第12話 助けなきゃ
「あれは……」
部屋の中は薄暗くてよく見えなかったがその容姿でそれが誰かを理解した。地上でグレイを追い詰めた怪物だ。
「くそッ……どうする?」
あいつが近づいて来て隙をついて攻撃をするか。それでも今の攻撃手段は銃のみ。銃は先ほどなぜかあいつに弾かれてしまったためそれは無理だろう。
「なら、一か八かしかないな」
グレイは迫ってくる怪物ではなくあえて壁に向かって銃弾を撃った。予想通り怪物は自分の方へ球が飛んできたと感じて音のした方を向いた瞬間。
ドカンッ!!!
耳の鼓膜が破れるような大きな音と肌が焼けるくらいの高音がグレイを襲う。ただ壁を狙ったのではなく、壁に隣接していたガスボンベを狙ったのだ。
「よしっ!」
怪物の注意がこちらから離れた瞬間、ガッツポーズをしながら前方にあるドアを開けて外へ出た。そこは何かを作っていたかのような工場で道がとにかく入り組んでいた。
だが今はそんなことを気にしている場合ではない。辺りを見回していると今さっきグレイが出て来た扉が勢いよく飛んできた。奥からは空港のマンホールでグレイを落とした時と同じ黒い触手が姿を現す。
避けようとするもあまりの速さに全身で触手を受け通路から落ちてしまった。
「うっ……」
背中に強い衝撃が走り唸り声を上げて悶絶する。怪物はそのままグレイを見逃さずに飛び降りて来たのを見てすぐに横へ飛ぶ。
地面が割れる大きな音がしたのを聞いて後ろを見てみる。すると怪物の右手の大きな爪が地面に刺さっていた。
「おいおい」
目の前に広がる光景を見た時に自然にグレイの口から出た言葉がそれだった。怪物は初め見た時よりも姿形がまるで別人のようになっていたからだ。
体は何倍にも肥大化して腕の肘の辺りからは骨が飛び出て鳥のようになっていた。四足歩行でドタバタしながらその怪物は大きな声で叫んだ。
「ゴアアァァァ!!!」
グレイは怪物から逃げるように身を隠した。パイプなどの工業用の荷物が置かれていた机の下である。この付近には荷物が散乱していたし、この机の前には鉄の板が立てかけられていたためここにいるとは思わないだろう。
「グルアァァァ……」
獣のような低い唸り声が鳴るが気付かずにそのまま歩いて行った。それを確認した俺は机から這い出て近くにあった扉を押し開ける。
「何だここ?」
そこには細長いパイプのような物が山のように積み重なっていた。一番奥にある机の上に置いてあった書類に目を落とす。
『爆発物について
この度は所長直属の命令により作りました爆発物が出来たことをお知らせします。
威力は十分。一つあれば大きな爆発を引き起こします』
そう書いてあった。
「もしかしたら……これを使って倒せるか?」
今できる得策というのはこれしか無かったためすぐに怪物を探しに行くもその必要性は無かった。なぜなら、相手の方から壁を突き破って姿を現してくれたからだ。
「相変わらず図体だけはデカいんだな」
怪物を誘導するように足音を立てて先ほどの部屋に向かう。すぐに部屋の中へ入ったグレイは物陰に身を隠した。
「ハアアァァァァ……」
グレイの匂いを嗅ぐようにして部屋の中へと怪物がゆっくりと入ってきた。怪物が来たのを察知したグレイは一目散に部屋の扉へと走る。部屋に響く足音を聞いた怪物はすぐに振り返り後ろを追ってくる。だが。
「一歩遅いな」
怪物の方を向き山積みになっている爆発物を狙ってグレイは銃を撃ち込む。
「があっ……」
部屋が爆発した瞬間その爆風に巻き込まれたグレイは何メートルも先へと飛ばされた。
「倒せたんだよな」
自分の膝を持ちながら立ち上がったグレイは爆発した部屋の中を覗きこむ。まだ炎がゆらゆらと燃えている間から黒い焼け焦げた物体。
恐らくそれが先ほどまでいた怪物だろう。背中にある痛みを我慢しつつ俺はメジロのいる方へと向かう。そんな時に工場内にアナウンスが流れた。
『爆発物の爆破を確認。一分後に工場内の閉鎖、及び焼却を開始します。従業員は中央のエレベーターよりプラットフォームを経由して脱出して下さい」
アナウンスを聞いたグレイはさらに急いで牢獄の方へと歩いた。
「メジロ!」
「遅いのよ」
牢獄に到着した時には牢屋の柵はすでに壊されてメジロが外で待っていた。恐らくグレイの爆破させた時の衝撃で壊れたのだろう。
「何ボーッとしてるのよ。早くここから出ないと死ぬわよ!」
「でも中央のエレベーターって……」
「私について来て」
頼り甲斐のある声に導かれるようにグレイはひたすらにメジロの後ろを走る。怪物を倒した部屋の前までやって来た。部屋の先を縦横無尽に走り回ると広間に出た。
「早く!シャッターが降りて来てる!」
メジロは先にシャッターの奥へと行きグレイの方を向いて叫ぶ。
「間に合え!」
思い切り大きくジャンプをして体を最大限地面に近づける。
「ハアァ、ハアァ、危なかった……」
息を大きく切らして額から出てきた汗を腕で拭き取る。ギリギリの所でシャッターの下を通り工場に取り残られるのは免れた。シャッターの先は広く開けた場所で中央には真っ直ぐ下に伸びるエレベーターがあった。
「じゃあもう早くこの施設から逃げましょう」
——同時刻、施設工場内にて
工場内奥にある施設研究所に長らく眠っていた人物が目を覚ました。
「ようやくこの時が来たのね。ふふふ、わははははは!!」
その人物は満面の笑みで施設内を見回す。
「工場内ここをこんな事にしたのはあれか」
その人物はまるで全てが見えているかのように言う。
「この力を試すのはあいつらにしましょうか」
その人物はそういうと炎の海となった工場内へと歩いて行った。




