53 滅亡
ついに、ついに、ついに……!
ついに、開け放たれてしまった……!
地獄の釜蓋が、禁断の扉が……!
ルシエロ滅亡への門が、開闢してしまった……!!
……ドッ……!!
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!
大砲のような咆号とともに、水門が弾け飛ぶ。
解き放たれた悪霊のような水が、レーザーのように闇夜を切り裂く。
月明かりを受け、不気味に光る水色の魔物たちが、我先にと飛び出し、雪崩落ちていく。
その勢いはすさまじく、山をも動かすほどであった。
……ドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!!
大地が震撼し、大気までもが鳴動する。
……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!!
濁流は山の傾斜の勢いを得て、ひとつの川から沸騰せんばかりの勢いを持って進軍する。
ついには溢れ出したが、その勢いは止まらない。
木をなぎ倒し、岩をも押し流して、行く手にあるものをすべて虐殺するかのように驀進していく。
そのめざましい威力に、ブリッヂレイカーは背筋をよじらせて嘲笑った。
「ハハハハハハハハハハ! 見よ! この力を! 大自然をも蹂躙し、薙ぎ払う力を! これが、これこそが天使様の……! そして、私の力なのだ! さあ行けっ! 天使の洪水よっ! 悪魔の棲む地を一掃するのだっ! そして見ているか、悪魔どもよ! これが貴様らの選んだ未来……!! この私に刃向かった者が辿る、破滅の道なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!! ハッハッハッハッハッ!! ハァーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハッハァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
……彼は、大いなる勘違いをしていた。
ヘルロウのクラフトによって貯めた水を、天使の力だと……。
いいや、すでに自分の力であるかのように、錯覚していた。
しかし……そんなものは、小者の見る夢……。
これから起こる大事の前には、些細なことにすぎない。
それでは、大いなる勘違いというのは、何なんだろうか?
それは……!
「ハッハッハッハッハッハッ!! ハァァァァァァァァァァァァッハッハッ!! ハアッ!? ハァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」
どうやら、彼自身もようやく気付いたようだ。
破壊した水門、そして、流れ落ちゆく川……。
天使のような、荘厳さと美しさで放たれ……。
悪魔のような、邪悪さと醜さに変貌した……。
濁流の、行く先をっ……!!
……ズドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォーーーーーッ!!!!
「おいっ……!? おいっ!? そっちじゃない! そっちは私の領地……! 天使様のご加護のある領地だぞっ!? お前たちが行くのは、悪魔の領地だっ!! ああっ!? 行くなっ……!! 行くな行くな行くな行くな行くなっ……!! 行くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
彼の、大いなる『勘違い』それは……。
小さなひとつの誤算と、大きなひとつの誤算から成り立っていた。
まず、小さな誤算。
それは、暗闇で見えなかったので、川の行先を事前に確認できなかったこと。
そして……もうひとつの誤算は、彼の思い違い。
『ブリッヂメイカーは、自分たちの領地を守るためだけに、水門を創ったのだろう』という、大いなる誤解……!
だから、水門であれば、どこを破壊しても結果は同じだと思っていた。
だが、違う……! 違うのだ……!
ブリッヂメイカーは、地獄でクラフトを教わったとき、ヘルロウにこう尋ねていた。
「あ、あの、ヘルロウ様……! このヘルロウ様のクラフトをした場合……。ブリッヂレイカーの……ワシの息子の領地は、どうなるんですじゃ……!?」
その問いに、ヘルロウは……。
「ああ、そんなことか。それはな、水門の原理を考えればわかるだろう。水ってのは、大きく開いているところに向かって、より多く流れていくもんだ。だからブリッヂレイカーのほうに流れていく川に水門がなければ、水はそっちに行くだろうな」
そして少年は、さらにこう告げていた。
「5つある川の源流の、どこに水門を創るかは……。お前次第だ、ブリッヂメイカー」
そう……!
ブリッヂメイカーは、息子の領地も洪水被害から救うために……!
5つの源流すべてに、水門を設けていたのだ……!!
息子はそれを、破壊してしまった……!!
よりにもよって、自分の領地に繋がる水門を……!!
「あああああっ!? あああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!? やめろやめろやめろやめろやめろっ!! 行くな行くな行くな行くなっ!! 行くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
彼は虚空を掻きむしりながら、原始人部隊のいる広場に向かっていく、怒濤の波濤を呼び戻す。
しかし、あの水は奇跡によって生まれたものではない。
天使の力を示すものでも、悪魔の力に染まったものでも……。
ましてや、彼が操るものでは、決してなかった……!
ただの、自然災害……!
いいや、完全なる、人為的災害……!
しかも、因果応報の……!!
……ドゴッ!!
シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!
オレンジ色の光が、高波によって覆い尽くされる。
原始人たちの土地は、瞬時にして濁流に沈んでしまった。
奔流の音だけが、こだまのように返ってくる。
しかし彼は、たしかに耳にしていた。
轟音にまざる、生きたままミキサーに掛けられるような、悲鳴を……!
「うわああああっ!? 水がっ!? 水があぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?!?」
「なんでっ!? なんで急に川が氾濫したんだっ!? うぎゃああああああーーーーーっ!?!?」
「いやああああっ!? 助けて! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
「俺たちにはダメルシアン様がついてるはずなのに!? ブリッヂレイカー様がついているはずなのにっ!? ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!」
「ブリッヂレイカー様っ! ダメルシアン様っ!! どうか私たちを、お助けくださいっ!! どうかどうか、どうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
数えきれぬほどの、絶叫が、絶望が、絶涙が……!
おびただしい数の、哀願が、哀訴が、哀愁が……!
彼の鼓膜に齧り付き、いつまでもいつまでも離れなかった……!!
今回のお話でモチベーションを放出してしまったので、ここで少しだけお休みをいただきます。
応援していただけるとやる気が出て、再開が早くなると思いますので、応援していただけると嬉しいです!
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