表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/84

第70話 ダルガの目覚め

アーレンは、ダルガの様子が明らかに変わったことに気づいた。


「おい、おっさん。前にあんたの部下を捕まえたんだけどな……今はこっちで楽しくやってるぞ。」


エイリンに手伝ってもらい、ダルガに意志を伝える。ダルガの眉がわずかに動く。


アーレンは続けた。


「俺たちだって無駄に殺すつもりはない。

あいつは敵だと思ってた俺たちより、味方が殺しに来ることばかり気にしてた。

家に帰してやろうと思ったが……大神官に殺されるって言ってたな。

本当に気の毒だった。」


ダルガの胸に、暗い記憶がよみがえった。


未帰還の者は数人いた。


本来なら死体を回収し、痕跡を残さないようにする。

だが死体が戻らなければ“行方不明”扱いにするしかない。


そして行方不明者は──大神官の命により処分の対象。

生きている限り命は狙われる。


冷酷な掟だった。

ダルガも好きではなかったが、

地上人を信用していない地底社会では、それが“当たり前”だった。


(……だが、本当に地上人は我らを滅ぼそうとしていたのか?

こちらから仕掛けたので対応しているだけ……?)


地上には広大な土地があり、

地底人が暮らせる場所があってもおかしくない。


なぜ話し合いから始めなかったのか──

その疑問が胸に刺さった。


その時、東の街道から新たな援軍が駆けつけた。

イオリとシオリが、足の速い兵を率いて先行してきたのだ。


シオリはエイリンから状況を聞き、

一瞬で全てを理解した。


そして、ダルガに歩み寄る。


「私は白雲のシオリと申します。将軍とはお初にお目にかかります。」


ダルガは警戒しつつも耳を傾けた。


「以前にお預かりした将軍の部下ですが、現在は白雲の民に保護されています。

祖先を同じくする者たちの手助けを受け、だいぶ暮らしにも慣れました。今では、私たちに協力してくれています。」


シオリは静かに言葉を続けた。


「将軍、もう剣をお納めください。

これ以上の戦いは無益です。」


ダルガの心が大きく揺れた。


無能な味方のせいで、

大切な部下たちが次々と死んでいく。


将軍として部下の命を預かっている。

ならば、一人でも多く生かすのが務めだ。


(降伏か……死か……

私が死んで部下が逃げ帰っても、処罰されるだろう……

だが、このまま戦っても全滅だ……)


ダルガは問うた。


「シオリと言ったな……

その部下は本当に無事に暮らしているのだな?」


「はい。もしお疑いなら──お会いになりますか?」


「……会いたい。

そして、敵中に置き去りにしたことを詫びたい。

そんな機会があるのなら……だが。」


「わかりました。では──ここで。」


「……ここで?」


ダルガが戸惑う中、

兵士たちをかき分けて一人の青年が歩み出てきた。

地底の偵察部隊の鎧とフードをかぶっている。


「将軍、お久しぶりです。

1057です。ご無事で何よりでした。」


ダルガは目を見開いた。


「お前……生きていたのか!

行方不明と聞いていたが……よくぞ無事であった!」


1057──いや、鬼丸は深く頭を下げた。


「はい。アーレン殿たちを襲撃して捕まりましたが、

最後まで客人として扱っていただきました。」


「客人……?」


「そして、シオリ様から白雲という場所の話を聞き、

そこへ連れて行っていただきました。」


鬼丸は続けた。


「白雲には、地底人の子孫が暮らす町や村があります。

神殿もありますが、こちらの神官は慈愛の方でした。

白雲での暮らし、人々の習慣、地底人の力の活かし方……

あらゆることを教わりました。」


そして、胸を張った。


「今は1057という番号ではなく──

鬼丸という名前をいただきました。

そして、志願して小島家を守る鬼影衆の末席に加えていただきました。

島の人たちは私にとても親切にしてくれます。

ようやく“居場所”を見つけた気分です。」


鬼丸はダルガをまっすぐ見つめた。


「将軍……どうかお考えください。

ここで戦いをやめても良いのです。

そもそもこの戦は、大神官の誤解と権力欲が生んだもの。

元凶は彼であり、巻き込まれたのは──

ここにいる全員です。」


鬼丸の言葉と、

心に流れ込んでくる白雲での彼の生活の記憶。


それは嘘でも偽りでもなかった。


(……本当に……そんな世界が……?

地底人が地上で……平和に暮らせる世界が……?)


目の前にいる鬼丸は幸せそうにニッコリしている。


(……やはり、戦う必要など……最初から無かったのか……?

我らの苦しみは……無意味だった……)


ダルガの胸の奥で、

長年積み上げてきた信念が音を立てて崩れ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ