第8話 避けては通れない
グレイがこの世界に来てからもう二年が経とうとしていた。セツシート大学での授業も慣れてきてアルバートたちともかなり仲を深められている。
「進級試験は実技試験も入るからそのことも視野に入れておくように。以上」
「起立、礼」
級長の言葉に全員が反応し、さようならと言う。
「実技試験か……」
「アルバートどうしてそんなに落ち込んでるんだ?」
「筆記試験だったらなんとかなりそうだけど実技となるとちょっと……」
「そうよねー。私も実技試験って聞くとなんか自信がなくなるわ」
アルバートが言った内容に激しく同意をしたのはローズだ。確かにグレイも実技試験と聞くと少しだけ怖くなることがある。
「筆記試験なら対策できるんですけど実技ってなるとね」
「その時の判断力が大事になってくるようなものだから大変なんですよね」
ジェイミーとフィオナも実技試験はあまり乗り気ではないようだ。でも実技試験だとしてもこれまでに習ってきたことを復習するだけだろう。すごく難しいということにはならないはずだ。
「何とかなりますよ」
「そういうものですか?」
グレイの言葉に疑問を持ったジェイミーが首を傾げて聞いてきた。
「そういうものだな」
そうグレイはジェイミーに返答する。
「では、始め!」
グレイは前に立つ試験官の合図とともに試験問題の紙をめくる。セツシート大学での特待生というのは常に成績が上位でいなければならない。そのため筆記試験も馬鹿にできないのだ。
特待生は自分の家を持てることは勿論、食堂の料金無料や一部授業の免除がある。一部授業とはグレイの場合、選択科目である魔法の実技などのことだ。入学試験でグレイたちは魔法部門で特待生を取ったため、魔法学の授業は免除になった。
そして気になる試験問題はすごく難しいとわけではない。入試と同じくらいの難易度のテスト問題で普通にみんなと同じように授業を受けていれば点数が取れる。
「試験問題を裏返して前に流して下さい」
そうこうしているうちに試験が終わった。セツシート大学のテストは前世や入試の時とは違って全教科一体型のテストなのだ。そのためテスト時間は二時間と長い。
「兄さんどうでした?」
「まあ今回も大丈夫だ」
テストが終わり伸びをしているとフィオナが聞いてきた。それに対してグレイが答えるとアルバートがやって来てこう言った。
「そんなのんびりしていられるのは、グレイとフィオナだけだよ」
「あとあれじゃない?メジロさんも」
「あぁ、メジロさんね。あの人どうなってるのかしらね」
「目白さん!?」
グレイは聞き覚えのある名前に過剰に反応してしまった。
「そうよ。剣技部門で特待生になった秀才。それがメジロさん」
ローズが軽くメジロさんについて話してくれた。テストでは、ほとんどいつも満点を取り剣技もすごいと言う。
でもあの目白さんがこの世界に来るはずがないし、おそらく人違いなのだろう。目白さんではなくメジロさんか。
「毎授業後に復習してるんじゃないか?」
グレイの言葉にローズたちは、なるほどねと頷く。実際、秀才だった目白さんも毎授業とまではいかないが毎日復習は欠かさなかったしな。
アルバートが次の試験を思い出し憂鬱になり喋り出した。
「次は問題の実技試験か……」
「まあお互い頑張りましょうね」
「実技試験、魔法部門は二人一組での挑戦となります。ペアが組めたものから前に並ぶように」
試験概要を説明しているアナウンスに会場はざわついた。そんな中、グレイは真っ先にペアの相手を決めそこに向かう。
「やっぱりフィオナしかいないな」
「私も兄さんしかいません」
グレイたちはペアを決めると即座に前へ並びに行った。どうやら前ではくじ引きをしているようだ。
「フィオナが引いてきていいぞ」
「兄さんは引かないんですか?」
「俺はいいよ」
こう言う時のくじ引きの運はグレイはゼロに等しい。前世の席替えくじ引きだってほとんどの確率でアリーナ席に当たっていた。
そのせいで周りの友達のみならず学校全員から一時期『キラー7』とも言われていたほどだ。由来はアリーナ席をほとんどの確率で狙い撃ちキラーしてくれるという意味を込めて出席番号七番ということらしい。本当にくだらないことに地味にカッコいい名前を付けたなと当時は思っていたものだ。
「三番のダンジョンです」
と、昔のことを思い出し懐かしんでいるとフィオナがくじ引きを終わらせて帰ってきた。おそらく番号によって大きく難易度が変わるというのはあり得ないだろう。
安心しきっているグレイたちは三番のダンジョンへと足を踏み入れた。魔力感知でダンジョンの形を調べる。
「一本道のダンジョンに魔獣が数体設置されてるだけか」
グレイたちは待ち伏せていた魔獣たちを丁寧に処理していった。やがて一番奥に着き、そこには白く光る転移魔法陣のようなものがあったのでそのまま踏み込む。
「これで終わりですね」
グレイたちは目の前にある魔法陣に一緒に乗った。するとグレイの乗った魔法陣のみが謎に赤く発光し出した。ふとフィオナの方を見てみるとそっちは普通に白く光っている。
彼女がこちらを見て手を伸ばし、必死に何かを伝えているが何一つとして聞こえない。
グレイが次に目を開けた時、辺りを見るとセツシートの郊外にやって来ていた。一体何が起きたのか整理も付いていない中、ゆっくりと両手を使い体を起こす。
するとフィオナでもマロンでもノアでもない懐かしい声が聞こえてきた。
「あなたもここへ来たのね」




