第71話 偽りの掟と真実の居場所
鬼丸の言葉が終わったあと、荒地に静寂が落ちた。
ダルガは拳を握りしめたまま、しばらく動けなかった。
(……そうだ。
未帰還者は“処分対象”……
あれは本当に正しかったのか……?)
その時、シオリが一歩前に出た。
「将軍。
あなたは部下を守ろうとする立派な武人です。
その心は、私たち白雲の民も同じです。
無益な争いはやめましょう」
ダルガはシオリを見つめた。
「……お前たちは……本当に地底人の子孫なのか?」
「はい。
私も、エイリンも、鬼影の多くも──
祖をたどれば地底に行き着きます。」
エイリンが静かに言う。
「我らは、あなた方地底人の“未来の姿”でもある。」
その言葉が、ダルガの胸に深く刺さった。
長い沈黙のあと、
ダルガはゆっくりと剣を地面に突き立てた。
そして、深く息を吸い──
はっきりと宣言した。
「……よかろう。」
アーレンもシオリも、息を呑んだ。
ダルガは続けた。
「オレはお前たちには剣を向けないことを誓う。
だが、ここからは地底の仲間を一人でも多く救う戦いに出向く。」
その声は震えていなかった。
武人としての覚悟が宿っていた。
「この愚かな戦いを終わらせるために、お前たちに同道する。
大神官の命など、もう従わない。」
そして、胸を張って言い切った。
「オレは……オレの信ずるもののために戦う。」
その瞬間、周囲の地底兵たちがざわめいた。
「将軍……!」
「ダルガ様……!」
「本当に……?」
ダルガは振り返り、部下たちを見渡した。
「地底の民たちのために生きよ。これは命令だ。
大神官を倒し、地底の未来を掴め。」
その言葉は、地底軍の兵士たちの胸に深く響いた。
鬼丸は涙をこぼしながら言った。
「将軍……ありがとうございます……!
あなたが生きていてくれたこと……
そして、私に詫びまで入れようとしていたこと!」
ダルガは鬼丸の肩に手を置いた。
「お前が……私に未来を見せてくれた。」
エイリンが前に出て、静かに告げた。
「ダルガ将軍。
あなたの決断、確かに受け取った。」
そして、周囲の地上軍に向けて言う。
「この者たちは、もはや敵ではない。
剣を向ける必要はない。」
アーレンも剣を下ろした。
「……おっさん。
あんた、いい顔になったな。」
ダルガは苦笑した。
「……お前たちのせいで、私はもう戻れんぞ。」
「戻らなくていいさ。」
アーレンが笑った。
「こっちに来いよ。
地上は案外、悪くないぞ。」
ダルガはついに決断した。
地底軍の未来を変える、歴史的な決断を。




