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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第60話 地底軍 侵攻開始

アーレンは結局、地底人の手がかりを得られないまま、グレイフォードの守備隊詰め所へ戻っていた。


それからの一週間、彼はレムの新兵器の研究に付き合い続けていた。


レムの“ハンドキャノン”は大量生産こそ難しかったが、実戦テストが可能な段階にまで仕上がっていた。


一方、ジュリアンが提案した連射式クロスボウは予想以上の成果を上げ、ヘンリック騎士団で正式採用され、急ピッチで生産が進んでいた。


フレドリックの守備隊でも五十名規模の連射クロスボウ部隊が編成され、訓練が始まっていた。


地上側は、確実に備えを固めつつあった。


だが──その備えを嘲笑うかのように、地底の闇が動き出す。


アーレンが町に戻ってから一週間が過ぎたある夜。

裂け目の奥から、地鳴りのような振動が響き始めた。

最初は小さな揺れだった。


だが、すぐにそれは“軍勢の足音”だとわかるほどの規模に膨れ上がる。


やがて、裂け目から続々と地底軍が姿を現した。


その数、およそ八千。


松明の光が揺れ、影が地面を覆い尽くす。

先頭には、ダルガ率いる偵察・狩猟部隊。

その後ろに、バルグ、ドロガ、ミルダの各部隊が続く。


地底軍は整然とした隊列を組み、地上へと進軍を開始した。


やがて、地底軍の前方に第2砦が見えてくる。


ドロガが魔道砲を前に出し、興奮した声を上げた。


「兄者、見てろよ……!

これがオレの“最高傑作”だ!」


巨大なハンマーを振り下ろす。


魔道砲が火を噴き、砲弾が青白い尾を引いて夜空を裂いた。


次の瞬間──

砦の外壁に着弾した砲弾が、石壁を貫通し、内部の建物や施設を一気に破壊した。


轟音が響き、砦が揺れる。


「突撃!」


ダルガの号令とともに、偵察部隊が一気に前進する。

地形を熟知した彼らは、迷いなく砦の弱点を突き、内部へ雪崩れ込んだ。

砦の守備兵たちは混乱し、抵抗らしい抵抗もできずに後退を余儀なくされる。


ダルガ隊は犠牲者ゼロで砦を占領した。


遅れてバルグ率いる“自称本隊”が砦に入ってくる。


「ほれ見ろ!

言った通りだろうが!

地上人など、ワシら地底人の敵ではないわ!」


勝ち誇った声が砦に響く。


ダルガはその背中を見つめ、内心で怒りを噛み殺した。


(……何もしていないくせに、よく言える……)


だが、言い返す時間はなかった。

侵攻はまだ始まったばかりだ。


ドロガは魔道砲を砦に運び込み、次の標的、第一砦へ照準を合わせた。


「さぁ、次だ……!

地上人ども、震えて待ってろ!」


再び魔道砲が火を噴く。

砲弾は第一砦の外壁を破壊し、内部の兵士たちは後退を余儀なくされた。


ドロガは高笑いを上げる。


「はははは!

これで地上は終わりだ!」


ミルダはその様子を見て、静かに呟いた。


「……私の出番は、ないかもしれないわね。」


地底軍は、圧倒的な勢いで地上を侵食し始めていた。


一方、グレイフォードの町では…


夜空を裂くように、青白い閃光が遠くの山際で瞬いた。

次の瞬間、地響きが町まで届く。


「な、なんだ……今の光は……?」

「砦のほうからだぞ……!」

「雷か? いや、空は晴れている……!」


町の人々は混乱し、家々の窓から不安げな顔が覗く。


アーレンはレムの工房の窓から、その光を見た瞬間に眉をひそめた。


(……爆発? いや、あの光は……何だ?)


レムも顔色を失って呟く。


「……自然現象じゃない……!」


アーレンが本部に駆け込むと、すでにフレドリック隊長とジュリアンが鎧を着ている最中だった。


そこへ、砦から逃げ延びた伝令が駆け込んでくる。


「第2砦……壊滅……!

外壁が……一瞬で……!」


フレドリックが叫ぶ。


「一瞬でだと!? どういうことだ!」


伝令は震える声で答える。


「わ、わかりません……!

青白い光が……空を走ったと思ったら……

次の瞬間、砦が……!」


「まるで魔法だな……?

だが、砦を一瞬で破壊する力など聞いたことが無い……」


アーレンは拳を握りしめた。


(……地底人が、何か新しい力を……?

だが、そんな情報は……一度も……)


ジュリアンは蒼白になりながら呟く。


「……未知の兵器……?」


誰も答えられなかった。


再び夜空が青白く光り、地響きが町を揺らす。

町の人々が悲鳴を上げる。


「まただ……!」

「砦が……燃えている……!」

「地底人が……来る……!」


伝令が続けざまに駆け込む。


「第一砦も……壊滅……!

同じ光です……!

外壁が……まるで紙のように……!」


フレドリックは絶句した。


「……そんな馬鹿な……!

……地底人は、我々の知らない力を持っている。

このままでは……夜明け前にグレイフォードに到達する。」


アーレンが言う。


「本国に援軍を要請しても……間に合わない。」


ジュリアンも頷く。


「父上に連絡して援軍要請の伝令を飛ばしましょう」


フレドリックは静かに言った。


「……しばらくは、我々だけで持ちこたえるしかない」


外では、町の人々が空を見上げていた。


「砦が……光で吹き飛ばされた……?」

「魔法か……? そんなことが……」

「地底人は……怪物なのか……?」


恐怖が町を覆い始める。

フレドリックが全員を見渡す。


「……本国の援軍が来るまで、時間を稼ぐ。

ここで迎え撃つしかない。」


フレドリックが指示を出す。


「ジュリアン、連射クロスボウ部隊を前線に配置しろ。

アーレン、レムの新兵器を持って攻撃に備えろ。」


ジュリアンは緊張で喉を鳴らしながらも、力強く答えた。


「……了解しました!」


アーレンも頷く。


「未知の兵器だろうが……止めるしかない。」


ヘンリックは静かに言った。


「……この町を守るのは、我々だ。」


その頃、地底軍は第1砦を突破し、

グレイフォードへ向けて進軍を続けていた。


バルグは勝利に酔いしれ、

ドロガは魔道砲を次の標的に向け、

ミルダは静かに歩きながら、


「……私の出番はないかもしれない」


と呟いた。


ただ一人、ダルガだけが空を見上げていた。


(……地上の空は……こんなにも広いのか)


その瞳には、戦いではなく“迷い”が宿っていた。

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