第31話 故郷への帰還
捕虜の地底人が言った通り、
バックアップ部隊は七人だけだったらしい。
谷間を抜けてからは、
不思議なほど静かだった。
イオリが言う。
「敵意の気配は感じませぬ。
しばらくは安全でござる」
シオリも頷く。
「はい……
今は誰も追ってきていません」
捕虜も怯えながらも、
どこか安堵したように座っていた。
こうして一行は、
大きな襲撃もなく西へと進み――
一週間後。
ついに、
西の町グレイフォードの城壁が見えてきた。
「おおおおおーい!!
帰ってきたぞーーー!!」
アーレンは馬車から身を乗り出し、
大声で叫んだ。
レムは苦笑した。
「アーレンさん……
まだ町の入り口ですよ……」
「いいんだよ!
一か月ぶりなんだぞ!?
うおおお、懐かしい匂いだ!!」
ジュリアンは呆れたように言う。
「アーレン……
子供じみてるな……」
イオリは微笑んだ。
「アーレン殿の故郷……
良い町でござるな」
シオリも静かに頷く。
「はい……
とても温かい場所です」
レムは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
(……帰ってきましたね……
でも……ここからが本番です……
フレドリックさんに報告して……
そうだ、ガルド師匠にも報告して、新しい道具製作を…
とにかく、地底人の脅威に備えないと……)
馬車はゆっくりと城門をくぐり、
グレイフォードの町へと入っていった。
レムは馬車を降りてアーレンたちに軽く頭を下げた。
「僕は……ガルド師匠のところへ行ってきます。
色々と報告しないといけませんので……」
アーレンが笑って手を振る。
「おう、行ってこい!ガルドもきっと喜ぶぞ」
レムは走り去り、
残りのメンバーは守備隊の詰め所へ向かった。
詰め所に入ると、
フレドリックが驚いたように立ち上がった。
「アーレン……!
無事に戻ったか!」
アーレンは照れくさそうに笑った。
「ただいま、親父。
ちょっと色々あったけど、なんとか帰ってきたよ」
フレドリックは息子の肩をがっしり掴んだ。
「よくやった……
本当に、よく戻った……」
その目には、
“隊長”ではなく“父親”の色があった。
ジュリアン、イオリ、シオリにも深く礼をする。
「息子を助けてくださり、感謝いたします」
ジュリアンは少し照れながら言った。
「いえ……アーレンがいなければ、
わたしの方が危なかったかもしれません」
アーレンは笑って肩をすくめた。
「まあ、お互いさまだな」
アーレンは表情を引き締め、
道中で得た情報をすべて話した。
白鷺で聞いた鬼の一族の歴史、
地底人の存在と内響、
偵察部隊との戦闘、
捕虜の証言、
地底人による地上侵攻計画、
恐るべき透明化…
フレドリックは息を呑んだ。
「……地底人が……
戦争を企んでいる……?」
アーレンが頷く。
「親父、これは本当だ。
俺たちは何度も襲われた」
ジュリアンも言葉を添える。
「父にも報告し、
その後、国王にも相談したほうが良いかもしれません」
フレドリックは深く頷いた。
「そうだな……
まずは、ヘンリック殿に伝えねばならん」
フレドリックに案内され、
一行はヘンリックの屋敷へ向かった。
執事が通すと、
ヘンリックはすぐに姿を現した。
「ジュリアン……!
無事でよかった……」
久しぶりに会う息子を見て、
その表情には安堵が浮かんでいた。
ジュリアンは少し照れながら言う。
「父上……ご心配をおかけしました」
ヘンリックはアーレンに向き直る。
「アーレン……
息子を守ってくれたこと、心より感謝する」
アーレンは照れくさそうに頭をかいた。
「いや、ジュリアンもよく戦った。
俺一人じゃ無理だったさ」
ジュリアンは少し不服そうにしながらも、
心のどこかで納得していた。
(……アーレンがいなければ……
本当に危なかった……)
ジュリアンは父にこれまでのいきさつと
発見した事柄を報告した。
さらに、イオリとシオリが王国への橋渡しを
願い出ていることも忘れずに伝える。
ヘンリックは恩人のために
最大限の助力を約束した。
ただ、地底人のことは捨て置けず、、
すぐに捕虜の話を聞きたいと言い、
一行は詰め所へ戻った。




