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第32話 崩壊



「ガアアァァッツ!!!」


 メジロに抉られた腹部を手で押さえながらマヨルダは地面に膝を落とす。腹部からは水を流した真夏の蛇口のように赤い血が流れ続けた。

 その量から察するにもう間もなくマヨルダはこの世を去るだろう。横で立っていたメジロもどさっと地面に倒れるのを見て、


「メジロ! 大丈夫ですか」


 グレイは全身の痛みを我慢しながらメジロの方へと小走りをして向かう。メジロの真横まで行きグレイは顔色を伺ってみる。


「そんな、心配しなくても大丈夫よ……ちょっと魔力を使いすぎたみたい」


 ふらふらしているメジロはグレイの肩を持って立ち上がる。


「あぁ……こ……んな……ところで………わ、私は…」


 地面に這いつくばって倒れたマヨルダをグレイとメジロは見る。


「お前はもう無理だ。お前は死ぬ」


「お前だけは……絶対…に…………」


 そんな意味深い最後にマヨルダは言葉を発しなくなり死んだと理解した。


「ん? 次はなんだ?」


 地面が大きく揺れだす。辺りをきょろきょろと見回してみるが大きな変化はない。が、急に天井が音を立てすぐにグレイたちの目の前に落ちてきた。


「グレイ、ここは危険よ。早く下に行きましょう」


 メジロがグレイの手を持ち連れて行こうとするが、グレイは止まろうとした。どうして、とメジロが呟くとグレイはすぐに答える。


「フィオナがあっちにいるんだ」


「でも、あなたが死んだら元も子もないわよ! 今はその気持ちを抑えて。後で助けましょう」


 メジロはそう必死にグレイを説得する。一瞬、尻ごもったグレイだったがすぐに決断をして口を開く。


「分かり、ました。そうですよね」


 グレイは決意をして広間の後ろ側にある階段を駆け降りる。


「んんっ……」


 階段を駆け降りるている最中、後ろを走っているメジロが声を発した。すぐにグレイは後ろを振り向きメジロの状態を確認する。


「メジロ、やっぱり無理してませんか……?」


 大丈夫、とは言ったもののやはり無理があったのだろう。すぐにそのことを理解したグレイはメジロの肩と膝の後ろ側を持ち抱き上げた。


「ヒャッ!?」


 急な出来事だったからか、メジロは声を裏返した。理由はグレイがメジロをお姫様抱っこをしたからだ。


「捕まっててくださいね」


 そんな中でもグレイは冷静にメジロへ語りかけた。顔を少しだけ赤らめたメジロはようやく状況を理解したのかグレイの服をギュッと握る。

 メジロを抱き抱えたグレイはすぐに階段を駆け下り始めた。そして、十秒も経たない内に次のハプニングが起こる。


「おいおい、マジで言ってんのかよ」


なんと自分たちが降りている階段が後ろからどんどんと崩れ始めたのだ。崩れる階段と競争する形でグレイは必死に逃げ続けるが。


「ヤバい、もう無理……」


「えっ?」


 グレイの予想外の言葉にメジロは驚きを隠すことが出来ずに目を見開いた。崩れ落ちる階段がグレイの足元に追いついたのだ。

 次の瞬間、気づいた時にはグレイとメジロの二人は空を飛んでいた。何とか空中でグレイは受け身を取り、地面に背中を向ける形で着地する。


「「グレイ様⁉︎」」


 地面に足が着いてすぐにマロンとノアの声が耳に飛び込んできた。


「なっ……」


 地面から顔を上げ町の方を見てみるとそこには衝撃の光景が広がっていた。結界が割れてそこからあり得ない量の海水が入り込んできていたのだ。するとグレイに抱き抱えられていたメジロが地面に降りてこう言う。


「ここから脱出しましょう。もう時間がないわ!」


「でも……」


 もし今、グレイ一人がフィオナを助けたとしてもここから脱出できる状況ではないことは確か。そう感じていたグレイはすぐに言い直す。


「いえ、早く脱出しましょう」


「でもどうするのでしょうか?魔法は今使えないですし……」


 マロンに言われてグレイは自分自身で魔法を作り出してみる。魔力を流し火を形成しようと試みてすぐに火が消える、なんてことは無かった。


「今なら魔法が使える! みんな集まって」


 出せる力を振り絞って叫んだグレイは黒い人型の何かと戦っている最中のローズとジェイミーに声を掛ける。すぐにこちらを振り向いた二人は走ってやって来た。


「ノアとマロンは魔法障壁を二人で作ってくれ。出来る限り丈夫な物にするんだ」


「「はい!」」


 ものの数秒でここから脱出をする算段が整った。結界内に六人がいることを確認したグレイはすぐに魔法障壁の下側に魔力を注ぐ。


「うおっ……」


 物凄い勢いで地面から離れていった。瞬間移動の要領で魔力の注ぐ方向のみを変え、パキパキと割れていく天井を目指す。その間グレイは魔力の使いすぎで意識が飛びそうになる。


「グレイ様! 私たちがついているので安心してください」


 結界内で倒れそうになっているグレイを見てマロンは肩を掴む。出せる力を振り絞ったグレイ達を乗せた魔法障壁は止まることを知らず、天井はすぐに通り越してついに海の中へと入る。その後も止まることはなく。


「もうすぐ地上に着くぞ!」


 地上に出るとシャボン玉のように魔法障壁が割れ、グレイたちの意識は遠くなっていった。

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