表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第1章
62/109

62 ダメ天使の末路4

 ダメルシアンはとある街にある川岸で、ひとり途方に暮れていた。

 いつもならば姿を見かけるだけで寄ってきて、チヤホヤしてくれる人間は、まるで路傍の石であるかのように気にも止めない。


 彼が、石ころから天使に復帰する方法はただひとつ。


 人間ども、あっと驚かせ……。

 安価でこき使ったことを猛省し、上乗せの神饌(しんせん)を積み上げて土下座し……。


 永年に渡って祭り上げてくれるほどの、立派な橋をかけること……!


 しかしそれができるのであれば、苦労はしていない。

 そもそもダメルシアンは、橋など掛けたことがなかった。


 人間どもをアゴでこき使って、丸太ともいえぬ木を横倒しにしたことはあるが……。


 それどころか、クラフトひとつ満足にやったことがなかった。

 しかし派手な演出や付加価値を考え出すことは得意だったので、その一点でのしあがってきた。


 たとえただの木であったとしても、人間たちの憧れであるユグドラシルだとうそぶいてやれば、みんな泣いて感謝してくれた。


 そのハッタリも、もう通用しない。

 なにせ自分ひとりで何からなにまでやらなくてはならないからだ。


 彼はためしに、そのあたりにある適当な木を切り倒して、川に掛けることを思いついた。

 ノコギリを調達して、見よう見まねで、川岸にある木をギコギコとやってみたのだが……。


 表面に傷をつけたくらいで、5分経たないうちに、へばってしまった……!


 無理もない。

 木を切り倒すというのは、簡単そうに見えて、かなりの重労働である。


 それに彼は天使とはいえ、『創造天使』である。


 木を真っ二つにする剣技も、魔力も持ち合わせてはいない。

 身体能力については人間よりもあるが、ようはそれだけ……!


 彼はとうとうヤケになって、ノコギリを放り出して地団駄を踏み始める。



「もう、なんで僕がこんなことをしなくちゃならないんだっ! こんなことは人間のやることだ! 僕は天使なんだ! こんなことをやらせるなっ! おいっ、そこのお前! 跪けっ! もてはやせっ! 僕は偉大なる天使様なんだぞっ!! うがぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」



 酔っ払いのように人間に絡むその姿は、まさに天使の恥さらしであった。


 そして実をいうとこの時、彼は堕天までツーアウトの状態に追い込まれていた。


 彼は『還りの会』において、主神である『ヘパイストス』の名に誓っておきながら、ウソをついた。

 さらに『創造天使』でありながら、橋ひとつ満足に掛けられない醜態を、地上で絶賛公開中……。


 事態を重くみた『ヘパイストス派』の天使たちは、主神であるヘパイストスにダメルシアンの除名を提言した。

 彼を野放しにしておけば、ヘパイストス様まで笑い物になってしまうと。


 ヘパイストスはそれを了承、本来であるならば、ダメルシアンはとっくに堕天をしていなければおかしいのだが……。

 その決定に異論を唱えた者がいた。


 それは、天候神である『デメテル』。

 デメテルはレインコションの主神。


 ダメルシアンは、レインコションにまだ40億(エンダー)の借金がある。


 いま堕天されてしまっては、取りっぱぐれになってしまう。

 借金を返さずに逃げようったって、そうはいかない……!


 と待ったをかけたのだ。


 デメテルにとって、これにはふたつのメリットがあった。


 まずひとつめは、40億(エンダー)の獲得。

 手に入れるのはレインコションだが、『天使のものは神のもの』がこの世界の原則である。


 そしてふたつ目に、他の『創造神』に恩を売ることができる。

 ダメルシアンが地上で醜態を晒せば晒すほど、ヘパイストスの顔に泥が上塗りされていく。


 そうなればライバル神たちは、蹴落とせるチャンスができたと大喜び……!

 特にヘパイストスと仲が悪かったダイダロスなどは、全力でデメテルを支持した。


 他の神の異論がある以上、そしてその理由が『借金の返済』という正当な事由である以上、堕天を強行するわけにはいかなくなってしまった。


 よって、ダメルシアンはツーアウトのまま、放置……!

 場合によっては、スリーアウトでも、フォーアウトでも、放置……!


 彼は知らず知らずのうちに、地獄のバッターボックスから出られなくさせられていたのだ……!


 自力で橋を掛けることを断念したダメルシアンは、他の天使たちに協力を要請した。

 しかし巻き込まれてはたまらないと、誰ひとりとして助けてはくれなかった。


 彼としてはランクを落として、そのへんに歩いている人間を捕まえて、作業させようとしたのだが……。


 逃げられるっ……!

 蜘蛛の子のように……!


 橋を掛ける作業は、夏休みの宿題ばりに全く進まない。

 しかし早くこれを片付けなければ、人間どもを見返すこともできない。


 彼は手柄を焦るあまり、とんでもないことをしでかしてしまう。


 なんと……!

 夜の間に、隣街に架かっている、他の木橋に手をつけ……!


 バラバラに解体して、それを盗もうとしたのだ……!


 しかし前述のとおり、彼は机と椅子ですら組み立てられなかった。

 そんな不器用天使が、橋など組み直せるわけがなく……!


 いやそれ以前に、きちんと解体できるはずもなく……!


 結果、隣街の橋を破壊してしまっただけという、最悪の結果に終わってしまった……!


 これにはとうとう、人間たちもキレてしまった。



「おいっ! ふざけんなよっ!?」



「なんで橋を架けにきといて、橋を壊してんだよっ!?」



「しかも夜中にこっそり盗もうだなんて、天使のすることかっ!?」



「ずっと思ってたんだ! コイツは何にもできねぇ天使だって!」



「もう我慢ならねぇ! お前みたいなヤツ、天使じゃねぇ! 悪魔だっ!」



「たとえ作ったものが呪われてたとしても、それまでは役に立ってたヘルロウのほうが、よっぽどマシだっ!」



「お前なんか誰が敬うかっ! 出てけっ! この街から出てけぇーーーーーっ!!」



 人々はダメルシアンに向かって、石を投げつけた。



「うっ!? な、なにをするんだっ!? 僕は天使だぞ!? 天使にこんなことをして、ただですむと思っているのか!? 天罰だ! 天罰が下るぞっ!!」



 しかし、そうはならなかった。


 天使への暴行というのは本来は大罪であるが……。

 本来は後ろ盾であるはずの『ヘパイストス派』の者たちは、すでに彼を見放していたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
人生をガチャに賭けたら、嫁も、飯も、家も、チートスキルも手に入れました
ガチャを引いたら、女子高生が家に来た…! そんなお話です!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 神の世界でも派閥争いは盛んなようですねぇ……反社会的勢力の攻めぎ合いと見分けつかないところが逆に親近感湧きますw  ダメルシアンの駄目っぷりは、例え天使でも創意工夫を常日頃継続しないと無…
[良い点] ダメルシアンが堕天されない理由がわかってスッキリしました(神々のいろんな思惑が絡んでいたわけね。)。 ダメルシアンの件がキッカケで、天国に何らかの変化が生じるといいのですが…。 [気になる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ