表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
40/50

第39話 ???


「何なんだよ、あれは」


 魔封石から出てきた目の前に佇むライオンのような怪物を見て言う。すぐに近くにあるマヨルダ城跡の瓦礫の山に身を隠して、今にも暴れそうな怪物をこっそりも見る。隣にいた目白が深刻そうな表情を浮かべながらも胸ポケットに手を突っ込んだ。


「これでマロンとノアに状況を伝えて」


 あの二人にはもしもの時のためにと常に魔封石を持たせている。前世でやっていた時と同じ要領で魔封石に魔力を送り、信号を送った。二回目の信号を打ち終わった時に、ようやくマロンとノアの二人がグレイたちの前に現れた。


「とりあえず、二人は海底都市に来ている三人の避難を手伝ってくれ。避難が完了したら、自分たちも避難するんだ」


「待ってください! それだとグレイ様やメジロ様は……」


 小声で喋りながらもノアの言葉には自分たちを思いやる気持ちが目に見える。


「大丈夫だ。無理だったら瞬間移動を使うから」


「信じますよ」


「必ず生きて帰ってきてください」


 二人はそう言い残すと、海底都市内にいる三人の避難を手伝うべく飛んでいった。さてと、とグレイは続けながら近くで固まって一歩も動かない怪物の様子を再び観察する。


「あそこにいる怪物は多分、海底都市にいたメランダたちの記憶の結晶だと思う」


 不意に横でずっと黙って何かを考えていた目白が喋ったため、肩をビクッと振るわせた。最悪の事態を避けるために物音一つ鳴らさないように後ろを向く。しゃがみ込んでいる目白に対して、耳元まで近づき誰にも聞こえないような声量で聞き返す。


「それはどういうことです?」


「魔封石の通信って何かを記憶してそれを転送するのが現在の主流でしょ?でもここにある魔封石は記憶を転送する場所が無いからどんどん記憶が蓄積されていく。その結果、記憶は大きな塊となって物質へと変換された、っていうことしか考えられないわ。前に一度、そんなおとぎ話を読んだことがあるの」


 記憶が物質へと変換。そんな話は聞いたことがないが、魔封石の記憶の容量が限界に達したというのは本当だろう。

 実際、目の前にいるライオンにはグレイが戦った氷竜ことマヨルダとメランダの特徴があるように見える。背中から生えている羽、これが氷竜の要素だろう。足から伸びた爪、これがメランダの要素になるだろう。

 海底都市にいた天使とウィリアムの記憶が混ざってあんな怪物を生み出した、という説は間違っていないはずだ。


「魔法は……使えなさそうですね」


 弱点はライオンの角の下にある魔封石だ。怪物の根源たる場所を潰せば、流石に目の前にいる怪物も収束してくれるだろう。


「俺が一撃目入れて良いですか?」


「いいわよ。海斗君も成長したし、怪我で済むと思うから」


 怪我は大丈夫なのか、と少し不安に思いながらもグレイは魔力空間から剣を取り出す。二日前に目白から教わった剣技。

 グレイのたどり着いた結論は、剣に魔力というより、魔法に近いものを乗せて剣自体の耐久性能と威力を高める。やはり、グレイと魔力の関係は切っても切れない存在になってしまっていた。

 やむおえなく、そうしたが意外にもその相性が良く結果的には剣技もかなり上達した。


「相乗魔剣・灼炎!」


 技名を言った時に目白に言われた言葉は、ダサい。でも、グレイ自身はそんな事ないと思っている。名前はダサくとも技自体はとてつもなくかっこいい、と思っているからだ。

 剣に魔力、つまり炎魔法に属するものを纏わせてから剣技基本型の並行斬撃の姿勢で一気に間合いへと詰める。その瞬間、今まで押し黙って動かなかったライオンはいきなりその図体の大きさとは思えないほどの速さで手の爪を振り下ろしてきた。


「生ぬるいな」


 ひょいと体を翻し、すごい勢いで迫ってくる爪を避けると、手に持つ赤く煉獄色に染まる灼炎の剣のは先を横向きにする。光の速さで間合いを詰めたグレイの一撃はライオンの右眼あたりの肉を半ば抉った。


「グギャアァァッッ」


 ライオンの口から発せられる叫び声は尋常なものでは無かった。それもそのはずだ。目白の剣などは肉が抉られるとその瞬間、激痛が走る。しかし、グレイの剣は轟々と燃えているのだ。

 燃えているという事は肉を抉った時の痛みに加えて断続的に続く痛みがある。例えるのであれば火傷だろう。かなり重症な火傷をしたのに冷水で手を冷やさないでおいた時の痛みに近いはずだ。


「そう簡単に魔封石は狙わせてもらえないか」


 爪の振り下ろし攻撃のせいで本来狙っていた場所よりも数センチだけズレてしまった。いやズレたのではなくズラされたのだ。


「並行斬撃っ!」


 グレイの攻撃が終わると、間髪置かずに目白の攻撃が始まる。流石としか言いようがない滑らかな動きとしなやかな剣の動きを見せた。目白の剣先が描く完璧な軌道はグレイが狙うことの出来なかった魔封石を真っ二つに切り裂く。


「はぁっ、傷口が治ってる⁉︎」


 完全に勝ったと思い込んだのが間違いだった。目白が斬ったはずの魔封石も気付かぬうちに元通りになっている。眉へしわを寄せ、口をぽかんと開けてグレイはその場に立ち尽くした。


「海斗くんっ! 避けて」


「っ……」


 気付くと自分の顔の数センチ手前にはなぜか透明で先端が尖ったものが迫っていた。リンボーダンスのように膝を曲げてギリギリのところで鼻先を尖ったものを避ける。


「一体何なんだよ」


 その正体は聞くよりも明確なものだった。


「氷竜の力か……」


「海斗くん! あんまり戦いを長引かせるのは良くなさそうよ」


「じゃあ、次で確実に仕留めよう」


 目白が天井を見ながら言っていたのを見て、グレイも首を真上に動かす。天井にあるのは結界だ。その結界は少しだけ傷付いているように見える。

 一瞬、目白は何か言葉を続けようとしていたがそれは叶わなかった。ライオンが大きな声を上げて頭上に無数の氷柱を作り出したからだ。


「目白があいつの気を引いていてください!俺が最後に終わらせます」


 自信満々に言ったものの、実際のところグレイはどうすれば良いのか理解できていない。目白の斬撃をもろに喰らっても尚、回復して動いているのだ。弱点のはずの魔封石を単に攻撃したり割るだけでは意味がない。


「海斗くん、準備はいい? 発勁斬撃!」


 目白はまたもや、目で追うことのできないほどのスピードでライオンの間合いへと入っていった。


「根本から断ち切るってことか……?」


 魔封石をただ剣できるだけじゃ無く、二度と再生出来なくなるほどまでに粉々にするということだろうか。再生の感じを見てみると今思いつくのはそれぐらいしか無かった。


「せっかく出来た隙なんだ。やれる事をやろう」


 おぼつかない手つきで目白の行っていた発勁斬撃の構えを真似してみる。


「まだ完璧にはマスター出来てないけど」


 グレイの剣には再び魔力が流され始めた。今度は先ほどとは違い銀色に輝く剣はパキパキと鋭い音を立てながら青白く変色しだした。これは氷竜からヒントを得て作られたグレイ独自の技。


「相乗魔剣・氷華!」


 目白にはもちろん劣るが、並の剣士が出すほどの速さでグレイはライオンの頭部へ真っ直ぐに飛んでいく。


「もう遅いんだよっ……!」


 ライオンの魔封石に剣を突き刺すような形で相乗魔剣は今度こそ魔封石に当たった。相乗魔剣にはそれぞれ効果がある。炎舞であればその箇所を火で焼かれたかのような鋭い痛み。氷華はというと。


「グアァァッッ……」


 どんどんと周りにウイルスのように冷たい氷が広がっていくのだ。完全に全て凍ったと感じてもグレイは今よりも強く剣を魔封石に押し付ける。

 すると、魔力で強化され耐久性能や攻撃力が格段に上がる剣はすごく簡単にヒビが入った。両足をぴったりとライオンの頭につけて剣を思い切り押し込んでいく。


「「「「やめろおぉぉ……」」」」


 何人もの声が重なり合いながら聞こえたのを最後にライオンの体はボロボロと崩れていった。崩れていくとは言ったものの、灰のようになって地面に積もるわけではない。霧のようにふわふわと空気を漂いやがて消えていくのだ。


「海斗くん、一応ここから脱出しましょう!」


 倒したことよりもまず脱出を優先されるところはやはり目白らしいところ。


「……っはい!」


 結界が崩れていつ水没するか分からない今、ここから逃げることが最優先だ。来た道を急いで逆方向へ走り、グレイたちは転移魔法陣に乗って地上へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ