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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第49話 御前会議の混乱

翌朝、王宮の鐘が鳴り響く頃、一行は謁見の間へと向かった。


王宮の廊下は白い大理石でできており、朝日を反射して眩しいほどだ。

アーレンは緊張で喉が渇くのを感じていた。連れの親衛隊兵士たちは、

シオリとジュリアンそして捕虜と一緒に部屋で待機することになった。


「落ち着け、アーレン。」


ヘンリックが低く言う。


「陛下にはすでに話を通してある。お前は事実を述べればいい。」


「はい。」


いつの間に着替えたのか、大きな家紋の入った正装を着たイオリは別の方向へ向かう。

通商大臣との会談のため、東翼の会議室へ案内されていた。


「では、後ほど。」

イオリは軽く頭を下げ、静かに歩き去った。


アーレンはその背中を見送り、深呼吸をした。


謁見の間は広大で、天井は高く、壁には歴代王の肖像画が並んでいる。

中央には国王ブランデル三世が座し、その左右には大臣たち、

さらに後方には各地の領主や騎士団長たちが控えていた。


ヘンリックが進み出て、膝をつく。


「陛下。ご報告に参りました。」


国王は静かに頷いた。


「顔を上げよ、ヘンリック。遠路ご苦労であった。」


アーレンも続いて膝をつき、報告を始めた。


「陛下。地底より現れた者たちが、我が領地に侵入いたしました。

彼らは透明化の魔法を使い、地上の者とは異なる文化と技術を持っております。」


その瞬間、大臣の一人が立ち上がった。


「馬鹿な!そんな者たちがこの世に存在するはずがない!」


別の大臣も声を荒げる。


「透明化だと?幻術の見間違いではないのか!」


騎士団長は鼻で笑った。


「辺境の兵が怯えて誇張しているだけだろう。

そんなもの、我ら騎士団が出れば一掃できる!」


謁見の間は一気に騒然となった。

アーレンは歯を食いしばった。


(……これが王都の現実か。)


ヘンリックは一歩前に出て、堂々と声を張り上げた。


「お静かに!話はまだ終わっておりませぬ!」


その声は謁見の間に響き渡り、全員が口を閉ざした。


「陛下。地底人が存在する証拠はございます。

捕虜を一名、連れて参りました。」


大臣たちがざわつく。


「捕虜だと!?」「本当に存在するのか?」「見せてみろ!」


国王は静かに頷いた。


「連れてくるがよい。」


しばらくして、ジュリアンとシオリに付き添われた捕虜が入ってきた。

黒い鎧とマスクで全身を覆い、光を避けるように俯いている。


その姿を見た瞬間、謁見の間は凍りついた。


「な、なんだあれは……」「人間なのか……?」


騎士団長が剣に手をかけた。


「危険だ!殺せ!」


「待て!」


ヘンリックが怒鳴る。


「この者は我らが保護している。

今は地底の情報を提供してくれた

大事な客人だ。」


しかし騎士団の武闘派は納得しない。


「化け物だ!」「そのようなものを王宮に入れるなど正気か!」


その瞬間、シオリが目を閉じ、その場の人たちに届くよう全力で内響をつかった。


「お静まりください。」


その声は、直接心に響くような不思議な力を持っていた。

騎士団長も大臣たちも、一瞬で口を閉ざす。


国王が興味深そうにシオリを見た。


「最果ての国の姫か……なるほど。」


シオリは深く頭を下げた。


「陛下、この者は敵ではありません。

ただ、地底の国の事情を皆様の御前で証言してもらうために連れて参りました。」


国王は捕虜に視線を向けた。


「名は?」


捕虜はヒューヒューと風のような音を出して答えた。すぐさまシオリが通訳する。


「名……ない……番号……だけ……

私は……三層……生まれ……

地底……国……大きい……

ダルガ様……将軍……

でも……私は……戻れない……戻れば……死ぬ……」


その言葉に、謁見の間が静まり返った。

大臣の一人が震える声で言った。


「……本当に、地底に国が……?」


騎士団長も真剣な表情になっていた。


「透明化……本当に使えるのか?」


捕虜は頷いた。


「使える……でも……私は……弱い……

強い者……二日……消える……」


国王は深く息を吐いた。


「ヘンリックの話は本当のようだ。

地底人の脅威は疑いようもない。

いずれにせよ、我らは備えねばならぬ。」


大臣たちの半数が賛成し、半数はまだ不安げだった。


「しかし……それだけの理由ですぐに軍を動かすのは……」

「これは他領の問題では……」

「まずは、慎重に調査を……」


騎士団長は叫んだ。


「脅威が事実ならば、なおさら我らが先手を取るべきだ!」


ヘンリックは首を振った。


「無謀だ。敵の数も、能力も未知数だ。」


国王は手を上げ、全員を黙らせた。


「まずは守備を固めよ。

各領主はいつでも援軍を出せるよう準備を整えよ。

必要とあらば、騎士団を派遣する。

そして、ヘンリックは西の防衛をせよ。」


アーレンは思わず声を上げそうになった。


(……それだけ?)


ヘンリックはアーレンの肩に手を置いた。


「これでも大きな前進だ。

王都が脅威を認めた。それだけで十分だ。」


アーレンは唇を噛みしめたが、やがて頷いた。


捕虜はシオリの後ろに隠れるように立ち、

国王は静かに言った。


「その者の処遇はヘンリックに任せる。」


「承知いたしました。」


こうして、御前会議は幕を閉じた。


部屋に戻ると、シオリが心配そうにヘンリックにきいた。


「あの、この地底人の方の処遇ですが、いかがなされるおつもりですか?」


「そうそう、シオリ殿の国には、地底人と地上人の混血――鬼の子孫が多く住んでいると以前聞きました。」


「はい、何なら私自身も多少は鬼の血を受け継いでおります。」


ヘンリックは少し考えた。


「それでは、また面倒をかけるかもしれないのだが、

あの捕虜は最果ての国に連れて行ってあげられないだろうか?

同じく地底人の血を引く者たちが多く住んでいるのであれば、

彼にとっても安心ではないだろうか?」


シオリの顔がぱっと明るくなった。


「すばらしい考えにございます、ヘンリックさま」


「シオリ殿が帰国してしまったら、捕虜と会話できるものがいなくなる。

そうなると、こちらに置いておいてもただ危険にさらすだけとなってしまう。

だから可能であれば、鬼の里で保護してやって欲しい。いかがですか?」


「喜んでお手伝いさせていただきます。鬼が島にやってくるのは数百年振りだと皆が歓迎することでしょう。それに、島に行けば、私よりもはるかに強力な内響の使い手がおります。さらなる情報が得られるかもしれません。」


ヘンリックはほっとして笑みを浮かべた。

本当にこの兄妹には世話になりっぱなしだ。


「ありがとう、これであの捕虜も安心するでしょうな。」


ヘンリックはようやく一段落したと感じた。まずは第一歩をしっかり踏み出せた。

しばらくは孤軍奮闘が続くかもしれないが、今はただ王の言葉を信じるしかなかった。


そして、皆が感じていた。

これは、嵐の前触れにすぎないと。

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