんなことはあらしまへん。うちのことを、もっといっぱい、それこそ四六時中、ジロジロ見てほしいんどす」



「なんだかよくわからんが、見ていいんだったらそうするよ。実は鬼の身体にはずっと興味があって、どんな風になってるのか気になってしょうがなかったんだ。それじゃ、さっそく……って、いててててててて! なにすんだよ、ピンキーっ!?」



「なに胸に顔を近づけて凝視してるの!? いやらしい!」



「本人がいいって言ったんだぞ!?」



「見ていいからって、そこまで見ていいわけないでしょ! それに最近のヘルロウ君って、失礼だわ! 私のこともぜんぜん見てくれないんだもん!」



「そういえば、小生への熱視線も、最近では激減していますね」



「拙者も、主に目をかけてもらえいないようで、寂しいでござる!」



「だーっ! ヘルロウは、わたしたちのことをもっとよく見るのだ!」



「お前ら、この前と言ってることが全然違うじゃねーか!? 人のことへっぽこだとか言っといて!」



「ずっと見られてきてたのに、急に見てもらえなくなっちゃったから、なんとなく嫌になって……」



「はあっ!? なんだよそれっ!?」



「と……とにかく! これからヘルロウ君は、そこそこ私たち鬼を見ること! でも、あんまり見ちゃダメだからね!? わかった!?」



 ピンキーがぴしゃりと言いつけると、鬼たちは一斉に「さんせーい!」と手を挙げた。



「いったいぜんたい、どいうことなんだよっ!?」



 ヘルロウは混乱した。

 『見てもいいけど、見てはダメ』などと言われたたことなど、これまでになかったことだからだ。


 どんな難題に直面しても余裕だったはずの少年が、習ったことのない計算問題を解かされているかのように、頭をかきむしる。


 テストの最中、まわりがカリカリとペンを走らせるなか、ひとりだけ取り残されたように頭を抱えるヘルロウ。


 しかしこれは、彼だけの問題ではなかった。

 鬼たちの、そして『ヘルロウ村』だけの問題でもなかった。


 なんと……!

 この問題(●●)は、彼が想像すらしなかった場所にも、影響を及ぼしていたのだ……!


 じわじわ、じわじわと……!



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



「そういえばさぁ、このまえ堕天したヘルロウって、あたしのことジロジロ見ててキモかったんだよね。もしかしてあたしに気があったのかね? まぁあんな落ちこぼれ、土下座されたってお断りだけどね」



「そりゃ、アンタだけじゃないし。あいつ、みんなことジロジロ見てたし」



「うわぁ、キモっ。堕天してせいせいしたし」



「って、ちょっとぉ! あたしの肩にホコリが付いてるっしょ!?」



「それがどうしたん?」



「ホコリが付いてると、『美観』で減点だって知ってるっしょ!? なんで教えてくれなかったっしょ!?」



「知るかよそんなの。そんなのわざわざ教えるのって、あの変態のヘルロウくらいのもんだし」



「あいつ、自分はひどい格好でクラスの『美観』をひとりで落としてたクセに、人のホコリとかには目ざとかったよね」



「そーそー! あいつ、あたしが1センチ髪切ったのにも気付いてたし! カレシですら気付かなかったのに!」



「うわぁ、マジキモい! やっぱあんなヤツ、堕天させて正解だったし!」

次回から、プチ天国ざまぁです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次回 久々のざまぁ!(大喜) プチっとしますか!(ニヤリ) [気になる点] とりあえずミスコンの時くらいの プチざまぁレベルでしょうかな?(ニヤリ) ヘルロウに注意されなくなったことで い…
[良い点] 好意とかストーカー的観点と全く無関係な視点で周囲を具に観察するヘルロウの関心は何処にあるのか? そして天国でのプチざまぁ…楽しみです(*´∀`)♪
[気になる点] 「熱視線」を読み返して、気になる所があったので投稿させていただきます。 今回、アローガは、「狩猟班」の班長になりましたが、他の班の班長は誰がやるのでしょうか(アローガ以外の鬼か、又は、…
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