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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第76話 魔道砲、沈黙――兄弟の帰還

魔道砲の砲身は、もはや太陽のように輝いていた。

青白い光が渦を巻き、丘全体が震えている。


ドロガは巨大なハンマーを両手で握りしめ、

狂気の笑みを浮かべた。

ハンマーを発射ボタンめがけて振り下ろせば、

光が敵を焼き尽くすだろう。


「兄者ァァァァ!!

見ていてくれ!!

この一撃で……地上を焼き尽くす!!」


その瞬間、

ダルガが全力で駆け出した。


「ドロガァァァ!!」


ドロガの腕が、ゆっくりと振り上げられる。


ダルガは地面を蹴り、

魔道砲の発射ボタンのそばに立った。


「ドロガ!! やめろ!!」


ドロガの動きが止まる。


「……兄者……?」


ダルガは息を切らしながら叫んだ。


「ドロガ……お前は……

人を救うために技術を磨いていた!!

兄のためでも……地底のためでもない!!

お前自身のために……その手を汚すな!!」


ドロガの目が揺れる。


「兄者…なんで……でも……死んだって……

オレは……オレは……!」


「見ろ!!」


ダルガはドロガの腕を掴んだ。


「オレは死んでいない!!目の前にいる!!

お前が……こんな狂気に飲まれることを……

オレが望むはずがない!!」


ドロガの手が震えた。

ハンマーが、わずかに下がる。


「兄者……

オレは……どうすれば……」


ドロガの声は、

まるで迷子の子どものようだった。


ダルガは弟の肩を掴み、

真正面から目を見た。


「ドロガ。

お前は……優しいやつだ。

オレが死んだと思い込んで……

その悲しみで我を忘れていたのだろう。」


ドロガの目に涙が浮かぶ。


「兄者……

オレは……間違っていたのか……?」


「……まだ間に合う。」


ダルガは弟の手に触れた。


「魔道砲は使ってはいかん。

ドロガ。お前の手で……地上を焼くな。」


ドロガの手が震え、

ハンマーがゆっくりと下がっていく。


魔道砲の光が、

不安定に揺れ始めた。


その時だった。


魔道砲の内部で、

光が暴れ狂うように脈動した。


「……っ!?

兄者……魔道砲が……!」


技術兵が叫ぶ。


「ドロガ様!!

魔道砲は臨界を超えています!!

このままでは──暴発します!!」


ドロガの顔が青ざめた。


「な……に……?」


魔道砲の砲身が、

不気味な音を立てて膨れ上がる。


ダルガは叫んだ。


「ドロガ!!

離れろ!!」


だが、ドロガは動こうとしなかった。


「兄者……

オレは……!」


爆発寸前のところでドロガは魔道砲の充填装置を止めた。

魔道砲の中の光が徐々に消えていく。


あたりは静かになった。技術兵たちは、爆発しても身を挺して守ろうと、ドロガにしがみついていた。


「お前たち…」


「ドロガ様、た、助かったのですね。」

「ふう、間一髪でした。」


ドロガは一人一人を優しく降ろすと、礼を言った。


「ありがとう、お前たち。こんなオレを全力で守ろうと…」


技術兵たちはホッとした様子で、生きていることを喜び合った。


「兄者、生きていたんだな!良かった。

置き去りにされたと聞いていたから、てっきり…」


「置き去り?違う、オレは自分から残って地上軍の足止めをするつもりだった。」


「そうだよな、兄者はいつもそうやって自分が犠牲になる道を選ぶんだ。」


「まぁ、結果的に地上人の本音を知るチャンスを得た。

紹介しよう、地上軍の司令官の息子ジュリアンだ。」


ダルガがジュリアンの方を向いた。口をあんぐりと開けて放心状態だった。

それを見せるのは恰好が悪いので、ダルガは素早く話題を切り替えた。


「そしてこちらが東方の国の姫、シオリさんだ。

彼女は実は我々のような地底人の血を引く者の一人だ。」


「何だって?地上人と地底人が結ばれるなんてことがあるのか?」


「ああ、まぁ、あとでゆっくり聞かせてやる。まだ戦いは終わっていない。」


「そうだな、それで、オレはどうなる?地上軍に捕まって処刑されるのか?」


「ハハハ、心配するな、地上軍はそんなに酷いやつらじゃない。」


シオリはそのやり取りを微笑ましく思いながら聞いていた。


「お二人、とりあえず魔道砲は無力化できましたね。

まったく、恐ろしいものを発明したものです、ドロガさん。

もう、こんなものは二度と作らないでくださいませ。」


三人は笑った。エイリンもうつ伏せで倒れながら、

仮面の下ではホッとした顔を浮かべていた。


「何とかなった。ここは一件落着だが、下の本隊はどうなっておるのか…エイムに任せておるから心配は無いと思うが…」


エイリンはうつ伏せのまま、仮面の下で苦笑した。


「……いや、心配はある。あの御方が動いておる。」


「御方?」


ジュリアンが首をかしげる。

エイリンはゆっくりと顔を上げた。


「白雲の白鬼──小島貞直殿だ。」


その名がエイリンの口から出た瞬間、

丘の下から悲鳴が響いた。

「……お館さまが、たった一人で…また無謀なことを…」


エイリンはため息をついた。


「地底軍本隊が崩れかけておる。

だが──バルグがまだ残っている。」


ジュリアンは剣を握り直した。


「行かないと……!」


ダルガもドロガに声をかける。


「弟よ、行けるか?」


ドロガは涙の跡を拭い、

しっかりと立ち上がった。


「兄者……オレも行く。

今度こそ……正しい戦いをする。」


三人は互いに助け合い、

丘を駆け下りた。


シオリもあわてて追いかける。


白鬼が暴れる戦場へ──

そして、地底軍の運命が決まる場所へ。

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