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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第77話 戦場に響く笑い声、崩れゆく地底軍

地底軍本隊は、白鬼・小島貞直の圧倒的な剣技に押されながらも、

必死に陣形を保っていた。


バルグは前線の中央で槍を構え、

白鬼の暴れぶりを目の前にして、歯を食いしばっていた。


(このまま時間を稼げば……

丘の上から魔道砲が撃ち下ろされる……

そうすれば地上軍はひとたまりもない……!)


砦を吹き飛ばしたあの光。

あれさえ放てば、戦況はひっくり返る。


だが──


(……遅いな。ドロガ、何をしている……?)


その時だった。

丘の上から、泥まみれの地底兵が転がり落ちるように走ってくる。


「バ、バルグ様ぁぁ!!」


「どうした! 魔道砲はどうした!!

まだ準備ができておらんのか!!」


兵士は地面に膝をつき、震える声で叫んだ。


「だ、大変でございます!!

地上軍の別動隊が丘を占領しました。

さらに、ドロガ様が……裏切りましてございます!!

魔道砲は……もう撃てません!!」


戦場が、凍りついた。


地底兵たちの顔から血の気が引く。


「……う、裏切り……?」

「魔道砲が……止まった……?」

「そんな……勝てるわけが……」

「もう無理だ……!」


それとほぼ同時に影から魔道砲停止の連絡を受けた白鬼が、

太刀を肩に担ぎながら、にやりと笑った。


「さて……どうする?」


次の瞬間、ヘンリックの声が戦場に響き渡る。彼にも鬼影衆から知らせが入ったのだ。


「全軍、突撃!!

敵は動揺している!!

今こそ押し切れ!!」


地上軍が雄たけびを上げ、一斉に前進した。

アーレンも叫ぶ。


「行けぇぇぇ!!

押し込め!!」


白雲軍、騎士団、傭兵隊──

すべてが一斉に動いた。


その迫力に、

地底軍は完全に恐慌状態に陥る。


「ひ、ひぃ!!」

「もう戦えん!!」

「逃げろ!! 地下へ戻れ!!」

「もうおしまいだ……戦う理由は……!」


我先にと、地底兵たちは裂け目へ向かって逃げ出した。



白鬼はその光景を見て、

太刀を肩に担ぎながら大きく伸びをした。


「ふぅ……これで成ったの。ワシの出番はここまでか。」


そして、戦場のど真ん中で堂々と岩の上に腰を下ろす。


「おい、エイム!酒を持て!!」


どこからともなく現れたエイムが、

ひょうたんと杯を差し出した。


貞直は豪快に飲み干し、

満足げに笑った。


「うまいのう!

久々に良い運動じゃったわい!

やはり命のやり取りをせんと

生きておる気がせんのう!」


おそるべき胆力である。


その様子を遠くから見ていたヘンリックは、心の底から悟る。


「……この人だけは……

絶対に敵に回してはいけない……」


これは政治家としての判断ではなく、

生存本能 に近い。


余談であるが、以後、ヘンリックは小島家との通商を“命を守るための最優先事項”として扱うようになる。

同じように、生まれて初めて父の本当の戦闘力を目の当たりにしたイオリも呆然としていた。


「……父上は……色々と武勇伝のようなものは耳にしておったが、

あのような化け物じみた強さを……?」


そして、心に誓う。


「父上が生きている間は、絶対に逆らわない……」


この瞬間、イオリの中で

“父”はただの“家族”から“畏怖すべき存在”へと変わった。


「ワシの存在以上の恐怖がこの世に存在するとはな。

兵たちも素直なものだ。」


逃げ惑う部下たちを横目に、

バルグは槍を握りしめ、震える声で呟いた。


「……ドロガ……

お前まで……裏切るのか……」


戦場に響き渡る白鬼の豪快な笑い声が、

バルグの胸に突き刺さる。


(悪魔め……ここで恐れをなしては将軍の名に恥じる。)


バルグは槍を構えた。


「……ならば……せめて……

武人として……死に場所を……」


バルグは地上軍の軍勢に向かってゆっくりと歩き始めた。

「お、まだやる気か?」


白鬼はニンマリして立ち上がった。


その時、誰かが馬で白鬼を追い越して、バルグの前に立ちはだかった。


アーレンだった。


白鬼の戦いぶりにすっかり興奮していた。


「おっさん、すげぇじゃねぇか!」


そのアーレンの声に、白雲の軍勢は動揺した。白鬼をおっさん呼ばわりするとは恐れを知らなすぎる。隣のエイムも仮面の下でたじろいだ。白鬼は共通語を完全に理解できるのだ。


「はっはっは! 若造、見ておったか!

わしの腕はまだまだ錆びついとらんわい!」


バルグはゆっくりと顔を上げた。

その目には、覚悟の光が宿っていた。

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