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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第74話 白雲最強の剣士、戦場に降り立つ

小休止の後、地上軍前進を再開し、裂け目付近で一旦停止した。

まずは魔道砲の位置を確かめ、攻略の算段を立てる必要がある。


幸いにも、裂け目を見下ろせるような小高い丘があって、

その上に大きな天幕が用意されているのが見えた。


「おそらくあそこに魔道砲はあるだろう。」


ヘンリックは偵察も兼ねた攻撃隊を編成することにした。

ヘンリックは騎士団から兵を分け、

魔道砲部隊への攻撃隊長にジュリアンを指名した。


「ジュリアン。あの天幕が見えるか?

おそらくあそこに魔道砲はある。

騎士団とともに向かえ。」


ジュリアンは静かに頷いた。


ダルガも同行を申し出た。


「弟の暴走は、兄である私が止める。」


さらにシオリも志願した。


「ジュリアンさまの補佐として、私も参ります。」


ヘンリックは目を閉じ、短く息を吐いた。


(……息子を犠牲にする覚悟はできている。

このような危険な役目を他の者に押し付けるわけにもいかん……

だが、ダルガとシオリさんの力も必要となろう。

もはや、無事を祈ることぐらいしかできん。)


ジュリアンもその意味を理解していた。


「ご心配なく。父上……必ず成功させます。」


こうして、二つの作戦が同時に動き出した。

ジュリアンたちが迂回ルートで魔道砲へ向かう一方、本隊は正面から地底軍に攻撃を仕掛け、注意を引きつける。


だが──


地底軍は突撃してくると思いきや、

弓兵をずらりと並べて待ち受けていた。


「弓で来るか!ならば、前衛、盾を構えろ!慎重に前進せよ!」


ヘンリックの号令で前衛部隊が進む。弓の射程ギリギリまでせまったところで、兵士たちに緊張が走る。盾を持つ手にぐっと力が入る。


その時──

前方の土が突然割れたように見えたかと思うと、

多数の地底兵が一気に飛び出してきた。


「なっ……!?」


透明化ではない。

遮光マントに荒地の土をのせて地面に溶け込んでいたのだ。


不意を突かれた前衛は混戦状態となり、被害が出始める。


地底兵たちは「絶対にここを守る」という決死の覚悟で襲いかかってきた。

とうとう前衛部隊が崩れはじめ、ヘンリックは即座に後退を命じた。


「前衛、退け!急げ!!」


だが、敵が追ってくる。

このままでは前衛が全滅する。


だが、敵の勢いは止まらない。


地底兵たちは決死の覚悟で襲ってくる。

青白い刃がきらめくたびに味方が倒れていく。


アーレンが歯を食いしばった。


(まずい……このままじゃ……!)


その時だった。


白雲軍の陣の中央で、一人の白髪の老人がゆっくりと立ち上がった。

その瞬間、周囲の白雲兵がざわめいた。


「……白鬼様が動かれた……!」


アーレンは思わず息を呑む。

老人は鎧をつけていない。


ただの白雲の民の布衣に、一本の太刀だけ。


だが──


その背中は、山のように揺るぎなかった。


老人は歩きながら、片肌を静かに脱いだ。


露わになった肩には、白雲の象徴である“白雲山と雲”の刺青。

年齢に見合わない筋骨隆々の体に刻まれたその紋様が、陽光を受けて淡く光った。


そして、一瞬にして戦場の空気が変わった。


地底兵たちが本能的に後ずさる。


「な、なんだ……あの気配……!?」


老人は太刀を抜き、

静かに一歩踏み出した。


その一歩で、地面がわずかに震えた。


「さて……久しぶりに、ひと暴れするかのう。」


そして、息を大きく吸い込んだ瞬間、老人の姿が消えた。


アーレンは目を見開いた。


「……消えた!?」


気づけば、老人は地底兵の目の前に立っていた。


太刀が閃く。

地底兵が倒れる。

また閃く。

また倒れる。


太刀の届くところにいるものは次々と斬られていく。

彼が通ったあとには立ち続けるものはいない。

風のような素早さで動き、太刀を振るう。

返り血を浴びたその姿はまさに鬼神のようであった。


地底兵たちは恐怖に震えた。

「み、見えない……!」

「なんだこの老人は……!?」


兵たちは怯え始めた。

それを見た老人は笑いだした。


「こんなもんか、お主ら。

物足りないのう……もっと来い!」


その声は、戦場の喧騒を切り裂くほどの迫力だった。

アーレンは援護のために前に出ようとしたが、


イオリが肩を掴んだ。


「待たれよ。

あれは、白雲最強の剣士、

わが父、小島家当主・小島貞直。

通称、“白鬼しろおに”でござる。」


アーレンは息を呑んだ。


(これが……白鬼……!)


白鬼は地底兵の群れの中で、


まるで舞うように太刀を振るっていた。


その姿は、老いを感じさせない。


速く、鋭く、強い。


前衛部隊はその隙に後退することに成功した。


だが──

その光景を見ていたバルグが、顔を真っ赤にして叫んだ。


「たった一人に何をしておる!!

弓兵!あいつを討ち取れ!!」


すさまじい数の矢が、白鬼に向けて放たれた。


空が黒く染まるほどの矢の雨。


アーレンは叫んだ。


「危ない!!」


だが──


白鬼は一歩も動かなかった。

太刀を構え、

静かに息を吸う。


次の瞬間──


ものすごい速度で太刀を振り回し始めた。

金属音が連続し、折れた矢が地面に雨のように落ちていく。


だが、余りにも数が多かったので、太刀を振り回しながら転がっている地底人の体を掴んで片手で盾のように持ち上げた。死体に矢が次々と刺さる。

「ハハハ、ちょいと小休止じゃ。」


地底兵たちは次の矢をつがえようとしたが、全てが無駄に終わる気がした。

白鬼は死体を投げ捨てた。


「……ふむ。飛び道具とは考えたな。だが、もう少し骨のある攻撃をしてくれんと、退屈じゃのう。」


地底兵たちは震え上がった。


「ば、化け物……!」

「無傷だと…なんだあの老人は……!?」


バルグの顔は青ざめた。


「な、なんだ……あれは……まるで……悪魔……!」


白鬼はゆっくりと太刀を肩に担ぎ、

にやりと笑った。


「さあ、次はどう出る?」


その姿は、

まさに“伝説”そのものだった。


一方その頃、

ジュリアンたちは魔道砲を無力化すべく、

必死に小高い丘を駆け上がっていた。


あまりのスピードに脱落者も出たが、

それでも前へ進む。


そして──

ついに魔道砲の姿が見えた。


「……あれが……!」


ジュリアンは息を呑んだ。


彼とドロガとの決戦の火蓋が、

いま切られようとしていた。

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