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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第4話 思い出の宿はもうなくて

峠を越えた先には、ジュリアンが幼い頃に父と泊まった思い出の宿がある――

はずでした。

しかし三人が目にしたのは、静まり返った焼け跡と、野党の影。

旅の空気が一変し、三人の心に初めて“恐怖”が形を持って迫ってくる第3話です。

峠道は細く、両側はうっそうとした森。

風が木々を揺らし、どこか不穏な気配が漂う。


ジュリアンは震えながら言う。

「……こ、ここ、本当に野盗が出るんだよな……?」


アーレン「出るらしいな。出てくれたら嬉しいんだが」

ジュリアン「嬉しくない!!」


レムは荷物を抱えたまま、

周囲をキョロキョロ見回している。

「……なんか、嫌な感じがしますね……」


ジュリアンが耐え切れなくなった様子でレムに言う。

「やめろ! 不安を煽るな!」

それはそうと、近くに村があって、

父に連れられて泊まった宿があるんだ。

そこに行けば今日は安全に休めるはずだ」


三人は峠を抜け、

谷間にある小さな集落へ向かう。


しかし――


そこにあったのは、

黒く焼け焦げた建物の残骸だけだった。


アーレン「……これは……」

レム「ひどい……」


ジュリアンは馬から降り、

崩れた壁に触れながら呟く。


「ここ……昔は、暖炉があって……

優しいおばさんがいて……

父と……笑って……」


アーレンは静かに言う。

「野盗の仕業だな。

最近、ここらで暴れてるって話だ」


ジュリアンの顔が青ざめる。

「…本当に…出るんだな…」


レムは荷物を抱えたまま、

震える声で言う。

「アーレンさん…どうします…?」


アーレンは剣の柄に手を置き、

真剣な表情で周囲を見渡した。


「決まってる。

ここにいた人たちがどうなったか、確かめる。

そして…野盗がまだ近くにいるなら――」

アーレンの目が鋭く光る。

「俺が相手をする」


ジュリアンは少しため息をつき、レムは小さな盾を握りしめる。


日が完全に沈み、山の冷気が肌を刺すようになってきたころ、

ジュリアンは焼け跡の前ただただ呆然としていた。


ただ、アーレンは状況を一瞬で判断し、

「ここで野営だな」と言うや否や、

手際よく焚き火の準備を始めた。


薪を集め、火打ち石を打ち、

あっという間に火が灯る。


「よし、これで少しは暖かいだろ」

アーレンは明るく笑う。


ジュリアンは火のそばに座り込み、

持ってきた毛布を肩にかけて、

ただぼんやりと炎を見つめていた。


彼の目には、

幼いころ父と泊まった宿の記憶が浮かんでいる。


暖炉の前で飲んだ温かいスープ。

優しく微笑む宿の女将。

父の大きな背中。


その全てが、

今は黒い炭と灰になっている。


アーレンはそんなジュリアンの様子を見て、

いつもの調子で声をかけた。

「ははは、まぁ、元気を出せよ。

旅は始まったばかりだぜ!」


しかしジュリアンは反応しない。

ただ、火を見つめている。


アーレンは少しだけため息をついたが、

それ以上は何も言わなかった。


レムは大荷物を背負ったまま、

焼け跡の周囲を慎重に歩き回っていた。


「…何か、手がかりがあるかもしれない」


彼は瓦礫をどけたり、薪のかわりに

焦げた木片を拾い上げたりしている。


アーレンが声をかける。

「レム、無理すんなよ。暗いし危ないぞ」


レムは振り返り、少しだけ笑った。

「大丈夫です。

こういうの…なんか、気になっちゃうんです」


その言葉には、

“戦えない自分にできることを探したい”

という気持ちが滲んでいた。


火の音だけが響く夜。

アーレンは焚き火の前に腰を下ろし、

ジュリアンの隣に座った。


「……怖いか?」


ジュリアンは少しだけ顔を上げた。

「……怖いに決まってるだろ。

領地の外なんて初めてだ。

野盗が出るって聞いて……

それに……ここも……」


アーレンは火を見つめながら言う。

「怖いのは悪いことじゃねぇよ。

でも、俺がいる。

レムもいる。

お前は一人じゃねぇ」


ジュリアンは返事をしなかったが、

毛布の中で小さく息を吐いた。


ようやく、レムが焼け跡から戻ってきた。

「アーレンさん、ジュリアンさん…

やっぱり、ここ…野盗に襲われたみたいですね、折れた矢が落ちてたり、火をつけられた跡もあったし」


アーレンは頷く。

「だろうな。

明日、峠を越えるときは気をつけよう」


ジュリアンは火を見つめたまま、

小さく呟いた。

「…本当に、行くんだな…」


アーレンは笑った。

「当たり前だろ。

俺たちの旅は、まだ始まったばかりだ」


三人は交代で見張りをしながら仮眠を取ることにした。

夜は深く、風が吹くたびに焼けた木材がかすかに軋む。


アーレンがレムと交代し、

レムは焚き火のそばに座って周囲を見張り始めた。


だが――

疲れが限界だったのだろう。

レムの頭がゆっくりと前に倒れ、

こっくり、こっくりと船を漕ぎ始めた。


その隣では、ジュリアンが毛布にくるまって

すやすやと寝息を立てている。


静かな夜だった。

……その瞬間までは。


どこからともなく、

風を切る鋭い音がした。


ヒュッ――


闇の中から放たれた矢が、

まっすぐジュリアンの胸元へ飛んでくる。


だがその瞬間、

レムが寝落ちして前のめりに倒れ込んだ。


ガンッ!!


矢はレムの背中の盾に当たり、

高い金属音を響かせて地面に落ちた。

アーレンはその音で飛び起きた。


「敵襲だ! みんな起きろ!!」

ジュリアンにとって大切な思い出の場所が、無残な姿で再登場することになりました。

アーレンの頼もしさ、レムの不器用な優しさ、そしてジュリアンの揺れる心。

三人の距離が少しずつ変わり始めるエピソードになったと思います。


最後の“闇の矢”は、野盗の脅威がいよいよ現実のものとなった瞬間です。

次回、三人は初めて本格的な危機に向き合うことになります。

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