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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第83話 地底と地上の宴

鬼丸の家族との再会をきっかけに、地底の空気はゆっくりと変わり始めた。

恐怖と疑念に満ちていた広場には、ゆっくりと安堵に変わっていった。


妃たちは胸に手を当て、深く息を吸った。


「皆さま……どうか、神殿の中へ。

地底の未来を、ここから始めましょう。」


しばらくすると、数人の地底人たちがやってきた。

地下エビがたくさん入ったカゴを抱えている。


「……これを、地上の方々に。」

「我らにできることは少ないが……せめてもの礼だ。」

「どうか、受け取ってほしい。」


白鬼が目を輝かせた。


「おおお……!

これが噂の地下エビか!

なんと立派な……!」


ヘンリックが慌てて白鬼の肩を押さえる。


「まだ食べないでください! まずは調理法を聞いてから!」


地底人の女性がくすりと笑った。


「焼いても、煮ても、蒸しても美味しいですよ。

ただ……殻が硬いので、気をつけてくださいね。」


白鬼は太刀を抜きかけた。


「ならば殻ごと叩き斬って──」


「やめてください!!地底の者たちが怖がりますぞ!」


ヘンリックの叫びが神殿に響いた。


そのやり取りに、地底人たちから笑いがこぼれた。

ヘンリックのあせり方がおかしかったのだろう。

戦いの後に生まれた、初めての“心からの笑い”だった。


地底エビの調理が始まった。


恐らく、一番喜んでいたのは鬼丸だろう。

家族と一緒に、久しぶりの地底の味を口にした。


「……うまい……

こんなにも……懐かしい味だったとは……」


母が涙を拭いながら微笑んだ。


「また一緒に食べられる日が来るなんて……

夢のようだよ。」


鬼丸は箸を置き、深く頭を下げた。


「父さん、母さん……

わたしは……地上で多くの人に助けられた。

だから……これからは、地底と地上の架け橋になりたい。」


父は静かに頷いた。


「お前が選んだ道なら……わしらは何も言わん。

ただ……誇りに思う。」


鬼丸は涙をこらえきれず、家族の手を握った。


その隣では白鬼親子が地底エビ料理の奪い合いをしていた。

さすがのイオリも空腹だったのかもしれない。


ヘンリックは妃たちと地底の代表者を前に、改めて言葉を交わした。

地上の人たちとも交流ができる妃の一人が代表としてその場で選ばれたようだ。


「地底で不足しているものがあれば、地上から運ぶ。

逆に、地底の技術や資源が必要なときはお願いする。

これからは……互いに助け合おう。」


地底の代表者は深く頭を下げた。


「我らは長い間、恐怖に縛られていました。

しかし……今日、ようやく自由になれた。

地上の方々には……感謝してもしきれません。」


ヘンリックは首を振った。


「感謝などいらない。

ただ……これからは、同じ世界に生きる仲間として歩もう。」


その言葉に、地底人たちは笑顔を浮かべた。


「それから、大神官と先の戦いで捕虜にしたミルダと申す女将軍だが、その処遇に関して何かご意見はありますか?」


とヘンリックは聞いた。放置しておけば、また何か企むかもしれない。

地底の代表が少し考えた後、口を開いた。


「私たちの希望としては、この地底には彼らを置きたくはありません。あの者たちにとって、地下は安全な場所ではなくなりました。怨みも買っていることですし、あなた方に預けたほうが良い気がします。」


それを聞いたヘンリックは、二人を白雲諸島に送ることにした。

鬼に頼めば引き受けてくれるだろう。

地底人の扱いに慣れているし、鬼影衆が見張っていれば、悪だくみも不可能だろう。


地底の代表者に異論はなかった。これからしばらくは地底の建て直しをしなくてはならないし、余計な心配事は少ないに限る。新しい掟も必要だ。それは楽な道ではないだろうが、地上との相互協力で乗り切れると確信していた。


宴が終わり、翌日には地上軍は上に戻る準備が整った。

鬼丸は家族と抱き合い、別れを惜しんだ。


「必ずまた来る。

今度は……胸を張って。」


母は涙を浮かべながら微笑んでいた。


アーレンたちは地底人に見送られながら、地上への道を歩き始めた。大神官は縄をかけられたまま運ばれていった。その背中に、妃たちの声が優しく響く。


「地上と地底の未来が……どうか、良きものでありますように。」


アーレンは振り返り、静かに手を振った。


「ああ、そうでなくちゃな!」


地底の闇に、開かれたままの裂け目から確かな光が差し込んでいた。

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