第11話 燃えた
「ねえ、起きて。起きなさいよ」
グレイはメジロに体を大きく揺さぶられて目を覚ました。
「なんですか。まだ飛行機の中ですよ……って!?」
「そうよ。まだ終わってないのよ」
その事実に気付くとそれまでの眠気は全て吹っ切れてしまった。空港から脱出したというだけでは、この世界から現実の世界に戻ることは無理だったのだ。
「まもなくこの飛行機は着陸します。椅子に座りベルトを締めてください」
グレイが焦りを見つつある時、椅子に座る前にチラっと窓から外の様子を見る。先ほどから目にチラチラ映る大きめの空港だが、そこで脱出できるのか。何をすれば良いか分からなくなってしまったグレイはメジロに聞く。
「それじゃあ、あの紙には何で記されているんです?」
「そうね……」
メジロにグレイが聞くと椅子に座りながらポケットの中に手を突っ込み探し出した。
「着陸するのを待つとしか書かれてないわ」
「なるほど」
ということはこれから先、何をするべきかよく分からないという状況になる。空港に着陸したら目的が新たに記されるのだろう。
そう考えているとガタン、という音と衝撃と共に飛行機の車輪が地面についた。
「この空港はまだ安全みたいですね」
「それはまだ言えないんじゃないかしらね」
グレイが一人安心していると横からメジロが注意してきた。
「何もないと思ったら、誰もいないんですね」
飛行機のドアが開いたもののリフトが来ないことでようやく俺はそう気が付く。そこでグレイは先に操縦席から立ち、ドアを開けようとしたその時のこと。
「俺が先に降りまッ!?」
彼女の方を向いてそう言った瞬間、グレイとメジロの間に鉄骨が飛んできた。飛行機の壁は最も簡単に破られその衝撃で飛行機内に火がついてしまう。
服で口元を押さえ煙を吸わないようにしつつ、出来る限り大きな声で会話をする。
「メジロ!大丈夫ですか!」
「ええ。でも、もうここは持たない。また空港内で会いましょう!」
「分かりました。メジロ無事でいてくださいね」
すぐに飛行機から飛び降りてグレイは外へと逃げ出した。
バンッ!
大きな爆発と共にグレイは爆風に巻き込まれ、吹き飛んでしまった。
「痛っててて……ようやくお出ましか?」
グレイは立ち上がり後ろから鳴り響く重い足音を聞いて小さく呟いた。音のする方へ振り向くと、そこには空港で鍵を持っていた怪物と同じくらいの大きさの怪物がいた。
大きく違う点はというと体を何本もの触手で覆っていることだ。その触手の中には飛行機の中に刺さってきたものと同じ鉄骨も持っており、心臓が体外に露出している。
「やるしかないよな」
腰から銃を取り出すとグレイはその心臓へ向かって発砲する。当たった、グレイはそう確信したが実際にはそんなことはなかった。先ほどグレイが怪物に向けて撃ったはずの銃弾はなぜか俺の後ろに飛んで行ったのだ。
「なっ!?」
かすかに信じがたい事実にグレイの頭は混乱状態に陥った。そんな状態のグレイに怪物は一歩一歩、俺の方へと近寄ってくる。足を触手で絡め取られてそのまま引きよせれてしまった。
「くそッ!」
グレイの足を掴む触手に向かってゼロ距離で球を撃ち込んだ。触手からは気持ちの悪い黒色のドロっとした液体が出てきた。
「グアアアッッッ!!」
触手を銃で切り取られた怪物は大きな雄叫びを上げた。勝てないと踏んだグレイは近くにあるマンホールに目をつける。ここならばあの怪物も入ってくることは出来ないだろう。そう考えたグレイはすぐさまマンホールの蓋を開ける。
「魔法はまだ使えないのかよ」
そのせいで時間はかかるがなんとか蓋を持ち上げて、中へ滑り込んだ。マンホール内はまるで迷路のようにグネグネと曲がっている道が続いていた。
「おいおい!」
グレイはそう声を上げ走り出す。ミチミチ、と変な音と共に黒い何かが俺の後ろまで迫ってきていたのだ。マンホール内を逃げ惑うも黒い何かに俺は気付かないうちに挟み撃ちにされてしまっていた。
その触手に捕まってしまった俺は背中を強く叩きつけられマンホールよりも下へと落ちていった。
「落ちたけどそんなに痛くはないんだな」
それもそのはず。グレイの落ちた場所はふかふかの土の上だったからだ。
「ここは何なんだ?空港の下にこんな施設が?」
辺りを見回して見て分かったことはここが何かを研究している施設ということだけだけだ。グレイの落ちた先にある鉄製の扉。
その扉に目を付けたグレイは恐る恐る近づいて押し開けた。扉の先には牢屋がずらりと所狭しと並んでいた。歩いて行くとある場所に人の気配を感じ取る。グレイは人の気配のある牢屋の中を目を凝らして覗き込む。そこには。
「メジロ?」
「んん……グレイなの………?」
中からはそんな元気のない乏しい声が聞こえてきた。暗闇の中にある彼女は何だか元気がないように見える。
「グアアァァァァ…………」
突然、グレイの入ってきた扉の方向から低い声が聞こえた。その声を聞いたグレイは出来るだけ小さな声でメジロに向かって聞く。
「この声は?」
グレイに合わせるようにメジロも小さな声で応じる。
「私を追い詰めたやつ。詳しいことはあとで」
「メジロ。奥の方へ行っておいてください」
メジロを追い詰めた怪物の殺気を感じ取ったグレイは気配を消してその場から離れた。近くの物陰に隠れてグレイは相手の姿を確認した。




