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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第58話 地底の四将軍

地底へと続く裂け目の奥は、湿った土と鉱石の匂いが混じり合い、息苦しいほどの静寂に包まれていた。

その中に、囚人を収容するスペースが作られていて、そこに三人の捕虜が縄で縛られ、地底人の兵士たちに囲まれていた。


壁に埋め込まれた青白い鉱石がぼんやりと光り、牢内を不気味に照らしている。

捕らえられた兵士たちは、恐怖と疲労で顔色が悪かった。


「……ここは、どこだ……?」


一人が震える声で呟いたが、返事はない。地底人の兵士も言葉が理解できないらしく、声をかけても振り返るだけでそれ以上の反応はなかった。


しばらくして奥の通路から柔らかな足音が響いてきた。

現れたのは、黒い薄衣をまとった地底人の女。

その瞳は深い闇のように静かで、しかし底知れぬ力を感じさせた。


地底人の“妃”――

神官に仕える高位の女性であり、内響の力に最も長けた存在。


彼女は格子越しに捕虜たちの前に立つと、微笑とも冷笑ともつかない表情を浮かべた。


「ようこそ、地上の者たち。

あなたたちの心……少し覗かせてもらいますね。」


兵士たちは身を強張らせた。耳に聞こえているのはヒューヒューという地底人の声だが、この女の話している内容がなぜか理解できる。


妃は捕虜が驚愕している様子がおかしかったのか、笑い声を立てた。


「さて、何からお聞きましょうか。」


妃はそっと目を閉じた。


「抵抗しても無駄です。

あなたの心は……丸見えですわ。」


彼女の瞳が淡く光り、兵士の体が震えた。

妃は目を閉じたまま、兵士の心に直接問いかける。


「あなたたちの砦……どれほどの兵が守っているのですか?」


兵士は歯を食いしばったが、内響の力は容赦なく心を揺さぶった。


「第一の砦……百五十ぐらい……第二は百ぐらい

増援が来ても……グレイフォードの守備隊はすでに半数が砦の防衛に割かれているので、今は二百が限界だ……」


兵士は黙っているつもりだったが、思考が読まれているらしい。どうにもならない様子の地上人を見ながら妃は満足げに微笑んだ。


「そう……グレイフォードの守備隊は五百名ぐらいということですね。思ったよりも少ないのですね。」


次に、別の兵士に集中する。


「では、その背後にある“中部王国”の兵力は?」


兵士は苦しげに呻いた。


「……全部なんて知らない……

でも……噂じゃ……良くて一万三千か、四千……

でも……全部は動かせない……平時だとその半数以下だろう…

辺境に回せるのは……多くて二千ぐらい……」


妃は目を開き、冷たい声で言った。


「王国は長き平和になれきっている……動員をかけたところで全部が動くとは思えない。」


三人目の兵士が叫んだ。


「くそ、お前ら……何が目的だ!?

俺たちを……どうするつもりだ!」


妃はその問いに答えず、背後の兵士に向かって言った。


「――四将軍を神殿に呼びなさい。」


そう言い放つと牢屋を後にした。残された兵士三人はこれからどうなるかと不安に駆られた。


地底人の神殿と呼ばれるエリアには大きな広間があった。天井の高さもあり、息苦しさはまったくない。そして、中央に地底人を支配する大神官が石造りの椅子に座っていた。その横にさきほど捕虜を尋問していた妃が立っている。


通路の奥から、重い足音が響いた。四つの影がゆっくりと姿を現す。


岩のような巨躯の戦士、岩将バルグ を先頭に、

地底人きっての技術者で、各種兵器を操って戦う機将ドロガ、

立派な体躯でも俊敏な偵察部隊の長、斥将ダルガ、

最後に、兵士たちを内響で操る冷たい目をした、影将ミルダが続いた。


地底人の軍を率いる四将軍が揃った。


妃は捕虜たちを一瞥し、将軍たちに向き直った。


「地上の兵力は、我らの予想よりも少ない。

辺境の砦は二百五十。増援も数百が限界。

王国は長らく続いた平和で弱体化している。」


四将軍の目が鋭く光った。


大神官は静かに宣言した。


「――侵攻の時が来ました。」


広間の空気が一気に張り詰める。


「まずは辺境の砦を落とし、グレイフォードを占拠。

その後、中部王国の中枢へ向けて進軍する。

地上の者たちが我らの存在を知る前に……全軍をあげて

一気に制圧するのです。」


四将軍は一斉に膝をつき、頭を垂れた。


「御意。」


妃は冷たく微笑んだ。


「それでは侵攻計画を立てなさい。

地上の夜は短い。

我らが動く時は近い。」


四将軍が去り、大神官は不敵な笑みを浮かべた。


(いよいよ予言の通り、地上を我らの手に取り戻す…)


地底の闇は静かだったが、

その奥底で――確実に戦の気配が膨れ上がっていた。

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