第5話 レムの盾が守ったもの
闇夜に放たれた矢が、三人の静かな野営を一瞬で戦場へ変えます。
寝落ちしたレムの盾が偶然にもジュリアンを救い、ついに野盗が姿を現すことに。
アーレンの真価が初めて明らかになる、緊迫の第4回です。
木々や草が揺れ、
闇の中から複数の気配が迫ってくる。
「……ん? な、何が……?」
レムは完全にパニックだ。
「うわわわっ! たいへん!
ご、ごめんなさい! ボク寝ちゃったみたいです!!」
その瞬間、
木の上から二本目の矢が飛んできた。
ヒュッ!
カンッ!!
またしてもレムの盾に命中。
アーレン「うおっ! あぶねぇ!!」
アーレンは即座に判断し、
レムに叫んだ。
「レム! 隠れろ! ジュリアンも連れていけ!」
レム「は、はいぃぃ!!」
レムは寝ぼけているジュリアンを抱え上げ、
アーレンも後ろを守りながら隠れ場所を探す。
宿屋の中に、
かろうじて形を残したカウンターがあった。
三人はそこへ飛び込み、
身を低くして息を潜める。
アーレンは剣を抜き、
周囲の気配を探った。
「……囲まれてるな。
数は……三、いや四か?」
レムは震えながら盾を抱え、
ジュリアンはまだ寝ぼけたまま状況を理解しようとしている。
ジュリアン「……え、え? な、何が……?」
アーレン「ジュリアン、落ち着け。
敵はまだ姿を見せてない。
まずは位置を把握するぞ」
レムは小声で言う。
「ご、ごめんなさい……ボクが寝ちゃったから……」
アーレンは首を振った。
「違う。お前が倒れたおかげでジュリアンは助かったんだ。
今はそれで十分だ」
レムは目を丸くする。
ジュリアンも、少しだけレムを見る目が変わった。
勝利を確信したのか、野盗たちが姿を現した。
アーレンは鼻で笑った。
「暗闇に隠れていればまだ有利だったのにな。
姿を見せるとは……しょせん野盗だな」
薄汚れた格好の男たちが四人。
三人は弓を構え、リーダー格の男は斧を肩に担いでいる。
「金目のもんを置いていけ。命は取らねぇよ」
その言葉を聞いたアーレンは、カウンターの陰から飛び出した。
矢が放たれる。
だが、アーレンはひょいと身をひねってかわす。
次の瞬間には、
弓を持つ三人が地面に倒れていた。
「ガキが調子に乗るんじゃねぇ!」
リーダーが斧を振り回す。
だがアーレンはその全てを見切り、
一撃で男を地面に沈めた。
戦いは一瞬だった。
アーレンは息を整え、
カウンターの陰に隠れていた二人のもとへ戻る。
「大丈夫か?」
レムは震えながらも頷き、
ジュリアンはまだ寝ぼけた顔で状況を理解しようとしていた。
誰も怪我はしていない。
アーレンは周囲を見渡し、
「ここは安全じゃないな」と判断したが、
他に行く場所もない。
「俺が見張る。二人は寝てろ」
その夜、アーレンは一睡もせず、
焚き火の前で剣を膝に置きながら夜明けを待った。
幸い、それ以上の襲撃はなかった。
朝日が差し込むころ、
目を覚ましたレムはまずアーレンに深々と頭を下げた。
「アーレンさん……本当にすみませんでした。
そして……助けてくれて、ありがとうございました!」
アーレンは笑って肩を叩く。
「気にすんな。お前が倒れたおかげでジュリアンは助かったんだ」
ジュリアンは少しだけ顔をそむけながら言う。
「……まぁ……助かったよ。ありがとう」
プライドと戦いながらの礼だった。
レムは嬉しそうに笑った。
三人は慎重に峠道を進んだ。
昨夜の襲撃があったため、
アーレンは常に周囲に目を光らせている。
レムは盾を抱え、
ジュリアンは緊張しながらも必死についていく。
峠を越えたとき、
遠くに町が見えた。
「……見えたぞ。あれがブランデルの町だ」
三人はほっと息をつき、
そのまま町へ向かった。
レムの“ドジ”が仲間を救い、アーレンの強さがはっきりと示される回になりました。
ジュリアンの不器用な感謝も含め、三人の距離が少しずつ縮まっていく様子を描けたと思います。
次回は、交易の町ブランデルでの新たな展開が待っています。
三人の旅は、ここからさらに動き始めます。




