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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第84話 生き残った者たち

地底との和解を果たした一行は、戦いで傷ついた者たちを助けながら、長い道のりを経てグレイフォードの町へ戻ってきた。

町の門が見えた瞬間、アーレンは深く息を吐いた。


「……帰ってきたな。」


イオリがホッとしたような顔を浮かべ、白鬼は大きく伸びをした。


「やれやれ、ようやく一仕事終わったのう。」


アーレンの隣で、レムがぼそりと呟いた。


「……結局、最後の戦いでは、ぼくの出番はほとんどありませんでした。」


アーレンは笑いながらレムの肩に腕を回した。


「まぁ、お前は戦士じゃないんだから、いいじゃないか。でも、地底人が攻めてきたとき、お前とお前の発明が無ければ、オレたちの町はぶっ壊されてたかもしれない。だから、オレはお前に感謝してるぜ。」


レムは顔を上げた。


「……アーレン、そうですよね。」


「それに、お前も領主さまの館に招待されてるから、荷物を置いたら一緒に行こうぜ!」


レムの顔がぱっと明るくなった。


地底での戦いが終わったという報せは、

すでに王国中に知れ渡っていた。


グレイフォードには援軍を送ってくれた領主たち、

そして鬼影の長を含む白雲諸島の面々も続々と集まっていた。


ヘンリックの領主館では、

彼の主催で盛大な酒宴が開かれることになっていた。


「皆の者、よくぞ集まってくれた!

今日は存分に飲み、語り合おう!」


領主の館だけでなく、町中が祝祭の空気に包まれていた。


宴が始まる前、ジュリアンはそっとシオリを誘った。


「……少し、外の空気を吸いませんか?」


二人は領主館のバルコニーに出た。

夜風が静かに吹き、その風にのって遠くから人々の笑い声が聞こえる。


「……終わったんですね、ジュリアンさん。」


「うん、あなたがいてくれたから、ここまで来られた。」


シオリは頬を赤らめ、視線を落とした。


「わ、わたしなんて……そんな……」


ジュリアンはそっとシオリの手に触れた。


「いや。本当に……ありがとうございました。」


二人の距離が、ゆっくりと縮まっていく──


その瞬間、


「……お二人とも、お幸せに。」


カスミが背後から現れた。


「えっ!? カスミさん!? い、いつから……!」


「ずっとです。」


シオリは真っ赤になり、ジュリアンは頭を抱えた。


しかしカスミは微笑んだ。


「シオリさん、本日は定時報告はありません。

それに、邪魔をしに来たのではありません。

ただ……祝福を伝えに来ただけです。」


シオリは驚き、ジュリアンは照れながらも笑った。


「……ありがとう、カスミさん。」


「では、お二人とも、そろそろ時間です。宴が始まりますよ。」


三人は並んで宴の会場へ戻っていった。


大広間には、すでに多くの人々が集まっていた。

たくさんのテーブルと椅子が置かれ、山盛りの料理が所狭しと並んでいた。


アーレンは、シオリと仲良く広間にやってきたジュリアンを見つけると、

満面の笑みで肩を叩いた。


「やったな、相棒!」


「な、何がだよ……!」


「何でもだよ。」


アーレンはニコニコと嬉しそうに笑った。

ジュリアンは顔を赤くしながら席に着いた。


やがて、ヘンリックが杯を手に立ち上がった。


「皆の者──

この戦いを乗り越え、こうして無事に集まれたことを、心から誇りに思う。」


大広間が静まり返る。


「地底との争いは終わった。

だが、これは終わりではなく……始まりだ。

地上と地底が手を取り合う未来を、我々が作るのだ。」


ジュリアンとシオリはそっと目を合わせ、

互いに照れながらも微笑んだ。


アーレンはその様子を見て、

まるで自分のことのようにうれしくなった。


ヘンリックが続けた。


「では──この戦いの中心に立ち続けた男、

アーレンに乾杯の音頭を頼もう!」


アーレンは驚きながらも前に出た。


「え、俺が……?」


隣でフレドリックがアゴでさっさと行けと言っている。

皆が期待の眼差しを向ける。


アーレンは深く息を吸い、仲間たちを見渡した。


「……やっと長い戦いが終わった。

地底と地上、両方に深い悲しみと憎しみを生んだと思う。

だけど、これは一部の人間の誤解から始まった悲劇だった。」


静かな空気が広がる。


「おかげで、俺たちはいろんな罪を背負うことになった。

死んでいった者たちへのとむらいは、

残されたものが今を生きて、

それぞれが満足できるような生にすることだよな。」


アーレンは杯を掲げた。


「今日、こうやって地底と地上の生き残りたちが、

同じ場所で一緒に酒を飲んで、飯を食ってる。

これで良いんだよ。みんな、よく頑張ったよな。」


そして、少し笑って続けた。


「ここにいる俺たち全員、そして、

この世界で暮している全ての人たちが

勝者になれるよう、

これからも仲良くやっていこうぜ!」


アーレンが杯を高く掲げる。


その瞬間──


その場にいた、地上人も地底人も、

兵士も民も、貞直もイオリも、

ジュリアンもシオリも、

エイリンもエイトも、ダルガもドロガも、

鬼丸も、そしてレムも、

全員が一斉に立ち上がった。


杯が高く掲げられ、声が重なる。


「乾杯!!」


その声は、地底の闇を突き抜け、地上の空へと昇っていく。


誰もがそれぞれの思いを抱きながら、

確かに同じ未来を見ていた。


失ったものへの悼み。

生き残ったことへの感謝。

新しい時代への希望。

そして、明日へ向かって歩き出す覚悟。


宴の喧騒の中、一息つこうとバルコニーに出たアーレンは、

静かに空を見上げた。次はどんな冒険が待っているのだろうかと考えていた。


隣にいた地底人たちは初めて見る夜空に目を細める。


広間では、


シオリとジュリアンは控えめに視線を交わし、照れながら微笑む。

イオリはレムと楽しそうに白雲の思い出話をし、

白鬼はヘンリックの肩を叩きながら豪快に笑い、

フレドリックは目を閉じ、腕組みをして、息子のスピーチの余韻に浸っていた。


それぞれがそれぞれの思いを抱き、

また明日へ向かって生きていく。


— 終 —

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。私の初めての長編・・・といっていいのかわかりませんが、ラストまでようやく書き終えることができて満足しております。


以前からちょこちょこと暇があったら設定を考えていた本作ですが、ようやく形にできました。まだまだ稚拙な表現や構成も多いかもしれませんが、ご容赦ください。



反省材料としては、白鬼を登場させてしまったことでしょうか、ラストに登場しながら、主人公を上回る活躍をさせてしまった気がしています。本来なら大陸最強の戦士と呼ばれる父親と息子との共闘を描くべきではなかったかと思っていますが、そこらへんは続編のほうに入れる予定です。


続編では、地底との戦いで中部王国の力が弱まり、大陸東の3つの王国のパワーバランスが崩れ、それにより新たな混乱が巻き起こるというお話になると思います。


近いうちに発表できたらいいなと思っております。

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